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口元から水が溢れ落ちるのもお構いなしに蓮華は水を飲んだ
500mlのペットボトルは、あっという間にカラなった
もう1本取り、今度は少しづつ飲んだ
喉の渇きは少し落ち着いた
「お金も払わずに勝手に飲んじゃったら、万引きになっちゃうのかな」
小さな声で呟く
そんな状態ではないことは理解している
でも、今までの日常の中にあった常識が蓮華の頭をよぎったのだ
ふと足の力が抜け、床にしゃがみこむ
「これって、夢じゃないの? 本当に現実なの?」
泣きたいのに、泣けない
梨々花の姿が目に焼き付いていた
本当の事とは思えない
夢であってほしい、夢なら早く醒めて欲しい、そう願った




