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誰だ、俺のBボタンをむしり取ったのは!?

朝、サトシとポケモンたちは「ラジオ体操」をしていた。老後の骨折予防に効くという噂(?)の体操だ。


「よし、今日もポケモンマスター目指して出発だ!」 「ピカチュウ!」 努力すればするほど、運は味方する! サトシとポケモンたちの威勢の良い叫び声が響き渡る。その熱すぎるテンションに、隣にいたカスミは頭痛を覚えていた。 (そもそも、ポケモンマスターって一体全体なんなのよ……)


「ふん、ポケモンマスターっていうのは、当然、世界で一番偉大な……」 サトシが言い終わる前に、空から突然大きな音が響き、三つの影が舞い降りた。


「何者だ!?」サトシが反射的に叫ぶ。


「なんだかんだと言われたら!」 「答えてあげよう、明日への光!」 「ムサシ!」 「コジロウ!」 「ニャーはニャースだニャ!」 「銀河を駆ける、我らロケット団!」 三人組は岩場の上で、どこか格好いい(?)新しいキメポーズをとった。


「あんたたちロケット団、本当にしつこいわね!」カスミは遠慮なく不満をぶつけた。 「ふん、おませなガキに用はないわ」 「そうだ、あのピカチュウは珍しい変種に違いない。我らロケット団がいただくぜ!」 「バカニャ、コジロウ! 作戦をバラすんじゃニャい!」


サトシは最初、応援に来てくれたのかと思ったが、ピカチュウを狙っていると知って、慌ててピカチュウを抱きしめた。 「ほう、まだ抵抗する気か?」 「前回は油断して負けたが、今回はそうはいかないわよ!」


二人は再び、アーボとドガースを繰り出した。 予算が限られている下っ端のロケット団三人組には、こうしたポケモンしか支給されない。 しかし、最近ロケット団内部では「供給側の需要拡大」を目的とした改革が進んでいるらしく、あと数日もすれば、幹部クラスが使う強力なポケモンを申請できるチャンスがあるという噂だ。


サトシは完全に困惑していた。(……え、俺たち会うの初めてじゃないのか? 前に負けたってどういうことだ?) しかし、目の前のアーボとドガースが敵意を剥き出しにしているのを見て、サトシも気合を入れ、ピカチュウを戦わせようとした。 何と言っても、彼にとってこれが人生初のバトルだ。考えるだけで血が騒ぐ。


「ちょっと待ちなさい! ピカチュウは戦利品なんだから、バトルに出すのは禁止よ!」ムサシが突然、正義の味方のような顔で口を挟んだ。 サトシは呆気に取られ、少し考えた後、こう言った。 「あ、それもそうだな。戻れ、ピカチュウ」


カスミ:「???」 (なんなの、この奇妙な阿吽の呼吸は……!?)


「だったら、君に決めた! 行け、ピジョン!」 サトシが本気で二対一の不利な状況で戦おうとしているのを見て、カスミは後ろから慌てて助言した。 「相手は二匹なのよ! あんたも二匹目を出しなさいよ!」 「でも、それはバトルのルール違反じゃ……?」サトシは弱々しく反論した。 カントー地方ではシングルバトルが一般的で、ダブルバトルはまだ珍しい時代だった。


「ポケモンを奪おうとしてる連中に、ルールもへったくれもあるかーーーっ!!」 カスミは怒りで気絶しそうだった。昨日のサトシはあんなにベテラン風だったのに、今日のサトシはまるで生まれたてのヒヨコのようだ。 (あんた、あたしをおちょくってるの!? それとも単なる演技なわけ!?)


ロケット団は二人が言い争っている隙を逃さず、先制攻撃を仕掛けた。 「アーボ、かみつく! ドガース、どくガスだ!」


アーボの大きな口が迫るが、ピジョンのスピードも負けてはいない。素早く翼を羽ばたかせて回避する。迫りくる紫色の煙に対しても、羽ばたきで黄色い旋風を巻き起こし、煙を吹き飛ばした。 「かぜおこし」だ! ピジョンはすでに進化形だけあって、その実力は決して低くない。


サトシは素早く図鑑でピジョンをスキャンした。 『ピジョン。鳥ポケモン。キャタピーを食べるのが大好きです』 『技:たいあたり、でんこうせっか、かぜおこし、すなかけ』 これを聞いてサトシは喜び、指示を飛ばした。 「俺たちの番だ、でんこうせっか!」


ピジョンは白い閃光と化してアーボに突っ込んだ。しかし、アーボは(レッドのピカチュウによる)「しんそく」を経験済みだったため、パニックになることなく泥の中に飛び込んで攻撃をかわした。 「ドガース、ヘドロこうげきだ!」 「ペッ!」 ドガースが真っ黒なヘドロを吐き出す。それは間一髪でピジョンの体をかすめた。


「今だ、アーボ! まきつく!!」 アーボがピジョンの真下の地面から突然飛び出し、空中のピジョンに飛びついた。紫色の長い体がピジョンを締め上げ、反応が遅れたピジョンを完全にロックした。 二対一の状況は、やはりピジョンには荷が重い。


コジロウが畳みかける。「ドガース、もう一度ヘドロこうげきだ!」 「ペッ!」 今度は真っ黒なヘドロが、ピジョンの顔面にまともに命中した。


「しまった、ピジョン!」サトシは狼狽し、次にどうすればいいか分からなくなった。 何しろ、彼にとってこれが初めての対人バトルなのだ。


「バカ! 早く二匹目を出しなさいよ!」カスミが叫ぶ。 その言葉でサトシは我に返り、二つ目のモンスターボールを投げた。 「君に決めた! 行け、レックウザ!!」


全員の視線の先に現れたのは、一匹のキャタピーだった。


ロケット団:「???」 (……最近、ポケモン連盟によってキャタピーの名前が「レックウザ」に変更されたのか? しかもそんな仰々しい名前に?) だとしたら、ロケット団も時代遅れになるわけにはいかない。今日から、見かけるキャタピーはすべて「レックウザ」と呼ぶことにしよう。 さもないと、田舎者だと思われてしまう!


「ふん、でもレックウザ(笑)に何ができるっていうのよ!」ムサシが鼻で笑う。 「そうだぜ、レックウザ(笑)はコイキングと並んで最弱のポケモンとして有名だからな!」コジロウも嘲笑した。


カスミ:「……」 (あたし、今日起きる場所を間違えたのかしら……)


バトルは膠着状態に陥った。キャタピーの小さな体でこの状況を打破するのは難しく、サトシは窮地に立たされた。 困った時の、図鑑頼み! サトシは素早くキャタピーをスキャンした。 『ピピッ。キャタピー。ニックネーム:レックウザ。技:たいあたり、いとをはく、エレキネット』


「エレキネット……?」 サトシは眉をひそめた。そんな技は聞いたことがない。 しかし名前からして「でんきタイプ」の技だろう。ピジョンが巻き込まれている今は使えない。


「だったら、いとをはくだ! レックウザ!」 「ズズズズ……」 キャタピーが大量の白い糸を吐き出し、油断していたアーボをぐるぐる巻きの「アーボ玉」にした。


「ピジョン!」 ピジョンはその隙に拘束を振り払った。 「今だ、レックウザ! エレキネット!」


キャタピーが口を動かすと、吐き出された糸の色が白から眩い黄金色へと変わった。巨大な網となった電撃の糸が、ドガースとアーボを包み込む。 瞬時に電流が二人を麻痺させ、動きを止めた。


それを見たサトシの瞳が輝き、咆哮した。 「トドメだ! レックウザ、ピジョン、たいあたり!!」


二匹同時の「たいあたり」がドガースとアーボを吹き飛ばし、背後にいたロケット団もろとも空の彼方へと追いやった。三人は再び夜空の星となった。 「レックウザ……なんて凄いポケモンなんだ……」


…… …… バトルは終わり、初勝利を収めたサトシは大興奮だった。彼はピジョンを労って戻すと、キャタピーを抱き上げて何度も回転した。カスミとピカチュウも拍手を送る。 (まさか、本当にキャタピーがあんなに強いなんて……)


「いけない、あたしまで毒されてるわ!」カスミは慌てて首を振って正気に戻った。 サトシがキャタピーをボールに戻そうとしたその時、キャタピーの体から眩い白光が溢れ出した。


「これは……?」サトシが目を見開く。 「進化の光よ」カスミが解説した。 バトルで経験を積み、進化する。それはポケモンの常識だ。


「進化……あ、あああ! 大変だ、図鑑、図鑑!!」 サトシは即座に反応した。今は進化する時ではない! 進化を抑え続け、キャタピーが完璧なカンスト状態になった時こそ、無敵のレックウザに直接進化できるはずなのだ。


「Bボタン……Bボタン……!!」 彼は進化の光を凝視しながら図鑑を取り出し、Bボタンがあるはずの場所を渾身の力で押し込んだ。


「あれ?」 ボタンの感触がない。 サトシが慌てて手元をよく見ると、図鑑のBボタンがあった場所はつるつるになっており、謎の接着剤で「押せない形状」に塗り固められていた。


彼はただ、白い光の中でキャタピーが進化を終えるのを、絶望と共に眺めることしかできなかった……。


「ちくしょー!! 誰だ、俺のBボタンをむしり取ったのはーーー!!」


サトシの咆哮が、トキワの森に虚しく響き渡った。

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