あるゲッシーの現状確認
「うにゅ〜、どういうことなんですかね〜、これは」
私は草の上で右へ左へとゴロゴロ転がる。まだ目覚めた森の中だ。
「はぁポカポカあったかい〜、草がフッカフカ〜」
私はうつ伏せの大の字になって停止。心地よくて思考がまとまらない。
部長さん達との会話をぼんやり思い返す。
「微妙に会話が噛み合ってない時があったよなぁ、そういえば」
まぁ違う世界の異種族だしね、意思疎通が出来てただけですごいけど。
私のために色々気を遣ってくれた彼女達に、文句を言う気にはなれない。
「でもこの体はちょっとなぁ、全然冒険向きじゃ無いんだよなぁ」
私は寝転んだまま頭に手をやる。フサフサの毛に覆われた縦耳を撫でる。
「ん〜、どうせ頭も動いてないし、のんびり現状確認でもしよう」
もうこっちに来ちゃったんだし、昼寝はまた後にしよう。
あるところに、その意識だけで活動できる種族がいた。
彼らは異世界にも行けるようになり、そこで生き物を見守る観察者となった。
長い時間が過ぎ、彼らの中には自分の担当する種族を贔屓するものが現れる。
異世界召喚やらを濫用した結果、多くの世界が危険な状態になってしまう。
部長さん達が頑張ってなんとか対処したが、現状ではまだ油断できない。
調査や監視を継続しましょうとなった。…さすがに端折りすぎか?
世界の維持管理に必要な物資の運搬と、第三者視点での監視の必要性が言及される。
この程度の任務なら地球人くらいが適任であろうとの判断が下される。
結果として、直近で死んだ私の魂が召喚される、というわけ。
うん、間違って無いよね。
問題はここからなんだよな。
異世界転生ならお気に入りのゲームキャラですよねやっぱりとか言うからさぁ。
剣も魔法も使える細マッチョの美形キャラで無双する気満々だったのになぁ。
何故にゲッシーなのかしら?
いや、好きだけども、件のソシャゲで4年近く使ってたけども。
私は身を起こして自分の身体を確認する。
ゲッシーというのは、いわゆる獣人の一種である。
人間にケモノの耳と尻尾を付けただけの獣人とはちょっと違う。
動物を直立させ、人間と同じような生活が出来るまで進化させる。
というのが一番近いような…多分合ってる気がする。
ちなみに私がプレイしていたゲッシーは…つまり現在の私のことだけど、
ハムスターっぽい。
身長は1メートル前後…耳の長さを入れて。
顔は動物っぽい人間というか、人間っぽい動物というか…
「あんまり表情動かないなぁ、表情筋とかどうなってるの?」
後でマッサージとかした方が良いかもしれない。毎晩寝る前とか。
頭には髪の毛っぽいサラサラヘアー。
体毛は多いけど、直毛短毛で清潔感のある綺麗な毛並みである。
うむ、清潔感は大事だよな、種族関係なく大事。
私はクンクンと自分の体の匂いを嗅ぐ。マズイ、草っぽい匂いがする。
体を洗えそうな泉でもないかなぁと歩き出す。
「お、体が軽い」歩いてるのにスキップしてるような感じがする。
ちょっと走ってみる。体が小さくなったからか軽々と動く、楽しい。
「わはは、これは予想外」広場の中をぴょんぴょんと走り回ってしまう。
しばらく動き回って満足した私は、再び草の上に寝転がった。
「ふぅ、前言撤回、ゲッシーなかなか良いじゃん」私は息を整える。
「それは良かったね」
「…うわぁ?!」
いきなり話しかけられた私は飛び上がる、おおジャンプ力もスゴイな。
いや違う、ここ森の中だよ!?さっきまで誰もいなかったよね?!
「ごめんごめん、ちょっとお話ししたくて」若い女性がくすくすと笑う。
「もう少し考えて声を掛けたまえ…」その後ろから少し年上の男性の声。
2人とも森の中にいる服装じゃない、何か尋常じゃない雰囲気もあるし。
「ホントにごめん、とりあえず自己紹介するから、お話し聞かせて」
「ボクはねー、勇者なんだよ、ヨロシクー」
「…魔王だ」
「………ふぁっ!?」




