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馬車の中

「僕はエミル・エムロス。君は?」

「ルマ・パッツィー」

「僕、ミズーリ州から来たんだけど。ここ、凄いね。こんなに沢山の馬を見たのは初めてだ。あ、もちろん人も」

「そう」

「君も学園の人?僕は今年からなんだけど、何かアドバイスとかあれば嬉しいな」

「よく喋る人ね」

「・・・ごめん」

田舎じゃ牛相手にもこれぐらいは喋ったけど、ここじゃ違うのかな。

いや、いいんだ。恥じるな。

生まれた場所が違っただけ、僕も選ばれたんだ。


でも、なんだろう。

この子と居ると心が高鳴る、不思議。

なんだろうこの気持ち。

これも魔法なのかな。


「あれよ」

ルマの白い指が指す方向に、ひときわ長い馬車があった。

「Bのイニシャル。サウスブロンクス学園!」

馬車へ駆け寄る。

凄いなぁ、30人は優に乗れる。

馬も六頭!

こんな大きな馬車見たことない。


僕を胡散臭げに見つめる入り口の気だるげなお兄さんに慌てて手紙を見せる。

その手紙と僕を見比べ呆れたような顔をした後、彼は僕を中へ招き入れる。

大丈夫、堂々としていよう。


馬車の中は緑一色で、椅子や壁に十字架や魔方陣の刺繍があしらわれている。

うちの馬車とは大違いだ、やっぱり学園って凄いな。

でも乗っているのは数人と・・・奥に騒がしいのが居るぐらい。

あ!あれはさっき僕を突き飛ばした連中。

目が合う、嫌な笑いが起こる。

あいつらも新入生なのかな?

立ち尽くしていると連中の顔から笑みが消える。

全員がこっちを見て、なんだろう?嫌な感じ。

「早く座りましょ」

背後でよく通る声がする。


「ルマ!君も新入生だったんだ」

「・・・言わなかったかしら」

うん、聞いてないよ。という僕の言葉に耳を貸さず、ルマはさっさと座席に収まる。

その横、座ってもいいのかな?

背後から舌打ちの音。

そっか、連中が見てたのはルマだったんだ。


その後、数人を乗せて馬車が走り出す。

ガラガラの車内。

「思ったより少ないね」

「クラス別に分けてあるのよ、それに・・・」

「そうなんだ」

え、じゃあルマと同じクラスなの!

そして、あの連中も・・・?

「それに、好き好んでこの学園に子供を送る親は居ないわ」

「・・・え?」

僕のさも意外といった声に、思わずルマが瞳を合わせる。

知らなかったの?と言いたげなその目が揺れる。

悲しげな、そして初めての人に会ったような。

その時、背後でどっと笑い声が起こる。


一瞬僕らの事かと思ったらそれは違った。

窓の外を指差して、しきりにルーザーとか負け犬とか言って笑ってる。

窓の外には・・・?

川の中で何をやってるんだろう、魚釣りじゃなさそうだ。

白髪のお爺さん?と僕らよりちょっと上の年齢の子達が何かしている。

「なんだろう?」

ルマの方を見るけど、もうルマは目を合わせてはくれない。

せっかくいい感じだったのに、ほんと嫌な連中だ。




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