番外編(改)
王都でも人気だったスイーツ店。それが今回、サロン階層でも食べられるようになった。ということで、私とルーファは一緒に訪れた。
デートをしようということで、商店街階層の中央公園にある噴水の前で待ち合わせをして、恋人繋ぎをして隣を歩く。
「セレナが隣。恋人繋ぎ……。今日は手を洗わない」
「私、清潔感ある人が好きなのだけれど」
「石鹸で手首までしっかり洗うよ」
「うん。是非そうして」
ルーファの騎士服はいつも素敵なのだけれど、今日はチュニックとズボン、カーディガンとかなりラフな恰好だ。そんな姿も素敵なのだけれど。
「どうしたの、セレナ?」
「……ルーファの恰好、今日も素敵だなって」
「セレナ、結婚しよう」
「うん、いいよ」
「え」
「そのほうが周辺諸国も手を出しにくいだろうし、この間、エリザベス様たちから結婚式のお知らせが来たでしょう? けっこう準備も掛かるのなら一年後とかに式をするとして」
「え、え、ええええええ!? ちょ、ま、今のはなし!」
「え」
顔を真っ赤にするルーファに対して、私は血の気が引く。
「もしかしてルーファは結婚したくな──」
「違う! 結婚はしたい! めちゃくちゃしたいし、できないと言ったら世界を呪い滅ぼし尽くす自信がある」
「それは……やめようね」
「うん」
人の往来があるのに気にせず、ルーファは私を抱きしめて離さない。ぶるぶると途端に捨てられた子犬のようになるのは、どうにかしたほうが良いと思う。まあ、私もすぐにネガティブなことを考えてしまうから、お互いにトラウマや怖いことをなくしていこうと思う。
「傍からいなくならない?」
「……傍からいなくならないわよ」
「僕のこと嫌いに」
「なんてない。……でもどうして『今のはなし』なんて言ったの?」
「それは……レストランとか、綺麗な夜景とか、決闘のあとにするほうが……女性は喜ぶって読んだから」
「……最後の決闘ってなに?」
種族的なプロポーズ方法という物だろうか?
「最近巷で流行っている騎士同士の決闘による求婚だよ」
「ナニソレ。物騒。というか怖っ」
「種族によっては強さこそ愛だっていう連中も多いからね」
「ルーファは?」
「僕? セレナがセレナだから、セレナしか愛さないよ」
「ナニソレ? 新しい哲学?」
時々ルーファはよく分からない理論を展開してくる。私のことが絡むと、IQが幼児レベルになるのはなんなのだろう。
「違う違う。強いとか、特殊な力を持っているとか、容姿が整っているからとかじゃなくて、セレナだから好き。セレナの隣にいるために力と地位が必要なら~って感じだから、僕の場合は根本が色々と違うと思うんだ」
「(うん、よく分からないけれど重苦しい愛情だけは伝わった!)……そう)
「引いた?」
「ルーファは昔からそんな感じだったでしょう?」
昔はボロボロと泣いて引っ付いていたから少しは成長……してないわ。ついこないだも腰に引っ付いて歩きづらかったし……。
「セレナの前だけだよ」
「うん、是非そうして。でないと通報されるから」
「? うん?」
「でもわかったわ。私にプロポーズの憧れとかはないの。あ、でも結婚式はしたいかな?」
「盛大かつ忘れられない結婚式にしよう!」
「普通で良いわよ? 身内だけでも」
「でもセレナを──セレナのウエディングドレスを見て惚れられたら……」
そんな感じの会話をしつつ、お目当てのサロン階層に転移する。最初から転移すれば早いのだけれど、この辺りはちょっとでもデートっぽい雰囲気を味わいたいからだとか。
そういうところが、ちょっと可愛らしい。
それにしてもサロンで人気スイーツか、楽しみ。
***
「「…………」」
「おや、思ったより遅かったですね」
「おーい、セレナーデ。こっちの席が空いてるぞ」
なんで法王と皇帝が相席なの!? ──というか、なんでいるの!?
バッとルーファに視線を向けたらズゴゴゴゴゴゴという効果音が聞こえそうなほどの殺気を漏らして二人を睨んでいた。しかもすぐさま甲冑を瞬時装着している!
え、今の何!? ちょっと戦隊ものの変身みたいでカッコイイのだけれど! じゃなくて!!
「ルーファ!」
「セレナ、三秒ほど待っていて」
「いや、三秒で周辺一帯を吹き飛ばすのはダメ」
「あの害虫は殺しても、殺しても次々に現れるので恐らく分身か媒体を使っているので、遠慮は不要だよ?」
「いや、観光に来ているだけかもしれないでしょう?」
「ここ、迷宮だよ?」
「ソウデシタ」
各国のトップが二人揃っているって異常ですものね。二人とも迷宮のトラップや魔物を倒してここにいる……のよね?
モダンな雰囲気のサロンで寛ぐ二人は、ここの常連のように慣れていた。なにしているんだ、本当に。
「僕には本日のスペシャルで」
「俺も」
「帰れ、もしくは今死ね」
「嫌です」
「断る」
これではずっと平行線では?
「ルーファ、対話を試みてからでも良いのでは? 帝国とはお互いに不可侵条約を結んでいますし、敵対する理由はないのでは?」
「さすがセレナーデ。ついでにいつでも嫁に来てくれていいからな」
「(さりげなくグイグイ来るな。ダヴィ……ブレない)いえ、私にはルーファがいるので大丈夫ですよ」
「セレナ」
ルーファが私に抱きついてあげくサラッとキスしてくる。とりあえず機嫌が良くなったので良しとしよう。
「セレナーデ、ここのスイーツはどれも美味だな」
「アンタは何しに来たんだ」
「お前は何しに来ているんだ」
「法王……」
相変わらずマイペースな法王は、次々にスイーツを食べ尽くしていく。しかしその顔はとても満ち足りて幸せそうだ。
本当にこの方は何しに来ているのだろう。
「ふむ。破滅黒竜神と話をして、迷宮内の者たちに危害を加えないという条件で滞在の許可を貰った。なにより、この『むぅす』というのは素晴らしい。この食感。味わい。たまらない」
「法王はそれでいいのか」
「まあ、いまのところは」
「チッ」
ルーファ。今、舌打ちしたわね。ルーファ的には消滅させたかったのかも? それにしても小瓶に封じたって言ってたけれど、スライムロードだから分身体がいくつもいるのかしら? まあ、人に危害を加えないで、スイーツを食べに来るだけならいいのかな?
「まあいい。セレナーデ嬢、魔王殿。政治の話をしておこうと思って来たんだ、同席しろよ」
「断る」
「それはちょっと……(デートは美味しく食べたい。仕事の話とか政治のドロドロとか今聞きたくないのだけれど)」
「息ぴったりに断るなよ。大国と王国がちと面倒な動きをしているんだ」
天気の話をするような暢気なものだったが、内容はそうではなかった。
ルーファは溜息をこぼし、私に視線を向ける。
「セレナ」
「大事な話なのなら、しょうがないわ」
「でも、嫌ならこいつらを──」
「デートはまたいつでもできるでしょう?」
「うん……。そうだね。僕たちはもうすぐ結婚するんだしね」
「う、うん(一年後だけれど)」
一難去ってまた一難。
平和で穏やかな日々とはいかないけれど、刺激的でツッコミが毎回不足する状況だけれど、鳥籠の王宮にいた頃と全然違うわ。
頼もしくて、重愛で、泣き虫な幼馴染であり恋人……未来の夫がいれば怖くない。
楽しんでいただけたのなら幸いです。
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2025/08/31内容を調整+加筆しました




