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第四話 奴隷



 ……結果的に、そんなチャンスはなかった。


「大人しくしな。なんのためにそんな姿にしたと思ってんだぃ」

 あの夜、サイは獣のように、僕の幼い身体(ロリハリボディ)に襲い掛かってきた。

 そういえば、強姦をはたらく動物は、イルカか霊長類しかいないのだそうだ。

 どうでもいい。


 サイはロリコンだったのだ。

 年増でレズでロリとか、どういうことなんだよ。(こじ)らせすぎだろ。


「まったくかわいいやつだねぇ。ほ~れほれここがいいのかぃ?」

 その手のAVのオヤジのような口調と手つきで僕の身体を陵辱するサイ。


 ・・・それはいい。

なんというか、僕も新しい世界を知ることができたというか。ありがとうございました///


 結局一晩中、身体の隅から隅まで舐めまわされたり、撫でまわされたり、あとえーと、…いろいろである。

いろいろされて、気がついたころには空が明るくなりはじめていた。

 そこらへんで僕は眠ってしまったらしい。



 次に目が覚めたときには、僕は檻の中だった。


 手にはずしりと重い鉄の手錠が付けられていた。

 もちろん剣も無い。


 頭の中が真っ白になった。

 きっと顔は真っ青だっただろう。



 思いつくかぎりの罵声で牢屋の外に向かって叫んでいると、見ただけでそれとわかるようなベタなゴロツキがやってきて、背中を鞭で打たれた。

 この幼い身体では何も抵抗出来ず、されるがままだった。


 その次の日はおとなしくしていたが、何もしてなくても鞭で打たれた。

 片手で軽々と持ち上げられ、二人掛かりで痛めつけられた。


 今日も鞭で打たれた。

 明日も鞭で打たれるのだろう。


 背中が痛い。

 スウェットはぼろぼろになってしまった。特に背中側がひどい。

 指で触ってみるとさらに鋭い痛みが走る。血が滲んでいた。


 鞭が痛い。

 これがとんでもなく痛い。痛いなんてもんじゃない。

 一度打たれただけで、想像だにしない痛みにもう心が折れた。

 二打目の鞭が一打目の後に重なり、傷口を刃物で抉られるような錯覚を覚えた。

 三打目が振るわれる前に泣き叫んで許しを請うた。


 鞭が恐い。

 ゴロツキは何かあるたびに、床や壁を鞭で打つ。

 ピシャン! という音が耳に突き刺さるたびに、全身が竦んだ。

 運ばされている奴隷商人の荷物をうっかり取り落とすと、罵声を浴びせられて、また鞭で打たれるのだ。

 特に何もなくても、床や壁を鞭で打つ。

 牢屋の中で眠っていても、その音を聞くと飛び起きてしまい、見ると檻の外で鞭の主がニヤニヤ笑っているのだ。


 ここに来て、この世界に来てまだ数日である。

 数日でパブロフの犬の完成だ。嫌な男だパブロフは。

 きっと奴隷というのは、皆こうやって作られるのだろう。



 これからの未来を、考えたくない。

 考えたくないのに、やることがなくて、考えるしかない。


 本当、どうなってしまうんだろう。




「・・・おい、お前。・・起きろ」

 小声で僕を起こす声。肩を揺らされ背中の傷に障る。


「…う……ん?」

 まだ、夜じゃないか。やっと眠れたっていうのに。

 眠いんだよ。寝かせてくれ。


「・・・起きろって。ここから逃げるんだ」

 飛び起きる。

 ここから逃げるって?


「ほんとに!?」

 しっ、と人差し指で僕の口を塞いで、少年はコクリと頷く。

「・・オレはエッジ。逃げる算段があるんだ。お前もついて来るか?」

 ぶんぶんと首を縦に振る。

 鞭の無いところになら何処へでも!!



「明日あいつらは馬車で次の街に出発する。もちろんオレたちもだ」


 僕はここに来て3日だが、同じ牢にいる人たちはもうずっとこうしているのだろう。事情も僕より詳しいし、今後の予定もある程度予想できるという。

 この牢には僕をいれて5人の奴隷がいる。牢1つに奴隷5人だ。ここには同じ牢が他にもいくつかある。

 みんな目が死んでるので話しかけることもないし、話しかけられたこともない。

 その中で一番幼女な僕を除けば、僕の知るかぎり彼が最年少だ。10才くらいだろうか。


 この3日間、僕らはひたすら奴隷商人の荷物を馬車に積み込む簡単な作業をさせられている。鞭で脅かされながら。

 今日の分でその作業は終わり、全部で8台ある馬車は次の街に向かう。そこでまた荷物を降ろし、何人かの奴隷は売られ、何人かの新しい奴隷が買われ、新しい荷物を積み込んでは、また次の街へ。そんなサイクルで国中を回っているらしい。


「次の街には前にいたことがあってよく知ってるんだ。下水道ってわかるか? 街の下に川が流れてんだ」

 少年が言うには、次の街というのはかなり大きな街で、下水が整備されてるらしい。やはりこの世界は文明が発達している。


 僕らを拘束しているのは両腕に付けられた手錠だけだ。これは商人がケチなせいで、子供用も何もないから僕ら二人は簡単に腕が抜けるらしい。

やってみたが、たしかにあっさり腕は抜けてくれた。とりあえず元通りに腕を戻す。


 移動の際にはこの手錠に長いロープを通し、僕ら全員を一括りにして歩かせる。

 次の街までは日が暮れるまでには着くらしい。街に着いたら見張りの目を盗んで手錠から腕を抜いておき、隙を見て下水の入り口に飛び込むという算段だ。

 下水は街中に張り巡らされていて、子供が入れるような入り口なら無数にあるという。

 中は迷路みたくなっているらしくて、隠れる場所はいくらでもある。いくつもある街の外まで続いてる道をたどれば、大きな川に出て逃げられる。それがゴールだ。


「手錠を抜けれるのも下水の入り口に入れるのも、オレら二人だけだ。だから他の奴らは見捨てなくちゃいけない」

「・・・・なんでぼくをつれていくんだ?」

 こんな幼いやつ連れて行っても、逃げるとき足手纏いになるんじゃないだろうか?

「ぼく? ・・・無事に逃げ切れても、オレたちはろくに仕事も出来ないだろう? 一人で生きていくより、二人で助け合わないと」

 たしかにそれはそうだ。

 この歳で親もいなければストリートチルドレンだろう。盗みを働いて生きていくしかないかもしれない。僕でも見張りや囮くらいは出来るだろう。同情を誘えればお金を恵んでもらえるかもしれない。


「ぜもひもない。わかった。ついていくよ」

 後のことなどどうなるかわからないさ。

 僕は自由になったら元の世界に帰るんだ。

 そのためにも、まずはここから逃れないと。

「よし。それならもう寝よう。街まで半日歩いてから逃げるんだ、明日は体力使うぞ」

 そういって少年は、固い床の隅の自分の寝床に戻っていった。


 明日の夕方には脱走決行だ。いきなりではあるが、気分は紫ターバンと緑髪王子か。

 興奮で眠れない。…ということはなく。日々の疲れは僕を速やかに眠りへと誘ってくれた。


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