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虫取り少年の野望

「あんた、昨日のこと本当に覚えてないの?」カスミが不思議そうに尋ねた。 サトシは両手を広げ、心底心当たりがないといった様子だ。「昨日はベッドに入った瞬間に爆睡しちゃったよ。なあ、ピカチュウ?」 「ピカッ!」 ピカチュウもコクコクと頷き、サトシの言葉を肯定した。


「そんなはずないわ! 昨日は確かにピカチュウが二匹いたし、一匹は『しんそく』なんて凄い技を使ってたのよ!」カスミは諦めきれずに食い下がる。 「見間違いだよ。ピカチュウはずっと一匹だろ。な、ピカチュウ?」サトシは困惑した表情を浮かべた。 (朝から変なやつに捕まっちゃったな……) 「ピカピカ」 ピカチュウは再び頷き、「サトシの言う通りだ」とでも言いたげだ。


カスミ:「……」 彼女は頭を抱えた。確かに昨日はフラフラだったし、ピカチュウまでそう言うなら、大事な自転車を「魚の干物」にされたショックで見間違えただけなのだろうか……? あるいは、この新米トレーナーは「豚の皮を被ったガオガエン」で, 実力を隠しているだけなのか? カスミは密かに「観察モード」へと突入した。


…… トキワの森の入り口。 ニビシティへ向かうには、このトキワの森を通り抜けなければならない。 ここには多くの虫タイプポケモンが生息しており、それほど強くないため、新米トレーナーたちの最初の関門となっている。 二人が入ろうとした時、入り口に一人の先客が立っていた。 麦わら帽子、短パン、ランニングシャツ、そして背中には虫取り網。絵に描いたような「虫取り少年」だ。


「やあ、僕はゴロウ。トキワの森で修行中なんだ」少年が挨拶した。 「俺はサトシ……」 サトシが言い終わる前に、隣のカスミが悲鳴を上げながらサトシの背後に隠れた。 「虫よ! 虫虫虫……っ!」 女の子が虫を怖がるのは、まあ無理もない。


サトシがよく見ると、ゴロウの足元に一匹のキャタピーがポツンと立っていた。 『キャタピー。むしタイプ。タンパク質はケンタロスの6倍です』 ポケモン図鑑が勝手に解説を始めた。


「キャタピーか。でも、お前のキャタピー、普通のやつより随分太くないか?」サトシが不思議そうに聞いた。 マサラタウンの裏山にもキャタピーはたくさんいたが、普通は腕半分くらいの長さだ。しかし、この個体は「キリンの腕」よりも数インチ長い。 タンパク質も16倍くらいありそうだ。


「当然さ! こいつは僕が丹精込めて育てたキャタピーだからね!」ゴロウは誇らしげに言った。 カスミが背後から恐る恐る顔を出した。「普通、キャタピーって数日で進化するわよね? あんたのそれは……」 「三年間だ!」 ゴロウはキャタピーの頭を撫で、胸を張った。 「この三年間、僕とキャタピーは進化を抑えるために全力を尽くしてきた。だからこそ、こんなにムチムチに育ったんだ!」


「進化って抑えられるのか……?」サトシは完全に困惑した。 お腹が空いたら食べ、疲れたら眠り、経験値が溜まったら進化する。それが常識ではないのか? サトシがまた「おバカモード」になりかけているのを見て、カスミが説明を補足した。


「一般的に進化を抑える方法は三つあるわ。一つはポケモン自身の強い意志、二つ目は『かわらずのいし』という道具、そしてもう一つは、トレーナーが図鑑のBボタンを押すこと。あんた、そんなことも知らないの……?」 「ば、馬鹿にするなよ! 知ってるさ!」サトシは顔を赤くして言い返した。 (この図鑑、そんな変な解説をする以外に、そんな機能もあったのか……)


しかし、進化すれば強くなるし、見た目も大きくかっこよくなる。進化させない理由なんてあるのだろうか? 男なら、デカいことこそが正義ではないのか!


「ふふふ……教えてあげようか?」 赤ん坊のように好奇心に満ちた目で自分を見つめる二人を見て、ゴロウはしばらく渋った末に、声を潜めて話し出した。 「教えてあげるけど、他言無用だよ……」 「伝説によれば、キャタピーを進化させずに最大レベルまで育て上げると、体内の古代ドラゴンの血統が目覚めるんだ。そしてその時、進化を解禁すれば、伝説の無敵ドラゴンポケモン、レックウザになるのさ!」


そう言って、ゴロウはレックウザのスケッチを見せた。ただの絵だというのに、そのポケモンからは恐ろしい威圧感が漂っていた。 よく見ると、色や形、本質的な何かがキャタピーに似ているような気がしてくる。


サトシ・カスミ:「!!!」 レッド:「???」 (魂の空間で目覚めたばかりのレッドは、あまりの衝撃に魂が霧散しそうになった)


「へへっ、これは親友が教えてくれた秘密なんだ。彼によると、彼の故郷であるホウエン地方ではキャタピーはみんなこうして育てられるらしい。そこら中にレックウザがいて、みんなが無敵の巨竜に乗って空を飛んでるんだってさ」ゴロウは得意げに笑った。


サトシ・カスミ:「!!!」 レッド:「……」 (その親友とは縁を切ることを勧める……)


「話は終わりだ。僕は修行を続けるよ!」 そう言って、ゴロウは太ったキャタピーを引き連れて森の奥へと消えていった。自信に満ち溢れた高笑いを残して。 「いつかレックウザに乗ってカントー地方を制覇し、最強のトレーナーになってやるんだ!」


…… 「キャタピーには古代ドラゴンの血統が眠ってたのか! すげえ!」 サトシは瞬時に感化され、自分もキャタピーを捕まえて三、五年育てる気満々だ。 「サトシ、何か勘違いしてる気がするんだけど……」 カスミは流石にそこまでおバカではなく、あの虫取り少年が親友に騙されていることに薄々気づいていた。 (そんな親友、生き埋めにしたほうがいいわね……)


「何が勘違いだよ! あいつの言ったことは理にかなってるし、説得力があったじゃないか!」 サトシは興奮してトキワの森へ突っ込んでいった。入ってすぐの茂みで、草を食べているキャタピーを発見する。 「見てろよ……遠目に見れば、確かに巨竜の風格があるぜ!」 迷わず、サトシはモンスターボールを投げた。キャタピーは避けることもなく、赤い光となって吸い込まれた。


カチッ……カチッ……カチッ…… 三回揺れて、ボールが止まる。ゲット成功だ。 サトシはモンスターボールを高く掲げ、咆哮した。 「よっしゃー! レックウザをゲットしたぜ!!」


カスミ・レッド:「……」


「カスミ、俺、ポケモンマスターになれる気がしてきた!」 今のサトシは情熱の塊だ。手の中にあるキャタピー(未来のレックウザ)のボールが、まるで世界そのものであるかのように感じていた。


カスミ・レッド:「……」 (後でこっそり図鑑のBボタンを壊しておかないと、真っ当なトレーナーが一人ダメになるわね……!)


…… 二人は森の奥へと進んでいく。カスミは虫の羽音が聞こえるたびにサトシの背後に隠れ、落ち着かない様子だ。 その道中、サトシはピジョンもゲットした。これはなかなかの収穫だ。


…… 夜。二人は焚き火を囲んでいた。炎の明かりで虫タイプポケモンが寄ってくるのを防ぐためだ。 すべての虫ポケモンがキャタピーのように大人しいわけではない。スピアーのような好戦的で毒針を持つ群れは、初心者トレーナーにとって最大の悪夢だ。


やがて二人が深い眠りに落ちると、再びレッドがサトシの体を掌握した。 「一度きりではなかったか……」 レッドは苦笑した。この感覚は嫌いではない。 丸太に座り、テレパシーで(?)会話しているピカチュウとキャタピーを見つけると, 彼は邪魔をせず、ただ夜空に浮かぶ月を眺めた。


「グリーンやブルーは、どうしているだろうか……?」


…… …… ニビシティの隣、お月見山。 崖っぷちで、一人の茶髪で逆立った髪の少年が焚き火をしていた。傍らには体格の良いカメールがいる。 不思議なことに、そこには彼一人しかいないはずなのに、誰かと会話をしているようだった。


「僕のライバル?」シゲルがふと動きを止めた。 真っ先に浮かんだのはサトシの顔だったが、彼はすぐに首を振って鼻で笑った。


「旅立ちの日に遅刻するような奴が、このシゲル様のライバルになれるわけないだろ?」 「この俺、シゲル様は無敵なんだ! ライバルなんて、いやしないのさ!」

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