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累計PV56,000越え、ユニーク17,000越え

そして何よりブクマが1300件を越えていました!(12月11日午前3時現在)

本当にありがとうございます。

みなさまのおかげで書き続けていられます。

今後ともよろしくお願いいたします。

 問題はもう1人。

 こちらもお兄様に紹介していただくことは可能だが、それではお兄様は納得しないだろう。

 わたくしからお兄様に紹介を頼む方は、みな当たり障りのない方、はっきりと言ってしまえばわたくしとの婚姻など端から期待していない方で、わたくしとしても興味のないお方なのだ。


 そんな方ばかりと踊っていても意味がない。

 とお兄様は考えるだろう。


 女友達はそれなりにいますが、結婚を考えられるような男友達はそれほどいないわたくしにとって、これは難問なのですが。

 類は友を呼ぶ、同気相求むと周囲に言われるような友人しかいない。

 甚だ不愉快なのだが。


 彼ら(あれら)のうちの誰かを見つけたら捕獲(あいさつ)して|親密な雰囲気を出しつつ歓談《普通なら誘う状況に》してもいいのだが、果たして彼ら(あれら)(空気を読んで)ダンスに誘ってくれるだろうか。

 という不安と

 そもそも陛下に挨拶すればさぁ、仕事は終わりだとばかりに帰ってしまっていても不思議ではない方々(あれら)だから。

 という諦めが浮かんでしまうような友人たち。

 そんないるかいないかの賭けをして時間を不意にするわけにはいかないのだ。


 ぼうっとしていればそれなりに誘われるだろうという程度にはいい物件――顔・スタイルはそこそこ、侯爵家の令嬢であり、今は王女様の命の恩人という付加価値がある――であるという自覚はありますが、だからといって適当に選ぶわけにもいかない。

 今までの家同士の関係、社交界での評判、御当主様の性格などを鑑みて選ばなければ後々面倒なことになるのは目に見えている。

 なんと面倒事(しがらみ)が多いことでしょう。


 若い人間同士の関係なのだから、そこまで畏まらなくてもなどといっていられるのはよっぽどの馬鹿くらいのものである。

 若いうちからそのあたりを学ばずして将来、当主となったときにどうするというのだ。

 馬鹿……自由でいらっしゃるのは勝手だが、こちらまで巻き込まないで欲しいものだ。

 そういうやつに限って家柄も顔も悪く、金もな……というのは心の内にしまっておこう。


 とにもかくにも下手に親しくしてしまえば周りがそういうもの、つまりカップルだと認識してしまう可能性がある。

 特にわたくしの場合は両親の自由恋愛推奨精神は有名なので、そういった誤解は受けやすい。

 わたくし、ひいては侯爵家とのつながりを持とうと周囲に誤解させるように仕向ける人間だっている。

 それもあってあまり親しい人間に見えないよう、そして相手に勘違いされないよう、男性と関わりを持つときには気をつけている。


 もちろん適当に選んだ相手と踊って、その後のエスコートを断って親しくないというアピールもできるが、下手に断ればこちらの評判に傷がつく。

 プライドが高い人間だと特にそうだが、断られたことを根に持ってこちらを悪し様に言うものだ。

 エスコートを断られた程度、何だというのだ。

 その程度の関係さえ持つのが躊躇われるような人間だと評価されているのが何故分からないのか。


 いや、その程度だからこそ分からないのか。

 女性ほど空気に過敏になれというわけではないのだ。

 だが、人間関係がものをいうこともある貴族として、相手が嫌がってるかどうかくらいは察しろといいたい。

 その小さな器と空気の読めなさをどうにかしてから社交界へとお越しいただきたいものだ。


 と、つらつら考えていても仕方がない。

 さて、今回のお相手はどうしようか。

 あぁ、本当にめんどうくさ「エレナ?」

 意識を戻せばお兄様の笑みがますます深まった。


「なんでしょう?お兄様」


「そろそろ終わるけれどお相手は決まったかな?」


「そうですわねぇ。とはいいましてもわたくしが申し込むわけではなく申し込んでくださるような殿方が居りませんとどうにもなりませんわ」


 ほほほほと笑ってごまかす。


「そうだね。だから、僕の知り合いなら繋いであげるよ?」


 見透かされていたようだ。

 お兄様ったらお優しいと白々しく言えば、お兄様はそうだろう?演技掛かった様子で言いつつ尋ねてくる。


「で、誰にする?」


 そうですわねぇと考えるそぶりをする。

 こういうのは形だけでも必要なのだ。


「そういえば先ほどジェラルド様をお見かけしましたわ。お兄様、まだご挨拶されていないでしょう?そのついでといっては何ですが、お願いしていただけますか?」


「ジェリーかぁ……うん、いいよ」


 わたくしの方を眺めた後、一つ頷く。

 やがて1曲目が終わりを告げる。

 いくら途中がうまくいっていても最後が決まらなければ印象というのは悪くなるのだ。

 きっちりと決めにいく。


 ぴったりと最後までお兄様に合わせきることができたのを感じ、ほっと一息。

 お兄様のほうを見れば、合格点だったのだろう、機嫌がよさそうだ。

 機嫌がよいうちに、と次のお相手となるジェラルド様探しに移ることにした。





 探し始めれば、予想通りすぐに見つかった。

 武官らしく体格がよいジェラルド様は、この人数の中でも探しやすい目立つ御仁である。


「やぁ、ジェリー。遅かったじゃないか」


 気軽に声をかけに行くお兄様についていき、おじぎをする。


「おぉ、ちょっと出掛けに捕まってな。アイリーンも久々だなぁ」


 にかりという言葉が似合うような笑みで迎えてくれたジェラルド様。


「お久しぶりです。お元気そうで何よりです。先日はお見舞いの品、ありがとうございました」


「ん?あぁ、あれか。気にすんな。治ってよかったな」


 手を出しそうになりふいに引っ込めた。

 おそらくいつもの調子でがしがしと頭を撫でようとしたのだろう。

 このお方は挨拶をするたび、頭をかき混ぜるように撫でてくるのだ。

 犬を可愛がるようなものであって、決して恋愛的な意味を持つものではないので不愉快になることはない。

 ただし、それをすると毎回侍従の方が主人ジェラルドを蹴り飛ばし叱るというすさまじい光景が見られる。


 いわく、女性の頭を不用意に撫でるというのはいかがなものか、いや、撫でるにしてももう少し配慮をせよ、と。

 それを始めて見たときにはその方が罰されないか心配になったものだが、ジェラルド様のご両親から命じられているらしくいつものことですよと爽やかに返されたのはいい思い出である。


 武官として日々鍛えていらっしゃるジェラルド様を蹴り飛ばすことができるあのお方はどのような訓練をしていらっしゃるのだろうか。

 それ以降、中々治らない癖が発動される度の蹴り飛ばしていらっしゃるが、日に日に蹴り飛ばし加減が苛烈になっていく侍従様を素晴らしいというべきか。

 それでも起き上がってくるジェラルド様の忍耐力を素晴らしいというべきか。

 ともあれ、あの日以来、心の中で侍従()とお呼びしているのは秘密である。



閑話休題



 そう、いつもなら撫でくり回されているだろう。

 しかし今日は舞踏会。

 しっかりと整えられた私の髪をみて撫でるのを止めてくださったようだ。

 これも偏に侍従の方の愛の鞭(意訳)の賜物だろう。

 侍従様、あなたのしつけは着実に効果を出しておりますよ。


「しっかし、まぁ、さすがハウエル一門の人間だな。あぁいうときにとっさに動けるんだからよ」


 わたくしは苦笑でもって返すしかない。

 彼は評価してくださっているのだ。

 武人としては褒め言葉なのだろう。

 女性の評価として正しいか正しくないかではないのだ。

 ハウエル家の人間として、一人の人間として評価していただけた。

 それで十分ではないですか!

 彼に悪気があるわけではないのだから!





 何故でしょう、褒められている気がしないのですが。


「僕としては複雑なんだけどね。武官としてもハウエル家としてもよくやったといいたいところなんだけれど」


 とそこで切ったお兄様は少し悲しげに、その柔和なお顔を歪め、わたくしの顔を見る。

 はぁとため息を吐くと軽くかぶりを振り


「兄としてはこんなお転婆を誰か引き取ってくれる人がいるのか心配で」


 ……。先ほどまでのシリアスな表情との整合性がつきませんわ、お兄様。


「がはは。アイリーンは美人なんだ、大丈夫だろう」


 とばしばし兄を叩きながら励ましていますが……ジェラルド様?あなた、わたくしの性格に関して一切否定しなかったどころか外見でカバーしろとおっしゃいました?


「顔は父上の凛々しさと母上の色を上手に継いだおかげで中々に華やかだけれど、性格はねぇ。流石ハウエル家というべきかちょっと変わってるしねぇ。行動派といえばいいのか。はぁ。やっぱり兄としては嫁き遅れないか心配だよ」


 お兄様がひどい。


「まぁ、昔っからアイリーンは猫かぶりがうまいし、何とかなるだろ!」


 ジェラルド様もひどい。

 といいますか


「嫌だわ。猫をかぶっているだなんて評価されていただなんて」


 少し悲しげに目を伏せて見せるが


「何を言ってるんだい?事実被ってるだろう?」


 お兄様ったら本当にひどい!


「違いますわ!猫を30枚ほど被った上にかわいらしく弱々しい兎を着込んでさらに猫を30枚被ってから虚勢に見せかけたちょっと怖い子虎を挟んでさらに猫を40枚ほど被ってあるだけですわ!!」


「……。エレナ。それはたぶんおそらくちょっととかだけとは言わないし、そもそもそこまで行ったら化け物だよ。」


「ひどいわ、お兄様ったら。うら若き乙女を捕まえて、言うにことを欠いて化け物だなんて。失礼ですわ」


「エレナ、うら若いという言葉を一度辞書で調べることをおすすめするよ」


「あら、知ってましてよ?若く初々しい、可憐なさまをいうのです」


「わかってるのか。それなら言うけど、そこまでいろいろかぶった人間を、言うにことを欠いて初々しい可憐な令嬢とは呼ばないよ」


「あら、お兄様。おかしなことを仰いますのね。猫様、兎様、子虎様のおかげでわたくしも社交界の方々(みなさま)にご令嬢として認識していただいてますのよ!猫様このこたちが居てこそのわたくしの評価ですのに!」


 少し怒ったように言い聞かせるように言葉を並べれば、お兄様がひきつった笑みを浮かべ、ジェラルド様は大笑いしている。

 お兄様の笑みが引きつるだなんて、なんと珍しいことだろうか。

 今日はいい日である。


 それにまだまだ修行が足りないと日々思っておりますのよ?と可愛らしく笑みを添えて付け加えればお兄様は頭を抑えつつ深く深くため息をつく。

 頭痛だろうか?

 ご令嬢とは、化け物(こんなの)を指すわけではあるまいに、などとうわ言まで言い出すだなんて。

 最近お忙しかったようだし、心配である。


 ジェラルド様は笑いすぎで過呼吸になりかけているのか、ぜはぜはと息も切れ切れである。

 こちらはこちらで大丈夫であろうか?


「はーっはーっ。こんなに笑ったの久々だぜ」


 涙目になりつつ何とか立ち直ったジェラルド様と何かを振り切るように頭を振り立ち直ったお兄様。


「まぁ、全部剥ぎ取った後、化け物は出てきませんが、わたくしがでてきますわ」


 にっこりと微笑み、追い討ちをかければ再び噴出すジェラルド様。

 もういっそ失礼を通り越してすがすがしい。


「あのねぇ」


「だってお兄様?殿方を飽きさせないためにはさまざまな工夫が必要なのだとご令嬢方の間では有名ですのよ。ですので、わたくしもと思いまして準備いたしました」


 ちなみに参考はかつて社交界の華と呼ばれたお母様ですわといえば今度こそ言葉をなくしたようである。

 深く深くため息を吐き力のない笑みを浮かべる。

 君のその猫の原因はお母様(あのひと)か、と。


 普段のお兄様も大概だと思うのですが、追い討ちをかけるのはやめておきましょう。

 浮かべる表情はそっくりだとご令嬢の中で有名だという話は、やめておきましょう。

 今度の機会までとっておくことにいたしましょう。

誤字、脱字がございましたら、お知らせください。


会話のテンポ感はどうでしたか?

短編より長くなっていましたが、ここはテンポを大切にしたいので、悪いなと感じれば消すかもしれません。


友人をあれらと呼ぶのは気を許してるから+変わり者だから

相手はご令息という認識が薄い結果

出すかどうかは未知の人物たち。



短編部分は次回(4話)までを予定しています。

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