横難横死と笑えない雑魚。 その⑤
彼女の周囲には血しぶき一つ残ってはいなかった。
だから多分、この一瞬ですべて元に戻りに……蘇生したのだ。
となると、物理的に殺すのは無理なのか?
死なない相手と戦うのなんて初めてだ。
体がバラバラになっても元通りなんて、ぞっとする。
「――おばけでもみたってかおしてるんだよ、お兄様。どうしたんだよ?」
「どうしたもこうしたも……一つ質問していい?」
「いいんだよ」
「どうして服まで治ってるんだ? 治癒能力が高いだけなら、体しか治らないはずじゃないのか?」
粉微塵になったはずのツヴァイちゃんの白衣が元に戻っている。
これは不自然だ。
「ねえ、お兄様」
「なんだい、ツヴァイちゃん」
「……それは、あたしに全裸になってほしいってこと?」
「どこをどう聞いたらそういう意味になるのかな? 僕はどうして君の体以外の部分が治ってるんだって訊いてるんだけど?」
「またまたー、そんなこといってるけどお兄様はムッツリスケベだから、いつでもおんなのこが全裸になってくれるのをいつだってきたいしてるんだよ」
「してねえよ」
「それは……うそなんだよ」
「嘘じゃない。僕はなんだかんだいって、今まで嘘をついたことがないんだぜ?」
「……ふーん。ちなみにお兄様」
「なんだよ」
「あたしは、白衣の下になにもきてないんだよ?」
えっ?
今明かされる衝撃の事実。
ということはノーパン?
「…………興味が……ないね……ッ!」
「お兄様、めから血のなみだがながれてるんだよ」
「流れてねえよ! 勝手に変な情報を付け加えるな!」
ええい、この、僕の心を弄んで!
許さん!
……っていうほどのことでもないんだけど、実際。
「さて、お兄様、おしゃべりのじかんはここまでなんだよ」
「別に僕はお前と喋りたかったわけじゃないけどな」
「またまたー」
ツヴァイちゃんの姿が消える。
そして。
「そんなこといって、お兄様はほんとうはおしゃべりずきなんだよ」
僕の背後で声がする。
振り返ると、そこにはツヴァイちゃんが立っていた。
超スピード!?
「う、うわっ!?」
僕は咄嗟にツヴァイちゃんの頭部に蹴りを入れていた。
ツヴァイちゃんの体が吹っ飛ぶ。
不意打ちになったのか!? よく分からないけどチャンスだ。
地面に倒れたままのツヴァイちゃんに、僕は接近ようとした。
――いや。ちょっと待て。
僕ならどうする?
僕なら……やられたふりをする。
近づいてきた相手を、確実に殺せるように。
僕は踏みとどまった。
それを待っていたように、ツヴァイちゃんが起き上がる。
「……なんだ、あんがいれいせいなんだよ、お兄様。せっかく殺してあげようとおもったのに」
「殺したいほど僕を愛してるっていいたいの? そういうの、もう時代遅れだぜ」
「……べつにあいしてはいないんだよ。自意識過剰なんだよ、お兄様」
「うっ……」
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