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わたしはれみえるん

 わたしには、誰にも言えない秘密があるんだ。

 パジャマ姿のわたしはね、魔法少女に変身できるの! わたしの名前は麗美だから、魔法少女の名前は「れみえるん」っていうんだ! えへへ。しかもね、れみえるんになると、どんなに強い敵でも必ず倒すことができるんだよ!

 あ、みんなは知らないかな。夢の中には怖い怪物がたくさんいてね、そいつらのことを「レムノン」って呼んでいるんだけど、レムノンは眠っているみんなの夢を壊して、みんなの心を壊して、世界征服をしようとしているんだ。だからわたしは、みんなを守るために、れみえるんに変身して、レムノンと戦っているの。

 中にはレムノンとおともだちになろうっていう人もいるんだけど……どんなに心優しく見えても、可愛い姿をしていても、レムノンは最後には絶対夢を壊していくの。レムノンに夢を壊された人は、心を失って、元気がなくなって、死んじゃうんだ。だから、わたしは頑張ってレムノンこらみんなを守るんだ。

 無敵なのに、守れなかった人がいるのって。うん、実はそうなんだ。わたし、れみえるんに変身できるって知った当初は、何と戦うとか全然知らなかったし。テレビみたいに、教えてくれる妖精さんとかいなかったからね。怪物が怖くてパンチしたら倒せちゃった、みたいなノリでさ……怪物が、どんなに恐ろしいものか、わかってなかった。

 夢を壊されるっていうことが、どれだけ恐ろしいことなのか、ちゃんと想像していなかった。本当に人が死んじゃうなんて、思っていなかったんだ。それこそ、夢の中の話だからさ、まさか現実とリンクするなんて思っていなかったの。……言い訳になっちゃうけどね。

 でも、あれ以来、わたしはレムノンを全部倒すようにしているから、大丈夫だよ。

 誰に知られていなくとも、みんなの夢はわたしが守る。心も命もわたしが守る。それが、わたしがれみえるんになれる理由で、使命なのだと思うから。

 って、大変! レムノンが暴れてるわ! しかもあっちにいるのは、パパだわ!

 レムノンは何故か知らないけれど、わたしの身近な人ばかり狙うの。助けなくちゃ!

「れみえるん! That let me go ahead!!」

 これが変身の呪文。意味はよくわからないけど、これを唱えるとほら、きらきらひらひらした衣装に、魔法のステッキ、わたしは魔法少女れみえるんになるのよ!

「パパの夢を壊すなんて、許さないよ! れみえるん、ハートフルビーム!!」

 やった、ハートフルビームがレムノンに当たって、レムノンがこっちを見たわ! そのままパパから離れて!!

「こっケイなヤつメ、ケタケタケタケタ」

 うっ、レムノンの気味の悪い笑い、れみえるんの姿になるといくらか楽だけど、やっぱり気持ち悪くて苦手だわ。

「ワレワレは、おマえの」

「パパの夢を壊させたりなんか、しないんだから!! ドリームスターバリアー!! フィールド、オン!!」

 ドリームスターバリアーは夢の世界を守るバリアー。パパの夢を守るために、パパの夢にバリアーを張ったんだけど、これをフィールドオンモードにすると……見ててね。

「アバババババ」

「やったぁ!」

 レムノンが夢に与えた危害をレムノンにそのまま反射することができるの。でも、これは一時的な足止めにしかならないから、必殺技を出さないとね。

 わたしはステッキを掲げる。先端の星がきらきらと七色の輝きを放って、光の玉が膨らんでいく。

 わたしは唱えた。

「集え、浄化の星たちよ。この世の夢を守るため、れみえるんの名の下に、憐れな月影を払う光となれ! クアイアットルミナス、シャインシャワーボール!!」

 クアイアットルミナス、シャインシャワーボールはステッキに集わせた夢の世界を守る意思として存在する星たちの輝けるエネルギーなんだ。星の光をステッキに集めて、レムノンに当てれば、光の力に弱いレムノンは浄化されて消えるの。

 ほら、黒い怪物のレムノンが消えていくわ!

「ああアあア! まタ、救えなカッ」

 レムノンの断末魔は気味が悪いわね。静かに消えてほしいものだわ。

 だってここは夢の世界で、夢の時間。みんなは眠っているんだもの。夢の世界でわたしが戦ったことを、みんなは知らないけれど、レムノンが悪さをして、暗い暗い真夜中に、眠っているみんなを起こしたらいけないわ。明日の朝に寝坊しちゃう。

 そう、わたしはみんなの夢と睡眠も守っているのよ。すごいでしょ。

 さてと、レムノンは退治したし、パパに張ったバリアーは解いていいよね。念のため、パパの夢に綻びがないか、調べないと。


『くそったれ! また負けた!!』

『ちょっとお客さん、台に当たらないでくださいよ』

『るせぇ!! こんな当たらない台、叩き壊したくらいで当たるようになるかもしれないだろうが!!』

『あのお客さん、ちょっと怖いね』

『知らんのかい? 六蔵くんはこの辺の店は一通り回ってる、根っからのギャンブラーさ。尤も、彼が勝っているところをわしゃ見たことがないがね』

『ははっ、負け戦の六蔵がまた負けてら。おおい、今日はいくらスったんだよ、六蔵!』

『聞こえてんぞ殺すぞ!! 二万だ』

『二万でぴーぴー喚くなや、六蔵。三十スったときよりゃましじゃ』

『今月はもうスれる金もねえんだよ。ガキの給食費に消えてんだ』

『麗美ちゃんかい? そういえばもう小学生だよね。親がこんなんでかわいそうだよ。そろそろちゃんと職に就いて』

『クソジジイが、人を無職みたいに言いやがって』

『こんな時間にパチ台に当たってるやつが、一体何の仕事してるってんだい』

『がはははは、そらそうだ』

『うるせいやい……はぁーーーー、あのガキ、死んでくれねえかな』

『おいおい、仮にも父親だろう?』

『ガキなんて金がかかるだけだよ。ったく、あいつが学校入ってから、小遣い減ったんだぞ』

『ろくでもねえ父親だ。お、ポケットに一万あるじゃないか』

『ひひっ、三十倍にしてやらぁ』


 うん、パパ楽しそう。パパの夢は守られたね! ふふ、わたし、頑張った。

 褒めてもらえないのは悲しいけど、パパが死ぬよりはずっとましだよ!

 おなかペコペコでも、給食があるし! 明日の給食何かなぁ。……っと、いけないいけない、他にもレムノンがいないか、巡回しないとね。

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