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シロガネ山の自閉症の少年

【あらすじ】

全てを見通したゲーム版のカンストNPCレッドは、魂となってアニメの世界へと転移し、新米トレーナー・サトシの「背後霊(師匠)」となった。


シロガネ山の帝王と、逆属性(タイプ相性無視)のマスターが出会ったとき、世界は変わり始める。


レッド:「ん? このサトシという少年……なぜ世界は彼を中心に回っているように見えるんだ?」


サトシ:「へへっ、レッド兄さんの教えさえあれば、ポケモンマスターなんて楽勝だぜ!」


ポケモン図鑑:「ピピッ。人間はただ楽しんでいればいい。私以上にポケモンに詳しい者はいないのだから」


ピカチュウ:「ピカッ!」


レッド:「……(やれやれ)」


――とにかく、これは最高の冒険の物語である。

シロガネ山では、一人の青年が山の奥深くへとゆっくり歩を進めていた。 彼の傍らには、黄色と青の獣のようなポケモン、バクフーンが寄り添い、その背中から放たれる熱でトレーナーの体を温めていた。 山の外の森や岩場とは異なり、シロガネ山の最深部は不思議なほど明るく、一面の銀世界が広がっていた。 広大な雪山には、激しく雪が降り積もっている。 さらに奥へと進み、青年はついに目的地にたどり着いた。


シロガネ山の頂上。高い台座の上に、赤い野球帽を被り、修行僧のような質素な服を着た男が背を向けて座っていた。 これは、ジョウト地方のリーグチャンピオンになった後、ヒビキが知った秘密だった。 伝説によれば、リーグチャンピオンを遥かに凌ぐ実力者がシロガネ山で修行を続けているという。ヒビキがジョウトを離れカントー地方を旅していた際、その男の功績はいたるところで耳にしていた。 8つのジムを制覇し、ロケット団を壊滅させ、リーグチャンピオンを打ち倒した男……。


「勝負だ!」 ヒビキはモンスターボールを掲げて大声で叫んだ。傍らのバクフーンは立ち上がり、拳を握りしめ、その背中からはかつてないほどの炎が噴き出した。


謎の男:「……」


男は振り向いた。その表情は冷たく、瞳には色が宿っておらず、沈黙を守っている。 あのアクの強いグリーンに居場所を突き止められて以来、名声を求めて彼を倒そうとする無名のトレーナーたちが絶え間なく押し寄せてきた。しかし今に至るまで、彼の2体目のポケモンを引き出せた者は一人もいない。 孤独な雪山のせいか、あるいは常人を遥かに超えた強さゆえの「頂点の孤独」か。 彼は強くなるにつれ、より寡黙になっていった。 しかし、今日現れたこの青年の眼差しが、ついに彼の心を動かした。


「来い」


数年ぶりに発せられた彼の声は、どこか機械的だった。言葉と同時に彼はモンスターボールを投げた。赤い光が走り、雪山に小さな「ねずみポケモン」が現れた。


「ピカチュウ。でんきタイプ。ごく一般的なポケモンです」と、ヒビキのポケモン図鑑が自動的に解説を読み上げる。


「なら、こいつはどうだ!」 ヒビキもモンスターボールを投げた。雪山に巨大な影が現れ、周囲の雪が瞬時に凍りつくほどの圧倒的なプレッシャーが辺りを包み込んだ。 銀白色の皮膚に、手のような大きな翼。 海の神、ルギアだ!


「……」 それを見た男の瞳に光が宿り、目の前のピカチュウの頬から火花が散った。頂上決戦が今、始まろうとしていた。


…… ……


「今はルギアが流行りなのか……?」 激しいバトルを繰り広げる二人の上空で、ぼんやりとした人影が浮遊し、静かに戦いを見守っていた。その顔は、下にいる謎の青年に酷似している。 幽霊のようでありながら、この世のものとは思えない存在。 彼の名はレッド。


数時間前まで、レッドは雪氷の中で己の意志を研ぎ澄ませていた。 そこで彼は「悟り」を開いた。 レッドは、自分が単なるゲームの架空のキャラクターに過ぎないことに気づいてしまったのだ。 確かに、オーキド博士から最初のポケモンを受け取った記憶も、最初のジム挑戦も、グリーンとの初バトルの記憶もある。 ロケット団との死闘、四天王との戦い……。 後年、グリーンやブルーと共にアローラ地方を旅した記憶さえ、鮮明に残っている。 だが、その詳細な「中身」が欠落していた。 その瞬間、彼は理解した。この世界はゲームの世界に過ぎず、すべてはコードに刻まれた筋書きなのだと。たとえ今、無敵に近い存在であったとしても、自分は所詮、ゲームの操り人形なのだ。


それを知った瞬間、レッドは超越した。彼の魂は肉体を離れ、変容を遂げた。 だが、自分はただのコードに過ぎない。魂などというものが存在するのだろうか? 今、目の前では自分の肉体がこの世界の「裏ボス」として、別のゲームの主人公と戦っている。 これこそが頂上決戦だ! レッドは思わず、ポップコーンでも食べながら見物したい気分になった。


下のバトルは続いていた。ピカチュウ対ルギア。火の粉と電撃がぶつかり合い、互角の攻防を見せる。 次にカビゴン対、珍しい赤いギャラドス。 フシギバナ対エンテイ……。 ラプラス対スイクン……。 リザードン対ホウオウ……。


レッドは思わず頭を抱えたくなった。 「最近のプレイヤーはみんな伝説厨なのか?」 なんという浅はかさだ! 平凡なポケモンを最強に育て上げてこそ、真のトレーナーではないのか!


バトルの終盤、ヒビキの切り札であるバクフーンが登場し、その炎は火山噴火のように空を焦がした。 「行け、ミュウツー!」と、下のレッドが最後のポケモンを繰り出す。


そして、ヒビキがようやく勝利を手にするのを見て、下のレッドは思わず笑みをこぼした。 それは解脱したかのような安堵の笑みだった。彼は背を向け、不気味な沈黙の中に消えていく。 その瞬間、シロガネ山がまばゆい白光に包まれ、ヒビキの目をくらませた。 光が収まったとき、あのレッドの姿は消えていた。 これは頂上決戦であり、カーテンコールでもあった。レッドはこの世界でのすべての使命を終えたのだ。


空中に浮遊するレッドの魂は悟っていた。もし今の悟りがなければ、自分もあのように消滅していたのではないかと。


「次はどこへ行けばいい……?」 彼は今や、余剰な存在となった。 レッドは空に渦のようなものを感じた。それが彼の魂を強く引き寄せ、目の前の世界の色彩が薄れ、白黒の世界へと変わっていく。 やがて彼はその渦に吸い込まれ、意識が遠のいていった……。


…… ……


再び目を覚ますと、世界は眩い光に満ちていた。レッドが周囲を見渡すと、そこは大きな森の中だった。 かつて歩いた森に似ているが、何かが決定的に違っていた。 生命力だ! レッドは直感した。ここは「現実の世界」なのだと。


「転生したのか?」 レッドは自分の姿を見た。まだ魂の状態だが、念じるだけで浮遊することができた。


「ジジジッ!!」 次の行動を決める前に、ジャングルの片隅から激しい鳥の鳴き声が聞こえた。続いて、大量のオニスズメの群れが木々から飛び出し、一方向へと飛んでいった。


「???」 レッドは困惑したが、本能的に魂の体を操り、その方向へ向かった。 いつの間にか雨が降り始めていた。


高い崖の上にたどり着くと、レッドは一人の少年が必死に自転車を漕いでいるのを見た。自転車のカゴには、瀕死の状態のピカチュウが横たわっている。


「新米トレーナーがオニスズメを怒らせて、一族郎党に追い回され、ポケモンが死にかけてるってところか?」 レッドは推測した。 助けたいと思ったが、今の自分には力がない。ただ静かに見守るしかなかった。


「ガシャン!」 ぬかるんだ地面の凹凸で、野球帽を被ったその少年は自転車ごと転倒した。瀕死のピカチュウも数メートル先まで投げ出され、両者は泥だらけの岩場に倒れ込んだ。 その瞬間、無数のオニスズメが彼らを取り囲み、上空を旋回した。今にも一斉攻撃を仕掛けようとしている。


「……」 レッドは目を見開いた。今、手元にポップコーンのバケツがあればと思わずにはいられなかった。


しかし、状況は一変した。うぶな少年は立ち上がり、両腕をT字に広げてピカチュウの前に立ちはだかったのだ。


「俺を誰だと思ってるんだ!」 「俺はいつか世界一のポケモンマスターになる男だ!」 彼は大声で吠えた。


「ピカチュウ、早く、モンスターボールの中へ……」 その後、彼は声を潜めて言った。 どうやら見かけ倒しだったようだ。叫んだのは自暴自棄になった上での虚勢だった。 しかし、オニスズメの群れに人間の言葉は通じない。次の瞬間、彼らは雄叫びとともに急降下してきた!


毎年、多くの新人トレーナーが悲劇的な死を遂げる。それは珍しいことではない。レッドは同情を覚えたが、黙って見守るしかなかった。


「ピカ……」 だが、地面に倒れていたピカチュウが真の力を解き放ったかのように、震えながら立ち上がり、駆け出した。


「チュ……」 ピカチュウはサトシの体によじ登り、驚愕するサトシの肩から跳躍して、空中の何百匹ものオニスズメに向かって突撃した。 大群を前に、その小さな体はあまりにも儚く見えた。


「チュウ!!!」 次の瞬間、鋭い叫びとともに、頬から凄まじい電撃が放たれた。小さな体は光に包まれ、黄金の電撃が天に向かって突き抜けた。


「ドーン!」 空から太い雷が落ちた。その落雷を利用して、ピカチュウの電撃は一気に爆発し、恐ろしい威力がすべてのオニスズメを巻き込んだ。その威力は衰えることなく上空へ突き抜け、黒雲の中にぽっかりと空白を作り出した。


ドーン! 激しい雷光がレッドの目を焼いた。彼が声を出す間もなく、雷の発生源から凄まじい吸引力を感じ、抗う術もなくその方向へと吸い寄せられた。


「呑気に見物してるんじゃなかった……」 それが彼の最後の思考だった。


…… ……


「クゥ、クゥ……」 雷が収まり、恐怖に震えるオニスズメたちは、狂ったように羽ばたいて森へと逃げ帰っていった。 少年と疲れ果てたピカチュウは泥の中に倒れ込み、互いを見つめ合った。 その瞬間、二人の心は繋がった。 黒雲が晴れ、雨上がりの空に虹がかかった。


そこへ、全身から極彩色の光を放つ、比類なき美しさを持つ鳥ポケモンが現れた。そこから降り注ぐ神聖な光の粒には治癒の力があるようで、重傷を負った二人の体力を回復させ、二人はゆっくりと立ち上がって空を仰いだ。


「あのポケモンは何だ?」 「オニドリル。ひこうタイプ。気性が荒い、ごく一般的なポケモンです」と、ポケットから機械的な声が響いた。 最新のポケモン図鑑は、野生ポケモンのデータを自動的に放送することが多い。 ……筋は通っている。


意図的か偶然か、その鳥ポケモンは一枚の羽根を落とした。それは空高くからひらひらと舞い降り、少年の目の前に着地した。 サトシという名の少年は虹色の羽根を手に取り、驚きに顔を上気させた。


「外にいる野生のオニドリルってあんな感じなのか? 旅に出るって本当に最高だな!」と彼は歓喜の声を上げた。 サトシはマサラタウンでオニドリルを見たことがあったが、それは一色だけの平凡なポケモンだった。 しかし今の個体は、天地の意志を体現しているかのようで、全身から計り知れない威圧感と神々しさを放っていた。


「俺のリザードンと互角に戦ったホウオウを捕まえて、ただのオニドリルだと……?」


その時、サトシの脳内に低く重厚な声が響き渡った。彼は飛び上がり、隣にいたピカチュウを驚かせた。


「俺、幽霊に憑りつかれたのか!?」


レッド:「大当たりだ」

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