40 好き
「あ、わ、わたしっ!」
私は秋斗の胸元をぎゅっと掴んだ。
「イヤなんかじゃない。私、も、秋斗のこと、す、すごくすっごく好きだもん。
だから、だから、・・」
顔から火が出そうなくらい恥ずかしい。
けど、ここは目を逸らしちゃいけない。と思う。
「今、そんなうれしいこと言っちゃって。いいの?
おれがどういう意味に受け取るか、分かってる? さくら?」
背中に回された大きな手はびっくりするくらい熱い。
真っ直ぐ見つめてくる秋斗を頑張って見つめ返す。
「あの、美穂は・・秋斗に全部任せておけばだいじょうぶだって。
何も教えてくれなかったの。
だから、予備知識は全然なくて・・。ごめんね?
あの、えっと、・・秋斗に全部おまかせしてもいい?」
秋斗は目を真ん丸にして何度も瞬きをして、そして満面の笑みを浮かべた。
「喜んで。願ってもない言葉だよ。
・・でもホントにいいの?
さくらのハジメテ、おれがもらっていい?」
「う、うん。秋斗がいい。秋斗じゃなきゃイヤ。・・わっ!」
大きくこくんと頷くと、途端にぎゅうっと強く抱き締められた。
「ありがと、さくら! すっげー! 夢みたい!」
「え? わ、わ、わあっ」
そのまま、ひょいっと体が持ち上がって、ぐりんっと体が回転してて、私の体は秋斗に抱えられながらベッドに倒れた。
「・・押し倒しちゃった」
くすっといたずらっ子みたいに笑う秋斗。
私を見下ろす秋斗は、声も仕草もいつもの秋斗じゃないみたいに思える。
ベッドも、部屋の壁も天井も、まるでいつもの私の部屋じゃないみたい。
「さくら。さくら、好きだよ。ずっとさくらに触りたかった」
ちゅっといつもの触れるだけのキス、そして・・
「んっ、ん・・」
熱くて柔らかいモノが口の中いっぱいに入ってきた。
息ができない苦しさと、それ以上に何かに追い立てられるような、不思議な感覚に、頭の中が支配されていく。
ゆっくりふたりの顔が離れると、私は思いっきり息を吸った。
秋斗もちょっと上気した赤い顔でくすっと笑い、私の頬にちゅっとキスをした。
「さくら、愛してるよ。ホント、かわいい」
秋斗の甘い声が耳元に響く。
うれしい。
すごく。すごく。すごく嬉しい。
秋斗はいつだって、こんな風に真っすぐに思いを伝えてくれる。
秋斗の唇が、ちゅっちゅと私の目に触れて、自分が泣いていることに気づいた。
くすくすと笑われる。
「さくらは悲しくても嬉しくても泣くんだよね」
「・・これは嬉し涙だもん」
あんまり笑うから、私はムッとして言い返した。
「あー、もう、そんな可愛い顔、他の男に絶対見せられない。
浅井にもヒロユキにも。絶対絶対ダメだよ」
「か、かわいくないよ。泣き顔なんてみっともないし。って言うか、先生も弘幸君も同じ人じゃない」
「あはは。まあね。・・あー、そうだよなー・・」
笑ってた秋斗が急に頭を抱えて、目を伏せた。
「・・秋斗?」
「んー・・」
腕を組んで目を閉じて苦悶の表情を浮かべ、はあっと大きくため息をついて。
「・・やっぱり、今日はここまでにしとくよ」
秋斗はもう一度ぎゅっと私を抱きしめた後、よっと起き上がった。
え?




