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「誰かいますかー? 返事して下さい!」
さっきよりも大きな声で呼び掛けてみる
耳を澄まして返事を待つ
「い・・・い、ますー」
蓮華がいる場所の裏側あたりから声が聞こえた
電車の最後尾の裏側に回ってみる
線路上に倒れたスーツを着た中年くらいの男性が手を伸ばしているのが見えた
蓮華はその男性に走り寄る
「だ、大丈夫ですか?」
声を掛けて、その男性を助け起こそうとして、気づく
スーツが紺色で目立たなかったが、身体中が血塗れになっていたのだ
左腕は潰されたようにぺちゃんこになり、左足も捻れたように曲がっていた
この状態で身体を持ち上げて起こしても大丈夫なのか、その判断がつかなかった
「ど、どうしよう?」
ただの高校生の蓮華、救命の知識などなかった




