二日目:ちょっと友好的?
(ああああ~、何も浮かばないぃぃぃ)
宣戦布告から二日目の現在。
特に戦果を挙げることなく、既に学校での貴重な時間を半分も消費して現在お昼前の四時限目。
お腹も空いてきたし、空は晴れて日差しもポカポカと暖かい。
それに今の授業内容は宇宙語を話されてるとしか思えない英語の時間。
国語すら危うい日本人に更なる言語を植えつけようとするのは間違っていると思うのよ……あたしは。
かといって英語をなくしてもっと深く日本語を学べと言われても、きっと似たような事を思って反発するんだろうけど、まあ、それはそれ……。
(うぅ……眠い。このまま寝ちゃおうかな……)
全てから逃避しようかと思い始め、先生に見つからないように教科書やノートなど寝やすいようにこっそり移動させる。
そして寝る準備が整い、満足したところで我に変える。
(いや、ここで寝たらダメでしょう! 考えなくちゃ!!)
昨日、今日と進展が無いのは痛過ぎる……やばいんだって!!
それに昨日は好感度を上げるどころか、恐怖を煽ったんだしね!!
ゼロスタートどころか、マイナスからのスタートになったのよ!! どうするのよ全く!!
そう何度も何度も自分に言い聞かせて、何も解決できないまま今に至ると言うのに昼寝とかないだろう。
何かいい解決方法を見出さなくちゃ七日目に待っているのは本当に悲劇だもの、ちょっとは気合を入れないと!!
でもでも、どうしたらいいの? きっと気のせいでは無いと思うのよね。気合を入れて鈴木君に話しかけるたびに墓穴掘ってる事実は。
はぁ……重い、重過ぎるわ。この問題。
明海ちゃんはあの朝以降相談相手にはなってくれそうに無いけど、そうするともうあたしには相談できる相手はいないし……あ、ちょっと寂しくなってきた。
やっぱり一人で何とかしないといけないよね。
でも本当にどうしたらいいの!?
「おい」
「え?」
悶々と考えていたら、不意に隣から声がかけられた。
授業中だけあって、それはとっても小さな声だったけど、あたしには聞き取る事ができた。
だってそれは、大好きな彼――鈴木君の声だったから。
「どこでつまずいてるんだ?」
「……へ?」
鈴木君の言葉に、今度はその問いの意味を飲み込む事ができずに首をかしげる。
そのあたしの姿に鈴木君も思案顔。
え、なに? この不思議な空気。
「授業でわからないところがあって頭を抱えてたんじゃないのか?」
「いや、授業は全てわかりませんが……」
今、悩んでいたのは、あなたの心を如何にすれば、げっちゅできるのかって事でした。
なぁんて言えるはずもなく、あたしはなんとも言えない空気を払拭すべくにへらぁと笑う。
そうすると、鈴木君はひくっと頬を引きつらせた。
「女の子の笑顔見て頬を引きつらせるのはどうかと思う」
「笑顔なのか今のは」
「何だと思ったの」
「……」
黙秘ですか。
「わからない事があれば聞けよ……知ってる範囲であれば答えるから」
「え?」
鈴木君はそう言い置いて、再び黒板へと顔を向けていた。
今なんて?
話しかけるチャンスを、鈴木君から貰えちゃったのかな……。
告白する前は、授業中はいつも彼の真剣な横顔だけを見つめていた。
だって頭の良い彼だし授業はいつも真面目に受けていて、話しかけたら嫌われそうだったからどうしても話しかける事ができなかった。
それが今、彼の口から話しかけても良いと言われたのだ。
その事に改めて気がつくと、胸がとくんと高鳴った。
嬉しい。
その一言が胸一杯に広がって、顔が緩んでしまった。
「こわい」
「ぅ」
その顔をばっちり鈴木君に見られて容赦の無い一言。
でもでも、そんな言葉が気にならないくらいあたしは浮かれ放題だった。
あたしは早速、彼の机に少しだけノートを進入させて「わからないところ」をシャーペンで指し示す。
「本当に最初からだな……」
「いやぁ」
呆れきった声が、じわりと胸をくすぐられてむずがゆいけど、そんなやりとりさえも嬉しくてたまらない。
それからこの授業から後半は、ずっと彼へ質問をして終わった。
ちょっとは距離が縮んでゼロよりもさらにランクアップしたんじゃないかな?
って、思えた二日目が終了。