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阿部3兄妹の事件簿  作者: 南城ひろと
1/1

兄妹との出会い、事件1

イタイ…

やっぱり予想通りの結果だが

床で寝ると体の節々が尋常じゃないくらい痛い。

昨日は確か9時過ぎから1時過ぎ

まで飲んで後輩の肩を借りて

帰って来たんだっけと私は頼りない記憶をたどった。

私は阿部真城。婚期を逃した

三十路のばばあである。

悲しいことにこんな自虐ネタを

言っても何にも思わなくなって

しまった。

そんな老いへの敗北に虚しさを

感じている私のコートから

安室奈美恵のcan you celebrate?

が流れた。なんて今の私に不釣り合いな曲だこと。

「はい、阿部」

「私だ。非番のところ悪いが

今すぐ都大学にきてくれないか。」

「今ですか。今すぐはちょっと…」

「いいから早く。お前を呼ばないと暴れるってある人が騒いでるんだ。」

「はぁ?ちょっと意味が分からないんですが」

そう言いかけたところで

かけてきた電話の主は強引にきった。

仕方ない。行くしかなさそうだ

幸い今私は仕事着のままだ。

くまはいつもより厚めの化粧で

髪は常備しているゴムで

なんとかなる。

私はやることをやり家を出た。

都大学はここから車で20分の

ところだ。この間に先ほどの

自虐ネタを含む自己紹介の続き

でも。もうすでに勘の良い読者ならお気づきだろうが私は刑事だ。

現在は京都府警捜査一課3班に所属している。階級は警部補

自分で言うのはどうかと思うが

周りと比べると出世してる方だと思う。特に女性が少ない警察業界では…

そんなことを話してる間に都大学

が見えてきた。

入り口近くのパーキングに車を

停めると私は現場に向かった。

それにしても私を呼ぶ奴とは誰だ?

「警部。阿部ただいま

到着しました。」

「おぉ悪いがついてきてくれ。」

この警部がさっき私に電話をかけてきた桜宮警部である。

白髪混じりの寸胴体型が印象的な

人物だがこれでも本部長賞を二度もらうなど上からも下からも信頼はあつい。

「ここだ。もうさっきから

うるさくてな。」

そう言って案内されたは会議室

と思われる場所だった。

声が聞こえる。嫌な予感がした。

恐る恐るドアをあけた。

予感は的中した。

「だから、私は第一発見者で

犯人じゃないの。第一発見者

=犯人の法則なんていつの時代

の話なんだか。」

「真帆、あんた。」

「あっお姉ちゃん。遅いよ。

ねぇ聞いてこの刑事ったら

ひどいんだから。」

「ひどいんだからじゃないわよ。

何であんたがこんなところに

いんのよ。」

「それは後で話すから。

それより先に私の嫌疑晴らして

お願い。」

見ると事情聴取しているのは

後輩の佐竹だった。

「佐竹どういうこと?」

「この人第一発見者なんですが

捜査に全然

協力しないんです。」

「違うわ。この人が犯人みたいに

言うから。」

「真帆あんたは黙りなさい!

佐竹、多分この子犯人じゃない

それは私が保証するから。」

「阿部先輩…分かりました。」

「聴取も私がやるわ。佐竹は

警部と聞き込みをして。

悪いわね、迷惑かけて。」

「いえ、別に僕は大丈夫です。」

そう言って佐竹は去って行った。

さて、これからがくせものだ。

今、私の目の前にいるのは

実の妹の阿部真帆である。

まさか、現場で妹と会うとは。

しかも、間接的とは言え呼び出されるなんて…

「それで。どうしてあんたが

こんなところにいるの。」

「それがね。今日、私の大学と

都大学で共同プレゼンをやる

予定だったの。」

「で、その共同プレゼンを

やりに来たあんたが第一発見者

になったわけ。」

妹は順序だてて発見までの経緯を

はなした。

まとめると

プレゼンの会場に予定より早く

ついた妹は大学探検と称して

大学の中を歩いていると

立ち入り禁止の柵の向こうに

誰かが倒れているのを見つけ

急いで中に入ると死んだ被害者

を発見したということだった。

「被害者は面識ある人?」

「うん。共同プレゼンの責任者

でこの大学の准教授田沼さん

よ。もちろん今日会う

予定だった。」

なるほど、妹が疑われた原因は

これか。面識があってしかも今日

会う予定の人物の遺体を発見する

なんて疑って下さいって言ってる

みたいなものだと私は思った。

「でも、なんで私を呼んだの?」

「だって。私が犯人だみたいに

言われたから。」

「そう。もう私はあんたの

小間使いじゃない。」

「ごめんなさい…」

とりあえず妹の話を聞いた私は

妹を家に返し、現場に戻った。

「すいませんでした。妹が迷惑を

かけてしまって。」

「気にするな。まさか、君の妹

だったとはびっくりだよ。」

「私もびっくりです。自分の妹

が現場にいるなんて。

それより、妹から聞いたん

ですが被害者はここの准教授

なんですね。」

「そうだ。田沼康介、32才

この大学で心理学を教えていた

らしい。」

心理学。そう言えば妹も犯罪心理学を学んでいたな。

警部の話によれば被害者の死因は

絞殺で死亡推定時刻は昨夜の3時

~4時までの間である。しかし、

今日6時すぎに大学を巡回した

警備員の話では現場に遺体が

無かったらしく

それから考えると6時以降に

誰か(恐らく犯人)が遺体を置いた

ということになる。

「時間がかなり絞られますから

犯人もすぐにわかりますね。」

「あぁすでに五人の人物が

浮かび上がってるんだが

肝心の現場が防犯カメラの死角

で確かなことが

言えないんだ。」

「五人の聴取は?」

「今からだ。」

「じゃあ、私も一緒に…」

「いや、君は監察医のとこに

面白いものが見れるぞ。」

また頭に?マークがついた。

でも、その疑問もすぐに解けた。

「そうか、真帆が。

あいつも災難だな。」

「あの子より私の方が災難よ。」

ここは洛東大学研究室前の廊下。

私と真帆について話すのは

私の兄 阿部真琴である。

警部の言う面白いものとは

このことらしい。

確かにひとつの事件で刑事の私

発見者の妹、監察医の兄。兄妹

三人が揃うなんてある意味奇跡だ

「どうだった?解剖の結果は。」

「教えて欲しい?」

「そりゃ必要だもん。」

「じゃあ教えて下さい

お兄様は?」

出た。兄の変なSの部分。

「あぁめんどくさい。

早く見せなさいよ。」

「嫌だ、ほら早く。」

こうなったらもう無理だ。

「教えて下さい…お兄様。」

「はい。どうぞ真城ちゃん。」

ったくこれが三十路同士の会話

と思うと恥ずかしさを通り越して

怒りさえ覚える。

「死因はやはり絞殺。

死亡推定時刻も3時~4時と

みてまず間違いない。ただ…」

「ただ?」

「遺体の爪に土が付着してた。

死斑も右側面に集中していた。

被害者は発見時はうつむき

だったらしいから。恐らく

犯行現場別の場所だ。

しかも、移動は車だと思う。

トランクか何かに押し込められ

ていたんだろ。」

「でも、トランクなら死後硬直で

うつ伏せには出来ないん

じゃないの?」

「さすが、僕の妹だ。目の付け所

が違う。」

兄に誉められても別段嬉しくない

「被害者の肘、膝は折れていた。

つまり犯人はうつ伏せに

するため 無理矢理

死後硬直した体を動かしたって

こと。」

ひどい。死んでまで人の体に傷を

つけるなんて…犯人は用意周到な

犯行をしてるところをみると

怨恨の線が強いと私は思った。


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