3 ワガママ
「私は美穂のそういう真っすぐなとこ、好きだよ。うらやましい。
私も、美穂みたいになれたらいいのに」
美穂は照れたように、やだー、とか言って私の背中をバンバン叩く。
「さくらは昔から優等生だから、相手のこと・・アキトのこと考えて、自分の気持ち抑えちゃうんでしょう?」
「あー・・」
そうかも。
「こんなこと言ったらアキトは嫌な思いするかなーとか、こんなこと言ったら嫌われちゃうーとか、すぐにそんなこと考えるんでしょう? さくらは」
図星、かもしれない。
すごい、なんでわかるんだろう。
沈黙する私に、美穂は一人うんうん頷いて、私の肩をポンポン叩く。
「当たり? ふふ。伊達に何年も親友やってきてないわよー。
さくらのそういうとこ、あたしはすごいなあって思うよ。あたしにはできないからさあ。
でも、 たまにはそういうの考えないで、もっとワガママになってもいいんじゃないかなあって思う!」
すごい。そんなこと、思いもしなかった。
パチパチ瞬きしている私を見て、美穂はにっこり笑う。
「アキトもそう思ってるんじゃない? イイ子で彼女やってるのもいいけどさ。
たまには自分の気持ちずばっと言いたいこと言って、ワガママ言っちゃいなよ!
ま、あたしみたいなのは、相手も疲れちゃって大変なんだけどね。
シュウジとはちょっとでも長く続くようにワガママ控えめにしてるつもりよ」
あっははーと大声で笑う美穂。
彼女は自分で自分のことワガママだとかよく言うけど、私から見て美穂はとってもカワイイ女の子だ。
甘え上手というか。媚びてるっていう感じじゃなくて、 泣いたり笑ったり怒ったり、感情表現がすごく自然で。
私も、見習わなくちゃと思う。
「ありがとう、美穂。話してよかった。私も、がんばってみるね」
「応援、相談は恋愛のプロのわたくしにまっかせなさい!」
美穂はどーんと胸を張った。頼もしい。
がんばるよ、と言ったものの、お互い入りたての部活でしごかれて、なかなかゆっくり会えないまま何日も過ぎていく。
毎晩恒例になっている電話やメールではそんな改まった話をする雰囲気でもなくて、私はずっともやもやしてた。
家でもしかめっつらをしていたのか、はるにいにそっとココアを差し出された。
お気遣い、ありがとーございますー・・・。
そう言えば、はるにいって彼女いるのかな。
ふと思う疑問。
この人、こんなんなのに、めちゃくちゃモテるらしい。
秋斗君が言うには、「ハル先輩は、サッカー部のエースだし、よく告白されてるみたいだよ。手紙とかプレゼントをもらうのもハル先輩がダントツだったし」
とのことだ。
女性のみなさん! はるにいの外ヅラの良さに騙されてませんか!?
・・・でもまあ、はるにいはなんだかんだ優しいし。よく気がつくし、明るいし。
彼女連れて来るなら、良い人だといいなあ。
甘いココアをすすりながら、はるにいが聞いたら「ほっとけ!」って怒られそう
なことを勝手に思ってみた。