結婚したい!
「誰でもいいから結婚したい!」
私は呟きをネットに投稿した。
ポチッとな!
本当は叫んでるのに呟きなんておかしい。
私はスマホの画面を無意味に連打した。
28才、女。
大川千江美。
顔は下のクラスではないと思う程度。
私はとにかく小さい頃から結婚したかった。
恋愛とかいいから結婚したい。
誰でもいいから結婚したい。
結婚して子供を作り、末長く幸せに暮らしたい。
平凡な結婚生活送りたい。
孤児院暮らしで、自分だけの家族が居ないから寂しいの。
結婚したいって、そんなに壮大な夢なんだろうか。
選ばないなら結婚できる、と友人は言う。
でも。
でもね。
私は本気で結婚したいの。
私の本気を知ると皆引いちゃうの。
さっきの呟きもそう。
男の人、結婚してやるとか言うんだけど、婚姻届持って迫ると引いちゃうの。
結婚相談所もそう、引いちゃうの………。
1人暮らしのアパートの中、
「結婚したい! 頑張って幸せな家庭を作りたい!」
と叫んだ。
ドンッ!
大きく壁が鳴った。
叫んだのがまずかったのか、隣の部屋から壁を叩かれたらしい。
初めての壁ドン。
「ごめんなさい! もうしません!」
即座に反省してぺこりと頭を壁に向かって下げる。
隣はなんだか真面目そうな眼鏡をかけた大学生さんだ。
悪いことをした。
トントン!
2回のさっきより強くない壁ドンが返ってくる。
意図はよく分からないけれど、もう黙っておこう。
+++++
「あっ」
次の日、隣の大学生が出てくる所に鉢合わせした。
「誰でもいいなら」
呟くように大学生さんが話す。
ちょっとヨレヨレの格好して、ガリガリに細い。
「俺とケッコンして下さい」
「え………」
幻聴?
今、ケッコンの3.5文字が聞こえたような。
妄想かしら。
あら、よく見るとイケメン?
なんか目が大きくて丁寧な顔付きね。
「大学院生、医学部。だから28才。遊びじゃない」
「結婚? 婚姻届提出する?」
聞き間違いで変な女でも構わない。
結婚って言われた気がする。
「両親が浮気で離婚して慰謝料で大学通ってる。俺は絶対に離婚しないし、お試しで付き合わない。俺も結婚したい。付き合ったら結婚だ」
アパートの廊下でイケメンが高らかに宣言した。
「頑張って幸せな家庭。俺も作りたい。結婚して幸せな家庭作らないか?」
「はいっ!」
「よかった。よろしくお願いします」
イケメンが柔らかく微笑んだ。
この人が私とずっと一緒に居てくれる約束をしたんだ。
私は今までの人生で感じた事のないときめきを感じていた。
顔が火照る。
「とりあえず、近くのファミレスで婚姻届書きましょう!」
「話が早くて助かる。ありがとう」
イケメンも私の顔を見て顔を赤くしている。
私なんて美人でもないけれど、何かを感じてくれたんだろうか。
お互い結婚したいもの同士。
価値観はばっちり合ってるし、きっと上手くいく。
私は部屋に婚姻届を取りに戻りながら、期待に胸を膨らませていた。
結婚には価値観の一致が大事らしいですね。
ご覧になって下さってありがとうございます。
とても嬉しいです。