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43 ここでも大掃除

「お、お母さん、信じてください。私たちは・・」

しばらくの沈黙。

ギイ、とドアが静かに開いた。チェーンもない。

浅井先生のお母さんは私の携帯を両手で胸にしっかりと握り締めて、じっと私達を見た。


「本当に・・? 本当にアンタたち、施設の人間じゃなくて、

・・ひ、弘幸の、・・友達なの? 弘幸のこと・・知ってるの?」

「はい。お母さん、お話、聞いてもらえますか?」

お母さんは、何も言わずに、携帯の画面をじっと見ている。

頑なに拒否してたのに、確実に揺らいでる。

「大事な話なんです。お願いします!」

ここは押せば行ける! 私も秋斗も深く頭を下げた。


お母さんはボサボサな髪を掻き上げ、視線を泳がせた後、ごにょごにょと小声で言った。

「・・上がって、もらいたいけど、部屋はちょっと・・汚いの」

お母さんの言葉どおり、玄関から見える範囲だけでもゴミが山積みになっている。


ちょっと?

え? これ、ちょっとなんですか?

なんだろう、どっかで見たよね、この光景。

外観、内装ともにお洒落で流行なデザインのお家。

建ってまだ一、二年の新築っぽいのに、こんなに汚すなんて信じられない!


「わかりました。お掃除、お手伝いします!

一緒にゴミを片付けて、綺麗にしてからお話しましょう」

「え? は、はあ・・」

私の勢いに負けたのか、ただ呆気にとられていたのか、おかあさんは頷いた。

秋斗を見ると、「しょーがないなあ」って顔。


「上がらせてもらいますね。お母さん、ゴミ袋を用意してください。

あ、携帯 は一度返してもらっていいでしょうか?」

お母さんは、ぎゅっと握り締めてた私の携帯を、慌てて私に渡して、廊下の向こうに走って行った。


「・・ごめんね、秋斗。勝手にこんなこと言っちゃって」

「まあ、そんな気がしてたよ。つーか、これ、デジャヴ?

親子揃って同じようなことしてくれちゃって。

なに? 遺伝子がそうさせてるの? ゴミ溜めたい病?」

呆れてゴミを見ている秋斗も、意を決したように家の中に入って行った。



ここからは、以前に先生のマンションで行った大掃除と同じ作業だった。

先生の時との違いは、書類や本は一切なく、ビールやチューハイの空き缶が大量にあること。脱ぎ散らかした服も集めて行ったらすごい量になった。


私達が勢いよくゴミを片付けているのを最初はただ黙って見ていたお母さんも、髪を後ろでぎゅっと結って、ズボンに履き替えて一緒に片付け始めた。

ゴミ袋が足りなくなって、秋斗が自転車でコンビニに買いに行って追加。

服の整頓はお母さんにお任せして、私達はお酒のビンカンとお惣菜やお弁当の空き容器をゴミ袋にどんどん詰めていった。


掃除をし始めてから一時間ほどで部屋の床が見えて来た。

玄関に出されたゴミ袋の数は、数え切れないくらい。余裕で十を越えている。

異臭を放つような生ゴミの放置はなくて、助かった。

今は夏だし、そんなのあったらキノコとか生えてそうだもの。あ、想像したら鳥肌たった。

庭の片隅にゴミ袋を並べて。はあ、すっきりした。


さて、本題に入りましょう。


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