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26 ごめん

「なんでそんなこと言うの!

私が、私が好きなのはずっとずっとずーっと秋斗だけだって知ってるくせにっ!

そんなこと言う秋斗なんてキライっ!

もう、もう知らないっ! ばかあっ!」

夢中で叫んで、私は秋斗に背を向けて駆け出した。

「さくらっ!」

すぐに捕まって、秋斗の大きな腕に包まれる。

「ごめんっ。・・言い過ぎた」


くるっと向かい合わせになってぎゅうっと抱き締められた。

昂った感情は涙になって、ぼろぼろぼろぼろ溢れる。


「さくら。キライだなんて、勢いでも言わないで。ヘコむ・・・」

「あ、あきとが、わるいんだもんー。ばかぁー」

涙腺が壊れたのか、涙が止まらなくなった。

「ごめんって。あー、もう、泣かないで。さくら」

秋斗が焦ってる。

私はぎゅうーっとしがみついて、顔を秋斗の胸にうずめてぐりぐりと押し付けた。




泣き止んだ後もしばらく、私達は抱き合っていた。


大人しくなった私の手を引いて、再びベンチに座る。

「あんまりあいつのこと、気に掛けるから妬いただけ。ごめん」

「・・・」


「たくさん泣かせちゃったお詫びに、おれから一つ、白状するよ。

浅井のこと、人間的には嫌いじゃない。

あいつのマンションで一緒に過ごしてた時間はすごく楽しかったし。

・・・あいつ、話してるとおもしろいし。知識ハンパじゃないし。

科学者としては尊敬に値する存在だと思ってる」

まさか秋斗の口からそんな言葉が出て来るとは思わなくて、驚いた。


「ただ、さくらに手を出そうとしてるのが気に入らないだけ。

あいつがさくらのことあきらめるって言いさえすれば、おれだってこんなに目の敵にしなくて済むんだけどね」

「そうなの? なんかいつも先生の話題が出るたびにプンプンしてるから、

相当キライなのかと思ってた」

「まあ、出会う形が違ってたら友情も芽生えてたかもね。

今からじゃ無理だけど」

「じゃあ尚更、先生のことなんとかしてあげようよ! 秋斗!」

「・・あいつを助けるって、どうするつもりなの?」



秋斗が聞く姿勢に入ってくれたから、私は向き合って話した。

「先生は両親に愛されずに育ったって言ったの。だから誰も愛せなかったって。

先生は愛情に飢えているのよ。親から愛されずに育ったことで、スレちゃってるんだって思う。

誰も好きになったことなんかない、とか言ってたもの」

「でも、さくらに一目惚れした。だから何が何でもさくらにを手に入れたいってわけか」

「親が子どもを愛さないなんて信じられない。なにか理由があったんだと思う。

それをつきとめる。

先生に、ご両親が本当は先生のこと愛していたってことを知ってもらう。

先生とご両親の仲を修復させることができたら、そしたら先生の心も満たされるはずよ」

「いくらさくらでも、それは難しいかもよ。自分の親ならともかく、浅井の親でしょ? 分からないことが多すぎる。

本人の協力が絶対必要だ。タイムマシンはあいつが持ってるし、どの時間に飛ぶかもあいつしか分からない。

つまり、 浅井に、親と向き合う覚悟を決めさせなきゃいけないってことだよ」

「そこは・・・なんとか説得する」

ちょっと自信はないけど、ここはとりあえずそう言っとかないと。


「過去に行くのは大きなリスクがある。以前にもヤバかったの覚えてるよね?

それでもやるの?

浅井のことでなんでさくらがそんなに必死になるの?」


確かに、秋斗の言ってることは正論だ。

付きまとわれて迷惑しているのはこっちだし、先生の為にそこまでする理由はない。

でも、あんな先生の顔を見てしまったら、ほおってなんかおけないよ。

あの悲しげな目。何かを訴えられてるみたいなんだもの。


・・・そう言ったら秋斗は怒るかな。

秋斗が怒らないような理由を頭の中で必死で考えた。


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