執務に追われて
魁霊は優秀な学者だ。そのせいあってか、コロナトの技術は凄まじい勢いで高まっている。例えばそう、【家】だ。家は本来、その場から動かすことはない。もし動かそうと思ったなら自分1人の力では到底不可能だろう。しかし。コロナトの技術者にかかれば、家が持ち運べる。【持ち運びカプセル】、これを使えば簡単だ。家をカプセルの中に入れて持ち運びが出来るようになっている。
そんな技術者…魁霊の欠点。それは、ネーミングセンスの無さと声の大きさだった。
♂♀
「さて、と…」
とりあえず町に降りてきたが、いつ来ても賑やかな町だ。
「巫孤の所へ先に行っておくか…」
ここからそう離れてはいない。徒歩でも7分程度だ。久々に来たし、魔法屋にも寄って行こう。そう思ってしばらく歩いていると、いた。魁霊だ。町の治安維持のためのパトロール中らしい。ご丁寧に腕章とたすきを掛け、そこに〈パトロール中につき質問は受け付けません〉と記してある。…パトロール中、でいいと思うが気にしたら負けだ。
「魁霊ー。私だー、稀来だー」
いつものように何の変哲もない呼び方をすると
「あー!稀来さんー!今パトロール中なので【朱学】で待っててくださいー!すぐ行きますー!」
と何の変哲もない返事が返ってきた。
朱学とは、正式名を【朱雀魔術学院】とした学校である。ネイトに建っている青学と連携している。察しの良い人ならもう気づいているかもしれないが、白学と呼ばれる【白虎魔術学院】、玄学と呼ばれる【玄武魔術学院】もある。その二校とも連携をしている。無論、四校が連携し合って日々進歩しているのだが。朱学は、比較的賑やかな学校だ。休み時間には校庭でドッジボールや鉄棒をするくらいに、賑やかだ。正直、少し引いている。
「朱学へ行く前に魔法屋に寄る!朱学へは後で寄らせてもらう!」
魔法屋が先だし、巫孤にも会いたい。稀来は魁霊の返事を待たずに歩いていった。