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ポンニチ怪談

ポンニチ怪談 その97 無意識罰

作者: 天城冴

SNSで暴言、流言飛語を吐きまくっていたフツオがある日テレビをつけると…

酷暑ともいえる夏が終わり、ようやく秋らしくなった夜。

ニホン国のゴールデンタイムといわれる時間にテレビをなにげなくつけるフツオ。

『ギャアアアア』

画面いっぱいにひろがる血しぶき

『あうううう』

痛みにのたうち回っているのか

いくつも、のうめき声

「な、なんだよ、これ」

思わず声をあげると

『ただいま、放送が乱れております、大変申し訳…』

テロップが流れるその画面をすばやく切り替えるが

『放送を中断し…』

どこの番組をつけても、同様。

「全部中断かよ、じゃあ動画サイトでも」

だが

『げええええ』

口を血だらけにしてのたうち回るユーチューバー。

お気に入りの動画サイト、生放送すべてみまわって

動画の投稿者たちは

目を剥き

口を押え

血を噴出しながら

震えながら

青ざめ

死にかけていた。

「な、なんだよ、これ…ど、どういうことだ、にゅ、ニュース」

動画サイトをとじて、

ニュースサイトにアクセスすると

『芸人のボンコン氏が収録中に舌を大けがし出血多量で死亡…スタッフも多数怪我…』

『総理候補だったダカイチ氏が講演中に顔の半分が突然爆発し、参加者も原因不明の負傷者で会場は大混乱…』

『サンサン党の会合で多数の死傷者…爆発や火災などはなく、急に血を噴出した党首や議員たちが病院に運ばれましたが…ほぼ死亡が確認され…』

『舌や手を突然切られた、という通報が日本全国で多数あり…。救急搬送が不足し、手当てを受けられずに死亡する事例が…』

「なんだよ、こ、これ」

震えだすフツオ。

なんで、でも…

収録中に死んだ芸人やその番組はデマで訴えられていた、何度も

顔が爆発した政治家は、国会ですら嘘をついた、国民を脅迫するような真似をした、そしてその支持者も…

会合で多数の死者がでた政党、デマ、流言、誹謗中傷…、当選した途端公約を翻すどころか、真逆なことをいう。よく知りもせず、デマを流し、外国人、女性、障碍者らの暴力をあおる…

そんな評判の連中ばかりが、ヒドイ目にあっている。

「う、嘘ついたら、舌を切られるって。じ、地獄か何かの刑罰かよ。じゃ、じゃあ

デマを流せば」

フツオがつぶやいた途端

スパッ

フツオの両手はなくなっていた。

ヒイイイイイ

勢いよく吹き出す血

「こ、このままじゃ、死んじまう、きゅ、救急車」

血を流しながら、必死でスマートフォンを探すが

「で、電話なんてかけられない、て、手がないよううう、た、助け…」

舌もなくなった


「あ、またこの死体も両手と舌がないですよ」

「やっぱりなあ、でも、ほぼ全く同じだよな。死に方が」

「死んでる連中の言動も、ですよ、政治家からチンケなインフルエンサーもどきまで、全員デマ、誹謗中傷、ヘイト発言、ろくなことやってませんよね。いつか罰があたるだろ、いや、あたりゃいいなあとか思ったりして」

「ん、不謹慎だけど、俺もな。…そう思ってたのは案外多いかもな」

「実は嫌われてたってことですが、アイツら…こいつも」

「ネットだのなんだので、もてはやされてていても、デマを飛ばし弱者を揶揄し攻撃する奴らは不愉快だから消えてほしい、いらぬ諍いを生み出し犯罪をあおる政治家モドキなんて裁きを受ければいい、吐き気がするような言動をする連中に罰を与えてやりたい…ってのが、本音というか無意識の願いだったんじゃないか大多数の」

「騒がれて持ち上げられていたように見えても、本当は嫌われていた。身内同士で持ち上げて盛り上がってただけで。大半の人は疎ましく思ってたってことですか」

「本気でのめりこんでたって奴らも少なくはなかったんだろうが。何しろ舌や手は無事でも、一時的に使えなくなった、目が見なくなったで、家族、主に妻や夫に叱られ説教されましたーっての多いだろ」

「あー、まあ、妹の旦那とかも。確かにトンデモな陰謀論振りかざして、家事もますますやらない。妹も離婚しようかとかいってたけど、息も絶え絶えになって、謝りだしたから考え直すそうですよ」

「そうか、よかったな。…さあ、おしゃべりはこれぐらいにして、とりかかろうか。次がある」

「そうですね、まだまだ残ってますからねえ」

遺体となったフツオの部屋で、作業が始まった。




どこぞの国では、無知でデマや誹謗中傷をしまくる人が自称普通の~人とか名乗ったりするそうですが、それが普通ならその国って相当ヤバい状態なような気がしますねえ。まあもうどうしようもないから自棄になってマトモな人まで道連れにしようという無意識の無理心中願望ですかねえ。

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