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シンデル・ワールド


「えーと、どちら様?」


 相手が答える。


「人に名前を聞くときは、自分から名乗るのが常識だろ?」

「常識を押し付けてくる人は、僕は嫌いだな。あなたの常識が僕の常識かどうかなんてわからないだろ?」

「今質問してるのは俺の方だ。質問に質問で返すな」

「記憶違いだったら悪いけど、最初に質問したのは僕のはずだよね」

「はっ、嫌なガキに当たっちまったもんだぜ」

「僕はあなたのような人を呼んだ覚えはないよ。もしかして、仮装パーティの会場を間違えちゃってるんじゃない?」


 相手は首を振った。


「いいや、魔導学校の卒業生だけを狙う殺人鬼なら、お前であってるはずだ。そうだな?」

「そうだなって言われても……もし僕が犯人なら、絶対にうんとは言わない」

「答えは聞いてない、ぜ」


 相手の背後で、何か影のようなものが動いた気がした。

 次の瞬間、僕は肩から脇腹にかけて真っ二つに切り裂かれていた。


「ぐっ!?」

「時間をかけるのは嫌いなんだ。俺はせっかちでね。できればさっさと死んでくれると助かる」

「言われなくても」


 言われなくても。

 僕はすぐに死ぬ。



 そして、時間は巻き戻る。



「答えは聞いてない、ぜ」


 男の背後の影が、再び僕に襲い掛かる。

 僕は咄嗟に飛びのいた。

 刃物のようなものが、僕の鼻先を掠めていく。


「……っ」

「躱したか。さすがと言いたいが、でも、駄目だな」

「駄目? 何が?」

「すぐに分かる」


 長髪に隠れた男の瞳が怪しく輝いた。

 突然、僕の視界が真っ赤に染まった。

 頬を何か温かいものが流れていく。

 触ってみると、それは僕の血だった。


 目から血が?


 いや、それだけじゃない。

 気づけば、僕の鼻や口、全身から血が噴き出していた。

 なんなんだ、これ……。


 この血の量、絶対死ぬ(・・・・)じゃん。

 再び僕は死に、その直前に時間が巻き戻る。



 男の背後の影が僕の目の前に迫るのが、僕には見えた。

 よく分からないけど、これに当たるとマズいらしい。

 僕は無理やり体をひねって、影を躱した。


 影は、鎌のような形をしていた。

 男の背中から伸びる鎌だ。


 背中から地面に倒れた僕は、次の攻撃が来ないうちにはね起きた。

 そして、男と距離を取る。


「躱したか。卒業生を四人も殺しただけのことはある」

「あんた、一体何者?」

「教えて欲しけりゃ自分から名乗るんだな」

「えーくんって呼んでくれると嬉しい」

「えーくん……? ま、お前の本名を呼ぶよりは時間がかからなくていい。気に入ったぜ。いいか、えーくん。俺はお前やお前と一緒にいた女のような、反乱分子を排除する仕事をやってる」

「大変そうだ。転職をお勧めするよ」

「人の話は黙って聞け。余計な時間がかかる。でな、時々あるんだよ。お前らみたいな落ちこぼれ組が、優秀な人間を逆恨みして暴走するケースってのがさ」


 本当に優秀な人間なら、僕みたいなのに殺されるようなことはないはずだけど、と僕は思った。

 だけど、それを言ったらまた話が長引きそうだから、やめた。


「だから俺は、そういうケースを駆除すべく、国に雇われてるってわけさ」

「駆除ってひどいな。人を害虫か何かみたいに」

「自覚が無いようなら教えてやるが、お前は魔導王国グラヌスにとっちゃ害虫なんだよ。三年もかけて大切に育ててきた果実を、勝手に食い荒らしてダメにする害虫だ」

「三年かけて腐らせてきた、の間違いじゃないの?」

「口の減らないガキだ。そろそろ死ね」


 あの鎌が、僕に襲い掛かる。

 とにかくアレに当たるとヤバい。

 僕はナイフを引き抜き、鎌を食い止めようとした。


 だけど。


 鎌に触れた瞬間、ナイフは一瞬で錆びついて壊れてしまった。


 鎌はナイフを貫通し、そして僕の心臓を貫いた。

 全身から血が噴き出る。



 僕はまた死んでしまった。




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