27 ほっとけない
「それは・・だってほら、いつまでも先生にこっちにいられたら嫌だし、諦めて未来に戻ってもらいたいから」
秋斗が納得してくれそうな理由を選んで口にすると、くすっと笑われた。
「嘘ばっかり。さくらは嘘が下手すぎ。目が浮ついてるよ」
私の頬を指でそっと撫でる。
困ったような、しょうがないなあって言う優しい顔。
「ごめん。わかってる。・・・たまに孤独な暗い顔してるもんな、あいつ。
捨てられた子犬みたいな目ぇしてさ。
だから、ほっとけないんだろ? さくら」
ハッとした。言われてみると、それだ。
私が先生のこと、なんかモヤモヤするの。
捨てられてる子犬を見つけて、そのまま素通りしたときの罪悪感。
それに似てる。
うちには猫が一匹いる。秋斗のおうちにも一匹。
私が去年学校帰りに拾っちゃっ て、ママたちが気に入ってくれて、飼うことになった。
うちのはロミオ。秋斗のおうちのがジュリエット。
名前はママたちがつけた。 それって悲劇じゃないの?って聞いたら、カワイイ名前なんだからいいの、気にしない気にしないって笑い飛ばされた。
昔からの私の拾い癖は、あんまり抜けてないんだよね。
なんか、こう、 そのままにしとけないっていうか。
先生は猫でも犬でもないけど、拾うっていうか、なにかしてあげなきゃって思う。
事情を知ったからには、このまま知らないふりないて、私にはできない。
秋斗は私の背中に腕を回して、そっと抱きしめてくれた。
「親に捨てられたみたいに施設に入れられて、ずっとモルモットにされて。
一度も会わないまま親は死んじゃうなんて辛いよな。おれには想像もできない」
「・・うん」
「このままほおっておけない。助けたい、なにかできることしてやりたいって、そう思ってるんだろ? さくら」
私の思考なんて全部お見通しみたいだ。
分かってくれるのはもちろん嬉しい。なんか自分の単純さを思い知らされるけど。
「秋斗は、私のこと、なんでもわかっちゃうのね」
ちょっと拗ねたように言うと、秋斗は少し意地悪な笑みを見せる。
「まあね。さくらのことなら。長いお付き合いですから」
「秋斗も一緒にやってくれる? 一人じゃ難しいけど、秋斗がいればできそうな
気がするし。ね、おねがい」
「こんな時ばっかり、可愛くおねだりしてくるなんてずるいなあ。
さくらを一人であいつのとこに行かせるわけないよ。
多少気がのらないけど、カワイイ彼女の滅多に聞かないお願いだし、やりますか。
泣かせちゃったし」
「ありがとうっ! やっぱり秋斗はやさしい!」
ぎゅうっとしがみつくと、秋斗は痛いくらいぎゅうって抱きしめてくれる。
「浅井には、めいっぱい恩を売っておこう。んで、感謝で頭が上がらないように
しちゃおうぜー」
秋斗はにやっと笑う。
「うん!」
秋斗が笑ってくれると、ヤル気がでるんだよね。
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