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スーツの男性の身体を出来る範囲で整えた
移動させることも、何も出来ないから
蓮華は立ち上がり、その男性を見つめた後、前に進む決意をする
「もしかしたら他にも生きてる人がいるかもしれない」
ほんの少しだけ、蓮華の胸に希望が宿った
まだ涙が滲む目で行く先を見つめる
手で涙を拭って歩き出す
「行こう」
自分に言い聞かせる
数歩踏み出したところで、蓮華の顔に水滴が当たった
「え、雨?」
空を見上げると、相変わらず灰色の分厚そうな雲が広がっている
小雨かと思った雨は、徐々に勢いを増し、豪雨のようになったきた
慌てて目の前にあった駅のホームの屋根の下にはいる
雨と風がどんどん勢いを増していった




