休日
翌日の休み、僕とルマはもう一度あの川へ行ってみた。
ルマの私服はまぶしかったけど、それには触れず。
僕らはそれぞれ、不安と期待を胸一杯にして道を急いだ。
「やってみるかい?」
昨日と同じように足を水にひたしたアレン先生と、
先に来ていたクリスと他何人かの生徒たち。
早速、靴を脱いでいると。
ルマの脱ぎやすそうな靴と、真っ白な足が目に入る。
なぜか見ちゃいけないような気がして目をそらし、
ルマに遅れてそっと水の中に足を差し入れ・・・。
「冷たいっ」
声を上げたのはルマだった、初めて見るルマの笑顔。
そんな表情で笑うんだ、負けじと僕も足をひたす。
「冷たい!」
朝の川は昼間より清らかで、そして少し冷たい。
ルマの顔を見る、その笑顔に僕らはやっと出会えた。
「最初は水を良く見ること、そしてその中にある文字を見つける」
「文字って、竜語ですか?それともルーン文字?」
「何でも構わないさ、君の心に浮かぶ言葉だ」
水の中に文字・・・?
キラキラしてうねっていて、この中に言葉が・・・。
僕の隣で水がせり上がる。
大きな円形の、上がデコボコしていて。
これって・・・。
生徒たちからため息のような歓声が上がる。
「君は強い魔力を持っているね、それは・・・?」
「兄妹から・・・、貰いました」
「・・・そうか、それは辛かったね」
ルマがまた悲しそうな顔をする、僕はまた自分の無力さを恥じる。
「でも、もう大丈夫だ。ここでは自然から魔力を借りる、だから誰も傷つけなくていい」
ルマの顔から力が抜ける、
ルマが戦っていた何かが消え去ったような。
アレン先生はどんな魔法を使ったんだろう?
「ねぇ、ルマ。お腹減ってる?」
「え?」
「だって、さっきのってケーキでしょ?」
ルマが水で作った円形の、上に苺が沢山乗ってた。
「そうだよね?」
ルマは何も言わずに顔を背ける。
あれ?怒らすようなこと言ったかな。
なんだよ、僕はただルマの笑顔が見たい・・・だけ。
水に話しかけていると、水がせり上がってルマの顔みたいに・・・。
「うわっ!?」
顔は直ぐに消えたけど、魔法って変なの。
こんな事も出来るんだ。
「今日は昼から天候が荒れるらしい、早めに切り上げよう」
水の扱いにも慣れた頃、アレン先生が言う。
空を見上げるといつの間にか雨雲が近づいていた。
「ルマ?」
足元の水を見つめたまま、ルマは表情のない顔で立っている。
まだ怒ってるのかな?
先生も生徒も皆、川からあがってしまった。
ルマは一人でうつむいて、何かに気付いたように上流を見る。
何かあるのかな?
上流を見ると地響きのようなものと大きな水の塊が押し寄せてくる。
鉄砲水!?
「ルマ、早くこっちへ!」
上流を見たまま、声がまるで届かないルマ。
僕の横をアレン先生が駆け抜ける。
動けない僕を残して、ルマとルマをかばうように抱きしめたアレン先生は、
突っ込んできた水の塊に飲み込まれた。




