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即興小説  作者: 談儀祀
10/15

アイ歌

 ブラウザはなるべくGoogleChromeを使用してくださいまじで。

 そう書かれていた。僕ははぁ、とため息を吐く。GoogleChromeはあまり好きではないのだ。最後のタブを閉じた時にブラウザごと閉じてしまうのがよろしくない。OperaやらLunascapeに慣れすぎてしまったからだろうか。IEだけは使う気になれないのだが。

 こうしてパイロットとして訓練を積む中で一番苦痛なのが情報実技演習なのだった。正直、面白くない。大体の場合僕はこの科目で最も情報を見つけ出すのが早いパイロットだった。正直なところ、カスタマイズしていないブラウザを弄りたくてたまらないと思う。

 こうして情報を見つけ終わった今、この科目を取っている他の数人の顔を見渡す。誰もがこの国のパイロットとして相応しい人物であろうとがんばっている。それなのに僕はどうしてだろうか。彼ら以上の努力をしたいとは思わないのだ。パイロットになりたくないわけではない。なりたいが、そこまで熱を入れることができないのだ。

 ちらり、と横の席に座った少女を見る。わずか16歳、普通に行けば高校生になるのだろうか。そんな少女が、パイロットになると一心不乱に授業を受けている。大人でさえ血反吐を吐くような授業を受け始めてから、もう半年。入った時にはお嬢様然としていた容姿も、髪を切って日焼けしたせいでまるで海辺のサーファーのようだった。

 彼女は指定された情報がまだ手に入ってないのだろう。がむしゃらに検索ワードを叩きこむ。僕の視線に気づいたのか、一瞬だけ僕を見てそして画面に向き直った。

「いさましい」

 誰にも気づかれないようにつぶやく。いさましいこの少女は僕の憧れだった。10も離れている少女を憧れということに躊躇いはない。この厳しい訓練の中で、年齢と能力が全く無関係であることを僕は知っていた。

 そしてここに長くいてのんびりと訓練を重ねる僕は、この少女が決してパイロットに慣れないことも理解していた。少女は年齢の割に聡く、そして機敏だったが、それでもその吸収は遅すぎた。"本物"は僕らのはるか先を行くのだ。

 僕は少女がどうしても可哀そうになった。同情したのだ。あるいは、自分と重ねてみてしまったのか。僕自身も吸収が遅く、"本物"になれないことは明らかだった。

 カタカタと繰り返しなっていたキーボードの音が途切れた。授業も終わりが近い。少女も必要な情報は探し終えたようだ。開かれていた四色のブラウザが閉じられる。

 僕は、授業が終わったら少女を食事にでも誘おうか、と思う。

 "本物"になれなくても、見つかるものはあるはずだと信じながら。

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