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間違った自己評価

「………え?なんで俺が『読モ』の表紙を飾ってるんだ?」


 衝撃の事実に、表紙を見ながら固まる。


「あ、お兄ちゃん!雑誌届いたんだね!」


 すると近くに来た紫乃が話しかけ、俺が手に持っている『読者モデル』Style(スタイル)を覗き込む。


「おー!ホントにお兄ちゃんが表紙を飾ってるよ!しかも表紙に『クロ』って名前も書かれてる!お兄ちゃん、有名人だね!」


 今回、雑誌の掲載にあたり、俺の芸名は『クロ』にした。

 そのため、俺の顔の横には『超絶イケメン、クロ様爆誕っ!』と書かれていた。


「全く嬉しくないんだが。ってかなんで俺が表紙を飾ってんだよ」

「あっ、それなら私がお兄ちゃんを表紙で使うように頼んだからだよ!」

「………は?」

「私がお兄ちゃんを表紙で使うように頼んだからだよ!」

「いや聞こえとるわ」


 紫乃の行動理由が理解できない。


(てか、どうやって俺を表紙にさせたんだよ……)


 そう思うが、その疑問は一旦置いておく。


「なんでそんなことをしたんだ?」

「そんなの、お兄ちゃんに自信を持ってほしいからだよ」


 そう言って真剣な表情をする。


「私、常々思ってたんだ。お兄ちゃんは自己評価が低すぎるって。何でもかんでも『できない』と言って自分の価値を下げてる。本当は優秀なお父さんの血を受け継いだハイスペックお兄ちゃんなのに」


 ハイスペックお兄ちゃんという造語は初めて聞いたが、紫乃の言いたいことは理解できる。

 だが俺は自分自身の評価を間違えているとは思えない。


「そんなことないって思ってるね」


 俺の顔からそう理解した紫乃が言葉を続ける。


「じゃあお兄ちゃんが思ってる自己評価を私が訂正してあげる。何でも言って」


 そう言われ、俺は紫乃に問いかける。


「俺は勉強もスポーツも普通並みの男だと思ってる」

「そんなことないよ。お兄ちゃんは勉強もできてスポーツは泳ぐこと以外全て優秀だよ」

「……俺には自慢できるところが何も無いと思ってる」

「そんなことないよ。お兄ちゃんは優しくてカッコいいし、困ってる私をいつも助けてくれる」


 そう言って俺の良いところを列挙してくれる。


 そして最後に真剣な表情で…


「だから私はお兄ちゃんのことを自慢のお兄ちゃんって思ってるよ」


 そう言ってくれた。


 その表情から紫乃が嘘を言ってるようには見えない。


「それにこれを見て」


 そう言ってスマホを取り出した紫乃がとある画面を見せる。


 そこには…


『待って!?クロ様カッコよすぎるんだけど!』

『クロ様に一目惚れした私。気がつけばクロ様のことを3時間も眺めていた』

『こんなイケメンが世の中にいたなんて!今まで見てきたイケメンアイドルや俳優が霞むくらいカッコいい!今日からクロ様が私の推しです!』


 等々、俺が表紙を飾る『読者モデル』Style(スタイル)を見た人たちが俺のことを絶賛していた。

 しかも俺の表紙を見て買った人が大半らしく、買った人たちは大満足のようだ。


「お兄ちゃんは世の女性たちが一目惚れするくらいカッコいいの。いつもいつも自分の容姿を悪く言ってるけど、お兄ちゃんはカッコいいんだよ。あとこれも見て」


 そう言った紫乃がスマホを触り、とある画面を見せる。


「……え、トレンド1位が『クロ様』なんだけど」

「そうだよ。お兄ちゃんの名前がトレンド1位になってる。それくらいお兄ちゃんはカッコ良いの」


 他にも俺が表紙を飾った『読モ』の雑誌名であるStyleの名前や出版社の名前などが軒並み上位にランクインしているため、今回の『読モ』によってトレンド1位を獲得したことは明白。

 何故俺のことを様付けしてるかは分からないが、表紙に書かれた『クロ様爆誕っ!』が原因だろう。


「ちなみにお兄ちゃんが表紙を飾ったStyle(スタイル)は12時の段階で全て完売したらしいよ」

「……マジ?」

「うん。SNSでは買えなかった女の子たちが悲鳴をあげてるからね」


 どれくらい販売したかは分からないが、半日で完売は凄すぎる。


「完売続出の理由はお兄ちゃんの表紙。皆んな、お兄ちゃんの表紙を見て買ったんだよ。何度も言うけど一目見たら買いたくなるくらい、お兄ちゃんはカッコいいの」

「そ、そうだったんだ。今まで俺の素顔を見た人たちが気絶したり固まったりしてたから、思考が停止するくらい醜い顔をしてるのかと思ってたよ」

「そんなことないよ。みんなお兄ちゃんのカッコ良さに固まってたんだから」


 衝撃の事実に俺は理解が追いつかないが、嘘を言っている様子はなく、SNSの反応からも冗談では無いだろう。


「つまり俺の自己評価は間違ってたのか……」


 自慢できるところなんて何も無いと思ってた俺を紫乃は『自慢のお兄ちゃん』と言ってくれた。

 それだけで俺には誇れるところが沢山あると思えた。


「俺は父さんが亡くなってから自分の能力を過信しないようにしていた。だが、これからは自分自身をしっかりと再評価しなければならないようだ」


 そう呟いた俺は紫乃を見る。


「ありがとう、紫乃。気づかせてくれて。今はまだ容姿しか自慢できるところはないが、これからしっかり自己分析して、紫乃がもっともっと自慢できるお兄ちゃんになるよ」

「うんっ!期待してるね!」


 そう言って紫乃が可愛い笑みを向けてくれる。


「それじゃあ髪を切っても問題ないね!」

「……そうだな」


 自分の容姿に自信がなかった俺は髪を伸ばして顔を隠していたが、その必要はなくなった。


「俺の顔を見ても怖がられることがないなら切っても問題ないのか」

「うんうん!どうかな?」


 紫乃の問いかけに俺は考える。


「……そうだな。俺が変わるいいキッカケになるだろう。よしっ!じゃあ切りに行くか!」


 というわけで、俺は紫乃がオススメする美容院へ行くこととなった。

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