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あるゲッシーの異世界ひとり旅  作者: Kengoh


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あるゲッシーのグルメレポ


カーテンの隙間から差し込む朝日と、知らない鳥のさえずりで目を覚ます。


ここは冒険者ギルドに併設された宿屋、質素だけど清潔に整えられた部屋だ。



私はベッドの上で、手と足と耳をうーんと伸ばす。


シーツもキレイだし、毎日干しているのか微かにお日様の匂いがする。幸せ。



もっと寝ていたい気もするけど、目覚めると同時に胃が活動を始めている。


もう食べる気満々なんだよなぁ、我ながらしょうがないやつだ。



起き上がって毛並みと服装を確認。うん、バッチリ。


シーツを畳んで廊下に出る。今日の朝ご飯は何かなぁ。





昨日は訓練場の後、シーリルさんと一緒にギルドの見学をした。


なぜかシーリルさんに抱えられてだけど。いやありがたいですけどね。



最初にギルドマスターさんにに紹介された。優しそうなお爺ちゃんだ。


私がヒヨリちゃんのお客(?)ということと、モンドさんの変化に驚いてた。



メイド付きの個室を用意するって言ってくれたけど、丁重にお断りした。


ホントはメイドさんという言葉に興味津々だったのは秘密だ。



…シーリルさんの視線が不穏な気もしたし。


これはゲッシーの危機察知能力だろうか?



とりあえず普通に扱って下さいとお願いしたら、獣人族用の部屋を紹介された。


今は誰も泊まって無いんだって。4人部屋を占有出来てラッキー。



それから受付のお姉さんに挨拶して、クエスト受注の説明なんかを受けた。


とりあえずその予定は無いけどね。説明はちゃんと聞いたよ?



小説だと冒険者登録するとお得って設定が多い。


こっちはどうなんだろ?シーリルさんに後で聞いてみよう。機嫌良い時に。



色々回って、最後に案内されたのがこの食堂。食べ物は大事だしね。


期待と不安があるのよね。こっちに来てからクッキーしか食べて無いんだもの。



扉の無い入り口から入ると、食堂独特の香りに包まれる。


やばい、これは美味しいとこだ!間違いない!



私がウズウズしていると、シーリルさんが女性の店員さんに声をかける。


「やあ、忙しいところすまない。グレイルは居るかな?」



まだ幼さの残る店員さんが、奥からパタパタと駆けてくる。


「いらっしゃい、すみません父は…、いえ店主は仕入れの相談で出かけていて…」



何か御用でしょうか?と首を傾げる。


「ああ、彼がしばらく世話になるので顔合わせにな」



シーリルさんは、鼻をクンクンさせている私を両手で抱えて店員さんに紹介する。


「こんにちわ!定食1つ!」私は右手をピッとあげて注文する。良いよね?



「それは初対面の相手にまず言うことなのか…?」シーリルさんは呆れ顔だ。


「ごめんなさい、店主が留守なのでしばらくお待ちください」店員さんは笑っている。



「食事時には一人で来るから伝えておいてくれ…」なんでため息つくの?


ちょ、待って、ここ絶対美味しいから。私には特別な知恵があるから分かるんだって。



シーリルさんは私を肩に担いで食堂を出る。


私は足をバタバタさせて抵抗するが、効果は無かった。無念。





と言う訳で、定食リベンジである。


あの後眠くなっちゃったので、シーリルさんにお礼を言って休ませてもらった。



新人さん達の訓練に付き合う約束もあるしね。


いや、朝はまた朝定食とかあるのかな?



ふんふーんとスキップしながら食堂へ向かう。


出会う職員さん達と挨拶を交わす。もう皆さん私の顔覚えてるの?



広めの長い廊下に出る。ここを直進すると食堂だ。


ん?なんか視線を感じる。ゲッシーの第六感的なモノがそう告げている、多分。



右手に窓がある。窓枠に両手をかけ、つま先立ちで外を見る。


…見るふりである。視界の隅で、サッと曲がり角に身を隠す人影を捉える。



金髪っぽいロングヘアーが見えたけど、誰だろう?


昨日来たばかりだし、後をつけられる覚えは無いんだけどなぁ。



考えすぎか、ゲッシーの魅力に心奪われたご婦人だろうか?


とりあえず空腹をなんとかする方が重要なので、食堂へ向かう。





「おっはようございまーす!」


食堂に入ると同時にポーズを決める。あれ、誰もいない…



「いらっしゃーい、お好きな席へどうぞー」奥から返事がある。


昨日の店員さんがパタパタと走ってくる。もしかして休み時間だった?



「早朝のお客様が一段落したところなんですよ」


今なら貸切ですから、ゆっくりして行ってくださいね、と彼女が微笑む。



窓際のテーブルに座る。なんか落ち着くなぁ。


テーブルも高価ではないが、繰り返し丁寧に手入れされているのが分かる。



期待しつつメニューを手に取る。白っぽい木の板に書かれているみたい。


「 本日の朝メニュー シェフのオススメ 」



…シンプルだなぁ。


これは味に自信があると受け取っていいかな?いいよね、きっと。



店員さんにシェフのオススメを注文する。


…メニュー1種類なのに、注文する意味あるのだろうか?謎だ。



「お待たせしましたー」注文から5分くらいで料理が到着した。


「おお…」来た来た来ましたよ。



メインは肉野菜炒め。香辛料とは違う刺激的な香りがわずかに混ざっている。


にんじんやパプリカっぽい細切り野菜が、目にも鮮やか。肉も大きい。



サイドはシンプルに、スライスした硬そうなパンとミルクである。


多分ミルクは飲むんじゃなくて、パンを浸すような気がする。



「では…いただきます!」フォークで野菜炒めをすくい、口に運ぶ。


予想的中!やっぱり当たりの店だったね、うんまいわ。



シャキシャキした野菜と、歯ごたえのある肉の食感がうれしい。


塩味だけじゃない、肉の脂と山椒っぽい香辛料が味を引き締めている。



最初は薄味かと思ったけど、口に入れるごとに新しい感覚があって楽しい。


砕いたナッツのような、胡麻のようなものも入っていて飽きさせない。



気づけばあっという間に食べ終えてしまっていた。


異世界の食、恐るべし…



満足したので、一息ついた後に食器を片付ける。


食器の回収はここでいいのかな?定食屋さんだとそんな感じの場所だよね。



「ごちそうさま、美味しかったです」ちょうど通りかかった店員さんに礼を言う。


「気に入ってもらえて良かった」彼女がニッコリ笑う。



「美味しかったって、お父さん」彼女が振り返って奥の誰かに言っている。


「…おう」低い声で返事がある。えーと、アレキサンドルさんだっけ?



「お、おお…?」店員さんの後ろからゆっくりと巨体が現れる。


店主さん?でっかいなぁ、2メートルはある。



店主さんはゆっくりとした動作で私と片づけた皿を交互に見る。


「……すまん」それだけ呟くと、しょんぼりと皿を持って奥に引っ込む。



「え?え?なになに?」どういうこと?私なんかやっちゃった?


「足らなかったと思ったんですね、きっと」店員さんは笑っている。



美味しかったし、大満足なんですけど。直接言った方が良いのかな?


「言ってきますから、心配無いですよ」店員さんは奥へ戻る。



大丈夫かな、思い込み激しそうな人だったけど。


それは明日の食材だからダメーとか聞こえるんですけど。



しばらくするとグレゴリオ?さんが再び顔を出す。


「……また来い」それだけ言って引っ込む。言葉足りなすぎでしょ。



まぁ良いか。夕飯もここでお願いするし。美味しかったって言おう。


私は店員さんに手を振って食堂を出た。



夕飯は超大盛りになってる気もする。


期待と不安を抱えながら、私は訓練場へ向かった。

























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