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12 邪魔者への牽制

約束通り、その日は秋斗と家族みんなで夕ご飯を食べた。

家族揃っての誕生日ディナー。

テーブルには私の好きなメニューが並んでる。

食後にはママのお手製のケーキもでてきた。ろうそくを吹き消して、拍手してもらって、なんだか幸せだなあってちょっと涙が出そうになった。

はるにいにバレたらからかわれること間違いないから、慌てて袖でぬぐったけど。



食事の後、秋斗と二人で私の部屋に上がった。はるにいは気を利かせてくれたのか、リビングでゲームやってるからごゆっくりと言ってくれた。にやけながら。


「さくら。お誕生日、おめでとう」

「ありがとう。今年も、家族のみんなと、秋斗にお祝いしてもらって、とっても嬉しい」

「はい。じゃあ、目を閉じてごらーん?」

キスをくれると思ってドキドキしながら目を閉じる。

あれ?

ガサガサと紙の音がして、私の左手が秋斗の手に包まれる。何かが、指に触れる。

硬い何か・・

「はい、さくら」

目を開けると、秋斗が私の左手の薬指にはまった指輪にそっとキスをした。

映画で見るような仕草に、どきんと私の胸が鳴る。


「びっくりした? こっちが本命のプレゼント。ぴったりだね、よかった」

私の指にはまったシルバーリング。細目でゆるくウェーブのかかった、シンプルできれいなデザイン。

「秋斗、こんな・・素敵なもの、いいの?」


リングはもちろんだけど、横に置いてある箱からして高い物だと分かる。

雑貨屋で買う安いファッションリングにこんな箱はついてこない。

こんなきちんとした箱に入れてもらえるって事はそういうお店で買ったってこと。


「この前の科学館でのお手伝い、バイトだったんだ。おれにとっては初めて労働して貰ったバイト代。さくらの十六歳の誕生日に、指輪を贈りたくて。

ずっと前から計画してたんだ」

秋斗は指輪のはまった私の手を指で優しく撫でる。


あ、左手の薬指って。け、け、けっこ・・

「本当は今すぐにでも結婚したいけどね。おれ達はまだ親に面倒みて貰ってる学生だし。だから、予約ってことで。ね?」

いいよね?ってにっこり笑う秋斗。

胸がいっぱいで、言葉が出でない。

私は、こんなに愛されて、大事にしてもらって、なんて幸せなんだろう。


「ありがとう、秋斗。あ、ありがとー・・」

「なーんで泣くの」

秋斗はくすっと笑って、私の目尻に浮かんだ涙を指ですくった。

「だって、うれしい。すごくすごく、うれしいよ」

「泣くほど喜んでもらえて嬉しいよ。でも、これはおれの自己満足でもあるんだよね」

「え?」

「これで、さくらはおれのものってこと。彼女に指輪を渡すのは男の独占欲の

現れだよ。邪魔者もいるし、牽制しとかないとね」

秋斗は私の左手を包んだまま、何度も優しいキスをくれた。


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