僕にできるのは即死だけかよ その③
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そして、そんな男にホイホイついていっちゃう僕も僕だよな。
僕と白髪は、喫茶店のテーブル席で向かい合っていた。
「さて、君のことを教えてもらえるかな?」
「いや……知らない人に個人情報を教えちゃダメだって、学校で習ったんで」
「そうかい? だったら、ボクのことを話そう。ボクの名前はシロ。王国関係の仕事をしている」
王国関係ということは、この魔導王国の運営にかかわる仕事をしているってことだ。
いわゆるエリートじゃないか。
「凄いですね。自慢ですか?」
「そんなことはない。ただ、ボクは運が良かっただけさ。人には自分に適した場所というものがあるだろう? ボクにとっては、それが今の仕事だっただけだよ」
「なるほど。じゃあ、部屋の隅のジメジメした場所が一番落ち着く僕は、ナメクジか何かに転職したほうが良いですね」
「ちなみに今、君は何をやってるんだい?」
「呼吸……ですけど」
「質問を変えよう。今の仕事は? 失礼かもしれないけど、君、ボクとそう変わらない年齢のはずだ。何かやってないのかい?」
「無職……ですけど」
「ムショクか。ますます気に入ったよ。何にも染まっていない、真っ白だ。君の未来はまだまだ可能性に満ちてるということだね」
「まあそりゃ、僕が世界を征服して美少女奴隷ハーレムを作れる可能性だって、ゼロじゃないでしょうけど」
ちょうどそこへ、店員さんが僕らの飲み物を運んできた。
カップに入っていたのは、茶色い飲み物だ。
白髪――シロがぜひ僕にと頼んだものだ。ちなみにシロ自身はホットミルクを頼んだらしく、飲み物が目の前に置かれるとすぐに飲み始めた。
「飲まないのかい?」
「あ、いや、これ、何の飲み物だろうと思って」
「コーヒーとかいう、西側の国から伝わった飲み物だよ。本当は淹れるのに豆を使うらしいけど、一般に流通しているのは、王国のお抱え魔導士たちが魔法で複製したものだね」
僕はカップに口をつけ、一口すすってみた。
めちゃくちゃ苦い。
「ところで君は本当に面白いね。ボクが思っていた通りだ」
「……バカにしてる?」
「いや、本当にそう思っているんだよ。王国に追われる人間が、王国側の人間が頼んだ飲み物を無警戒に飲んでいるなんてね」
「!」
僕は咄嗟に椅子を引いて立ち上がっていた。
その衝撃で僕のカップが揺れ、中の液体が撥ねた。
コーヒーの茶色い水滴がシロのすぐ前に落ち、テーブルクロスにシミを作る。




