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即興小説  作者: 談儀祀
5/15

あいつと僕の宇宙人妄想

 あいつは宇宙人で、僕ら人間を見下していた。

「ワレワレハ、ウチュウジンダ」

「ふざけてるのかてめえ」

 それが僕とあいつのいつもの風景だった。別にあいつはタコ型でも機械のような体でも未発見の素材でできているわけでもない、普通の人間で間違いなかった。両親も一般人で、あいつの父はサラリーマンを、母は託児所でパートをしていたとか言っていた。

「ワレワレウチュウジンハ、ジンルイヲホロボスタメ、コノチジョウニヤッテキタノダ」

 あいつは常日頃からそんなことばかり言って、いつも周りから浮いていた。僕があいつとつるむようになったのはどうしてだったか。教師に言われて仕方なく、とかだった気がする。

 あいつは宇宙人妄想を除けば普通にいる学生だったのだ。成績はかろうじて中の下くらい、運動神経はそこそこ。高校入試の時に、僕と同じ学校に入るんだと必死こいて勉強していたのは記憶に新しい。

「ウチュウジンガ、マダセメテコナイノハ、ワタシガマダココニイルカラナノダ。カンシャシタマエヨ、ニンゲン」

 あいつはこんなセリフを言う時には必ず手を喉に当てて一文字ずつ区切って発声していた。誰でも一度はやるであろう、ワレワレハウチュウジンダ、である。ただ、あいつの場合はレパートリーを増やしていった結果妙に長いセリフが増えてしまい、言っている途中で喉が痛いなどと喚きだすことも多かった。

 あいつは何をしたかったんだろう、と今になって思う。決して馬鹿ではなかった。テストの点は芳しいとは言い難かったが、その行動には筋が通っていてブレがなかった。

 なのに、宇宙人妄想だけは納得ができないのだ。あいつが死んだ今も、あいつがどうしてそんなことをしていたのか僕には理解できない。いや、理解しようとしてこなかったからなのだろう。

 葬式で、僕はあいつの両親に少しだけ話を聞くことができた。癌だったらしい。かなり小さいころから発症していて、最近まで症状が進行しなかったのは奇跡のような確率らしい。

「どうしてそんなことをしてたんだよ……」

 僕にはあいつのことがわからない。わかっていたような気はしたんだ。でも、あいつが癌に侵されていることも、あいつがどうして宇宙人妄想なんかに取りつかれて、そしてそれを死ぬまで続けたのかも、何もかもがわからなかった。

 僕はただ、布団に横たわっている。一人暮らしをするようになって、たまにあいつが訪れた部屋。あいつは最後まで抗癌剤を飲まなかったらしい。癌に侵される苦痛にさらされながら、それでもここを訪れていた。

「ワレワレウチュウジンハ、ニンゲンニタイシテサイゴツウチョウヲオコナウコトニシタ」

 あの時あいつは、何を言いたかったのだろうか。

「モウ、コウシテアウコトモナイダロウ」

 最期の日、そういったあいつは、それでも輝いていて。

「さよなら」

 どうしてだろうと思っていた、最後だけなぜ、喉に手を当てていつものように、宇宙人妄想に取りつかれた発言をしないのかと。

 あいつが死ぬ前に、僕があったのはそれで最後だった。あいつは自分の死を悟っていたのだろうか。

 あいつにとって、あいつと人間は何だったのか、あいつと僕はどんな関係だったのだろうか。


 そんなことを思いながら、今夜は泣こうと思う。

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