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7月18日 靴箱の短歌   佐藤律

ここ最近、というか入学してから時々。


僕の靴箱に短歌の書かれた紙が入れられている。


本来ならこの行為は普通にストーカーと言われてもしょうがないと思うけど、僕はこれを書いた本人を知っているから大事にはしていない。


桜庭詩織。


これらを書いているのはおそらく彼女だ。


僕はいつも早い時間に登校する。


そしてこの短歌が入っていた日には大体僕よりも先に彼女が教室にいる。


彼女以外に人がいるときもあるが、遭遇率で考えると彼女だと考えるのが妥当だ。


そして何より。


僕は彼女の心の声が聞こえる。


最初は空耳かと思っていたが、2週間くらいでこれが本物だと気づいた。


今までぼくにそんな能力があると感じたことはなかったし、多分桜庭さんの心の声だけなんだと思う。


いくつか条件があって、例えば遠くにいるときや僕が別のことを考えて_そのことに頭が支配されたりしていたら聞こえない。


彼女の心の声はなかなかにうるさい。


聞こうと思っていなくても聞こえてきてしまうから気が散ってしまう。


入学式の日からずっと、後ろから「律くん可愛い」だの「今日も髪サラサラだなぁ」だのと聞こえてくるから授業に集中できないまである。


そして決め手は今日の朝のことだ。


いつものように登校して挨拶をすると頬を真っ赤にしてぎこちなく挨拶を返してくれた。


短歌の話を振ると一瞬戸惑いと焦りの混ざった表情で「え…?」と言っていた。


すぐにいつもの表情に戻っていたが間違いない。


僕は別に彼女のことが嫌いなわけではない。


彼女が綴る短歌も。


好きと言うわけでもなかった…なかったはずだが…


誰だっていつも愛の言葉(?)を送られてたら意識するだろ…。


熱を冷ますように立ち上がり、窓を開ける。


窓から勢いよく入ってくる風が心地よい。


桜庭さんに倣って一句読んでみようかな。


[窓の風 君の紙先 揺らす朝 気付かれぬよう 視線ほどいて]_

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