あるゲッシーのプロローグその2
今なんかすごいことを言われたけど、気にしたら負けな気がする。
とりあえず全方位に喧嘩を売るような発言は控えて欲しい。
「まずは私たちのことから話しましょうか」部長さんが私の方を向く。
そうそう、ここはスルーして早々に話題の転換と参りましょう。
「私たちは…そうね、あなた方より少し早く生まれだけの存在よ」
ツッコんでも話が進まないので、おとなしく話を聞くことにする。不本意だけど。
部長さんのお話では、彼女たちは我々とは別の次元で進化した意識体だそうだ。
思考や記憶を共有したり、それらを肉体と切り離すことが可能だったらしい。
進化の過程で思念のみ他次元…つまり異世界へ飛べるようになった。
肉体は無くても、固定されていない材料があれば自由に作成できるとのこと。
もうほぼ神様レベルだと思うんだが、少し早くって何十億年なんだろうね?
「…何か言いたそうね」すみません、心を読むのはやめて下さい。
「そして我々の一部は異世界で様々な観察を行うようになったの、主に生物をね」
部長さんは一息ついた。「ここまでで何か質問はあるかしら?」
「観察だけですか、コミュニケーションを取ろうとは考えなかったんでしょうか」
私は問いかける。知識欲は旺盛っぽいのにずいぶんおとなしく感じたからだ。
「とんでもない、意識を向けただけで種族ごと消滅するケースもあるのよ?」
部長さんは軽く身を震わせると、コーヒーカップを口元へ運ぶ。
「どんな生命でも、この世界を新たな高みへ牽引する可能性があるの…
我々の不用意な行動で、その芽を摘むことは出来ないわ」
部長さんは穏やかに微笑む。「まぁ、逆に宇宙を滅ぼしかけた種族もいたけど」
おい!ちょっと良い話だと思った私の心を返せ!
「そういう訳で、我々の活動は観察のみ、接触は最低限だったの、でもね」
部長さんの手には、いつの間にか分厚いフォルダがあった。
長く接することで、観察対象の種族にある種の愛着を感じる者もいたらしい。
そりゃずーっと見てればなぁ、贔屓したくなる気持ちも分かるよなぁ。
「世界を構成する重要素材の不足、文明の長期的な停滞、等において、
異世界召喚が認められていた、いや黙認されていたの」
「ここで異世界召喚が出てくるんですね、でも原則不干渉は?」
やっと自分に関係ありそうな話題になった。いや今までも真面目に聞いてたけど。
「事態が対処不可能になる前の対応、複数の問題に総合的に対応とあるけど…」
部長さんは顔をしかめる。「まぁ、言い訳っぽいわね」
「こういうことをする観察者は、その文明や種族に過干渉だったのだけれど…
異世界召喚でそれをさらに悪化させるものを得てしまったの」
「神、という概念よ」
「すみません、ちょっと意味が分からないんですが…」
異世界召喚と神様はセットメニューだけど、観察者さんはどう関係するの?
「あなたの住む世界以外に、神という考えは存在しないの」
部屋に沈黙が落ちた。3人とも私を見ている。「…ふむふむ、それで?」
「…あまり動揺はしないのね。ある意味予想通りだけど」部長さんが微笑む。
だって他の世界のことだし。こっちでも会ったこと無いし。
「でもくだんの観察者達は違った。神とは愛する種族を見守り導く存在…」
「ああ、自分の立場と重ねて見てしまったんですね」
それで一部の観察者達は、その行動をエスカレートさせてしまった。
過度に干渉し、指示をし、他の種族を冷遇した。
「最初はごく一部で行われていたらしいわ、でも気づいた時には…」
ものすごい数の種族が、直接間接に進化の可能性を歪められてしまっていた。
「あくまでも可能性の問題なのだけれど、それ故に補償のしようも無いの」
彼女は悲しげだった。あくまでも可能性、だが彼女は誠実なのだろう。
部長さん、あなたの誠実さは私にも分か「それなのに!あいつときたら!」
あ、キレた。係長と軍曹がデスクの裏に避難してる。
「創造神とか自称して!異世界召喚の!マニュアルを作るとか!何考えてんだ!」
私は軍曹に抱えられて部屋の隅に避難した。係長はソファーでバリケード作製中。
「しかもそれを無料配布とか!自然発生の自称神にまで!アホか!
その辺の自称国王にまで!回収する身にもなれ!頭沸いてんのか!」




