『モリトーク』の撮影という名の修羅場 3
休憩室に到着する。
「収録開始まで30分くらいあります。あのソファーで私と2人きりでお話ししませんか?」
そう言って南條さんが俺の右手を取り、2人用のソファーへ誘導する。
「な、南條さん!?」
俺は引っ張る南條さんに逆らえず、引っ張られるままにソファーへ足を運ぼうとする。
しかし空いていた方の左手を萌絵が“パシッ!”と掴み、歩きが止まる。
「ねぇ、クロくん!私、クロくんに話したい事たくさんあるんだ!あっち椅子で私と2人きりでお話ししよ!?」
南條さんとは反対の手を取った萌絵が俺を引っ張ったため、俺はその場で動けなくなる。
「むっ。萌絵さん?何をしているのですか?」
「それは私のセリフだよ、愛華ちゃん」
俺を挟んだ状態で何故か睨み合う2人。
「これから私はクロさんと会えなかった8年間を埋めるため、たくさんお話しをする予定です。邪魔をしないでください」
「私もクロくんと会いえなかった時間を埋めるためにたくさんお話しをするんだ!」
“バチバチっ!”と俺の間で火花が散る。
なぜ俺を取り合うような形になったかは不明だが、俺も2人と会えなかった時間を埋めたいので、1つ提案をしてみる。
「な、なぁ。3人で仲良く話すって選択肢は……」
「ありませんね」
「それは無理だね」
「えぇ……」
さっきまで仲良く俺の隣を歩いてたのに、休憩室に入った途端なぜか仲が悪くなる。
「まさか愛華ちゃんが休憩室に入ってすぐに仕掛けるとは思わなかったよ」
「つまり私の方が萌絵さん以上にクロさんとお話しをしたかったということですね。というわけでクロさん。私とあのソファーでお話ししましょう」
そう言って南條さんが俺を引っ張る。
「待って!」
「ぐえっ!」
反対の手を握っていた萌絵が南條さんに負けないようにと俺の手を引っ張ったため、変な声をあげる。
「そう簡単にクロくんを渡すわけにはいかないよ。だって私はクロくんと再会する日を楽しみにしてたんだから」
「それは私も同じです。なのでクロさんから離れてください」
「愛華ちゃんが手を放したら私もクロくんの手を放すよ」
「その言葉、そっくりそのまま萌絵さんにお返しします」
そう言って一向に手を放さない2人。
そのおかげで俺の両腕は悲鳴を上げ始める。
「ふ、ふたりとも!そろそろ俺の手が限界なんだけど!」
「クロくんが困ってるよ、愛華ちゃん。手を放したら?」
「萌絵さんこそ手を放したらどうですか?」
どっちが手を放すかで再び“バチバチっ!”と火花を散らす。
「むーっ!なら……えいっ!」
“ふにゅっ!”と柔らかい感触を左腕に感じる。
「っ!」
どうやら萌絵が俺の左腕に抱きついたようで、俺の腕が萌絵の巨乳に挟まれる。
「これならクロくんは痛くないよね!」
「あ、あぁ。痛くはないが……」
「ふふっ。なら大丈夫だね!」
「いや問題しかないと思う」
ボソッとツッコむが俺の言葉は届いてないようで、自信満々な顔で萌絵が南條さんを見る。
まるで『愛華ちゃんにはできないよね?』と言っているようだ。
「うぅー!わ、私だって!」
“ふにゅっ!”
「〜〜〜っ!」
今度は反対の右腕に柔らかい感触を感じ、俺の脳はショート一歩手前となる。
(やわらかっ!萌絵以上に柔らかいんだが!?)
萌絵も巨乳の部類だがそれ以上に大きい南條さんの感触を無意識のうちに味わってしまう。
「さすが愛華ちゃん。全然引いてくれないね」
「と、当然です。恥ずかしいですが萌絵さんにクロさんを取られるわけにはいきませんので」
「無理してるんじゃないの?顔、真っ赤だよ?」
「ふふっ。そう言う萌絵さんも顔が赤いです。今すぐクロさんから離れた方がいいと思いますよ?」
「そっ、そんなことないもんっ!」
とか言いながら俺に抱きついた状態で口論する2人。
(ふ、ふたりから良い匂いが……しかも柔らかくて……っ!だ、ダメだ!今は2人から放れる方法を……って全然頭が働かねぇ!)
どんどん思考能力が低下する俺は2人を止める事ができず、抱きつかれた状態でフリーズする。
そんな俺を他所に両サイドでは止むことのない口論が続く。
「萌絵さんのアレは私よりも小さいのでクロさんは喜んでいないみたいですよ?」
「そっ、そんなことないもんっ!大きさだけが全てじゃないもんっ!」
とか言いながらさらに胸を押し付ける2人。
「〜〜〜っ!」
(だ、ダメだっ!頭が働かねぇ!)
どうすればこの状況を打開できるかが全く分からず固まる俺。
すると、そのタイミングで…
「こほんっ!」
「「「っ!」」」
第三者の咳払いが聞こえ、2人の口論が止まる。
そして咳払いをした人物の方を見てみると、紫乃と神里さんが“じとーっ”とした目で俺たちのことを見ていた。
「……お兄ちゃん、何やってるの?」
「ここは休憩室です。イチャイチャする場所ではありませんよ?」
「「「………はい」」」
イチャイチャしてたわけではないが、側から見ればそのように見えるため、俺たちは素直に頷いた。




