大人の足の心許なさに
最近、ふと心の中に言葉だとかイメージだとかが浮かぶ。
そういうことが、もう長いことなかったことにも気づいてなかった、ということにも気づく。
深い心の源泉が、少しずつ潤いを取り戻しているような気がする。
目に見える事象だけが、全てではないことを改めて感じる。
目の前で起こったことそのものよりも、それが沈み込んだ心の深淵で、どんな波紋が起こるのか、それはどんな揺れなのか、どんな音で、どんな味で、どんな香りなのか。
そういうものが私たちを作っている気がする。
目先のことに囚われないで、そのとき聞こえるほんの些細な音に波に、気づければきっと、総ては私自身になるのだろう。
✾
寂しさの音は、色は、風味は。
いつかより、少しだけ大人になった私を奇妙に魅了する。そんな甘美さを、今、含んでいる。
私は、寂しさを手放したいとは、もう思わない。
大人の足の心許なさに。
けれど私は、どこか確かさを感じる。