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5 一緒に昼食

「アキト発見っ! あ、なによ、あの女。あれはマネージャーね。距離が近い!

もう、さくら! いいの? あれはっ」

秋斗の隣にはショートカットの可愛い女の子。

何やら親しげに話して笑っているのが遠くても分かる。

香奈が席を立って私の手を掴んだ。

「あんなの、目の前で見せられて、おとなしく黙ってちゃだめよ、 さくら!」

「え? ええ? い、いいよ。マネージャーさんなんでしょ?いいってば」

「ダメよ、ぜったい、ダメ!」

頭に角が見えそうなほどぷりぷり怒ってる香奈にぐいぐい引っ張られて、

サッカー部の集団のところまで来てしまった。


制服の違う私は目立つようで、先頭の男子が私を指さしてザワザワしてる。

恥ずかしくなって私は俯いた。

「さくら?」

顔を上げると目の前に秋斗の姿。

「あ、あの、弓道部の合同練習で。今、お昼を食べ終わって・・・」

「もー違うでしょ、さくら。アキトが他の女と仲良くしてるから連れて来たの。

だめじゃない!」

香奈の声が大きくて、皆の突き刺さるような視線が痛い。

「ご、ごめんね。お邪魔して。香奈、もどろ・・」

香奈の手が離れて、今度は秋斗の手に引き寄せられる。


「だーめ。せっかく来てくれたのに」

いつもと同じ優しい声に顔を上げると、にっと口元を上げている秋斗。

「カナちゃん、昼休み、何分まで?」

「たっぷり二時までOKよ」

「やった。じゃ、ちょっとさくら貸してね」

「もちろんよ、あたし達はてきとーにおしゃべりしてるから、気にしなくていいわ。ごゆっくりー!」

「え? え? ちょ、ちょっ・・」

満面の笑みで手を振ってる香奈。席の方をチラリと見れば、立ち上がってこっちを見ていたらしい陽菜ちゃんと詩織が、やっぱり笑顔で手を振っていた。


「いいなー」「うらやましいぞ、秋斗!」「ずりぃ!」とか野次を飛ばすサッカー部の男子たちに見送られる。

秋斗はお構いなしに私の手を引いて学食から退散した。



秋斗は慣れた様子で入り口のところにある購買でパンとおにぎりを買って、外に出た。

中庭の端の方にあるベンチに並んで座る。

今日はお天気がいいからそこら中に外で食べてる学生がいる。

ユニフォームを着ている体育会系の部員やカップルがほとんどだ。


「・・秋斗、サッカー部のみんなと食べなくてよかったの?」

こんな風に抜け出して来てしまってよかったんだろうか、と心配になる。

後から何か言われたりしないのかな。

「えー? いいのいいの。いっつもあいつらと食べてるんだから」

私の心配を吹き飛ばすように明るくそう言って、ずっと繋がったままだった私の手を口元に引き寄せて、ちゅっとキスをした。

こ、こういう場所で、そーゆうことをっ・・!


「さくらがいるなら、さくらといた方がいいに決まってんでしょ?」

「そ、そう。あ、ありがと・・・」

顔が熱い。恥ずかしい。

秋斗はこういうの平気でやるけど、その度に私の心臓はバクバクさせられてる。


秋斗はさっき買ったおにぎりをくるっとフィルムをめくってかぶりついた。

「うちの高校、けっこうカップル率高いんだよね。で、カップルになると昼は一緒に食べるのがお決まり、みたいなんだ。あ、キャプもこの前の土曜、ミホちゃんが応援に来ててお昼はどっかに消えてたなあ」


え? み、美穂ってば、やるなあ。さすが自称恋愛のプロ。積極的ー。


「坂西女子に彼女がいるやつはすごいうらやましがられるよ。おれもすごく言われるもん。今日また戻ったらどつかれるだろうな。かわいい彼女がいてズルイぞ、コノヤローって」

うれしそうにカラカラ笑う秋斗。おにぎりの最後の一口を口にいれて、水筒のお茶をごくごくっと飲んだ。


「カナちゃん、怒ってたね。・・さくらは怒らないの? 他の女と仲良くして!って」

口調はおどけてるけど、真剣な表情。

真っすぐ見つめてくる秋斗の目に私が映っている。

私の、反応を見てる。


「あ、秋斗っ」


今、言わなきゃダメよって、美穂がささやいたような気がした。

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