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33 今後の計画

私は机に向かって考えている。今後の計画を。

先生は両親に対して少し考えを改めたようだったけど、まだ会いに行く気はないみたい。だから対象を変えて、現代にいる十六歳の先生に頑張ってもらった方がいいんじゃないかって思った。

子どものうちなら、今みたいに頑なじゃないかもしれないし。話せばわかってくれる、と思いたい。


ということで今回の作戦は

『十六歳の浅井先生と両親の溝をなくす!そして未来に追い返そう大作戦』

と名付けました。

あ、ちなみに私は毎回こういうのに作戦名をつけるけど、あくまで私の心の中でだけだから。もちろん秋斗にも言ってないし。

高校生にもなって『~~作戦開始!』とか恥ずかしいこと叫んでないから!

心の中では叫んでるけど。


今までタイムマシンを使って、パパとママの離婚を回避したり、秋斗のお父さんのリストラを阻止したり、はるにいの交通事故を未然に防いだりしてきたけど、今回の作戦はハッキリ言って難題だ。

まず私達は、子どもの先生にとって全くの他人なんだから、初めましてって知り合うところからスタートしないといけない。

しかも、相手は普通の高校生じゃない。アメリカで大学出て博士号も取ってる天才。

どう接すればいいのか、全然プランが立たない。イメージできない。

うーん。ダメかなあ。


・・・でもまあ、人付き合いの得意な秋斗もいるし、会ってみればなんとかなるかな。とりあえず一度会ってみてからまた計画を立てることにしよう。





*****


私と秋斗は自転車で坂西の隣町に来た。

プリントアウトしてもらった地図を見て、着いた白い新しいマンション。

ここに十六歳の先生が住んでいる。らしい。


さっきまで二十五歳の先生といたのに、今から会う先生は私達と同い歳だなんて不思議な感じ。

さっき先生に、たっぷり情報提供してもらった。

「両親に会うのが嫌だって言うなら、十六歳の先生について私達に全部教えてください!」って強めに言ったら、焦った様子で白状してくれた。

住所はもちろん、建物のセキュリティーのロック解除方法とかまで。



「行くか」

「うん」

私達はエントランスに入ってすぐにあるボタンで、先生に教えてもらった暗証番号を入力した。ガッチャっと音がして、扉が開く。


「なんかすごいね、ロープレのダンジョンみたい」

秋斗がワクワクした顔で話しかけてくる。私もドキドキしてるけど。緊張で。


途中にいくつか付けられている監視カメラには死角があるらしくて、どの道を通るかまで指示されている。

エレベーターで 六階まであがる。

先生の指示どおり、六階の突き当たりのドアは足元に消化器の箱があって、その箱の中に小さなカギがあった。

カギでドアを開けて、また元に戻す。

ドアを開けると上にのぼる階段が続いていた。


「先生、いるかな・・」

「まあ、浅井の記憶が正しければ、この日この時間にいるんでしょ?」

階段を上り切るとまたドアがあった。

ドアの向こうは屋上。秋斗がドアを開けると、強い風で髪の毛が舞い上がった。

「わぁっ」驚いて声が出てしまう。

「・・いた」

秋斗が目を向ける、屋上の柵のところに一人の少年がいた。



幼い顔、細い身体だけど、間違いなく先生だ。

私の声が聞こえたのか、顔を一瞬だけ上げ、でもすぐに読んでいる手元の本に視線を落とした。

長めの前髪にメガネ。髪を切る前の先生を思い出す。

私達が近づいて行くと、十六歳の先生は眉をひそめてあからさまに身構えた。



「こ、こんにちは。あの、始めまして。私は瀬川さくらと言います」

「おれは高木秋斗。よろしく」

「・・・・・・」

私達に向けられた警戒心が、ビリビリと空気を通して感じられる。


「浅井ヒロさんですよね。お話しがあって来ました」

「・・研究員の方ですか? 今日の課題ならもう全部済ませました。

今はフリーな時間なので、拘束される理由はありません。お引き取りください」

本に視線を落としたまま、ふいっと背を向けられる。


小さくなっても先生だ。っていうかむしろ、大人の先生よりツンツンしてる。

口調は一緒だけど。

でも残念ながら、こんな拒絶くらいで引き下がる訳にはいかない。


「あ、あのっ! 私達、タイムマシンで未来から来た二十五歳のあなたと親しい者なんです。あのっ・・怪しい者ではなくて・・」

我ながら、自分で言ってて、なんだそれと突っ込みたくなるようなセリフだ。


当然先生も呆れたような顔でため息をつく。

「・・・非現実的な妄想に付き合っているほど、私は暇ではありませんので、どうぞ、お引き取りを」

「本当なんです! これを、見てください」

私はカバンから一枚の紙を取り出して、彼に渡した。

秘密兵器を!

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