オーラ対決
「ちょっと、起きてよ」
家に帰ってきた私は栞菜たちを起こす。
栞菜は目をこすりながら体を起こす。
「何?まだ2時じゃん……」
栞菜は寝ぼけている。
「そうだけど、何のために2次元に来たん?桜を元の状態に戻すためでしょ」私は小声で言うと「ああ、そっか」と栞菜は政たちの体を大きくゆっくり揺さぶって起こした。
深夜2時20分、私たちは栞菜たちを連れて再びあの桜の前に来た。
「周りは何もないんだね」
栞菜の目は少し疑っている。
桜から半径30メートルは何もない。桜を象徴しているかのように。
「レーダー、この桜の名称は?」
私は胸からビーズ・ネオンを取り出す。
「ハイ、“チェリー・バリュー”トイイマス。カチノアルサクラ、トイウイミデスネ」
「意味そのままやん」
憧君の口元がニヤける。
「ま、まあな」
栞菜は桜を呆然と見つめる。
「桜の名前もわかったことだし、捜査開始!」
私は気合を入れてチェリー・バリューの幹を調べ始めた。
15分後。
「杉浦、枝と幹の間に濃い青色の立方体がある」
政が木の上から私を呼びかけた。
私たちはその声に反応して木に登る。
「これ、1辺が2センチくらいなんだけど……」
政の目は眠気でぼんやりし始めた。
「コイツハ“シーブロッサム”デス。ハナヲサカセルヒンドヲサゲルコウカガアリマス」
政の胸からビーズ・ネオンが喋る。
「花を咲かせる頻度を下げる……絶対このシーブロッサムのせいだ!」
私はシーブロッサムを指す。
「でも、花を咲かせる頻度を下げるだけなのに、枯れてるじゃん。おかしくない?」
栞菜はシーブロッサムをガスバーナーで溶かす。
「ちょっと、光学顕微鏡を持ってきて」
栞菜はビーズ・ネオンに頼む。
溶けたやつを、スライドガラスの上にその液体をこまごめピペットで1滴垂らしてからカバーガラスをかける。
栞菜はそのプレパラートを顕微鏡のステージに乗せて、接眼レンズからのぞくと……
「なんか、青色の液の中に紫色のイガイガしたつぶつぶがある!」
栞菜はそう叫んだ。
私たちは何事かと思い、顕微鏡から紫色のつぶつぶを見る。
「コレハ“ダイウイルス”デス」
栞菜のレーダーは呟いた。
「枯れるウイルス……あっ、やっぱりコイツのせいだ!」
私は眉を上げる。
すると、上から同じ大きさのシーブロッサムが落ちてきて、政の手に立方体の物体が多く集まる。
「なっ、何だ?」
憧君は激しく光るシーブロッサムに驚く。
「ち……ちょっと大きくなったよ!?」
いつの間にかそれは1辺が10センチにもなっていた。
「どうなっているんだ?」
私はキョロキョロする。
突然、大きな渦潮が発生した。その中に「GALAXY PRISM」と青とピンクのネオンカラーでデザインされた黒い服を着た4人組がいる。
「何なんだよ!誰なんだ、前振りが長いんだよ!」
政はケンカを売る。
「ははは、また会ったなあ」
姿を現したのはギャラクシー・プリズムだった。
「やっぱりお前らの仕業か」
私は髪の毛が赤色の人をにらみつけた。ボスの平賀だった。
「そうよ。また見つかったみたいね」
髪の毛が肩より下の部分が青色をしている藤岡が腕を組んだ。
「それどころか、お前、髪染まってんじゃん!?」
憧君はあの4人に言いつける。
2ヶ月前に会ったときは黒髪だった。なのに、今回は一部の髪の毛が染めてあるのに気がついた。
「おお、気がついたか、榎原」
髪の一部がアッシュグリーンで染まっている黒沢が言った。
「てか、何で俺の名前を知ってるんだ?」
「今時のシステムがわかってないんだね。君らの名前ぐらいサクッと調べられるよ」
髪の毛の根元から2センチぐらいの所まで黄色に染まっている高梨が言った。
「だから?だからどうした?」私はさらに質問すると「やかましい!藤岡、やれ!」平賀は藤岡に命令した。
藤岡から不思議なオーラが出てきた。
「私だって、お前の好きにはさせない!」
私も不思議なオーラを出した。
私の薄青いオーラと藤岡のダークブルーのオーラがチェリー・バリューの前でぶつかり合う。
「君みたいに弱っちょろかったら、勝てないわよ」
藤岡のオーラは偉大なパワーを持っている。
「あんたみたいな悪者は勝てない!“正義は勝つ”と言うからな!」
私のオーラに力がみなぎる。
「それはどうかな?」
藤岡は気合を入れる。
「でも、チェリー・バリューにはお前が作ったシーブロッサムなんてヤツはもう無いんだよ。だから、このオーラのバトルは私が勝たせてもらうよ」
私は格好よくきめ、最後の力を振り絞った。
私と藤岡のオーラの間に青色の光が生じた。
光が収まると、藤岡は傷だらけで倒れていた。私はぜえぜえと呼吸が荒くなった。
チェリー・バリューの枝が光り始めた。枝から見たことのない青色の桜の花を咲かせた。
「つ……ついにやった」
私は心から安心した。
「よくも我らの邪魔をしたな!次は簡単にはいかさんからな。覚えとけ!」
平賀は藤岡の右腕を乱暴につかみ、ギャラクシー・プリズムは消えてしまった。
「君たち、ありがとう!おかげでこの桜も元通り!」
スリンはパジャマのポケットに手を突っ込む。
「うん、これが私たちからの約束だったからね」
私は笑った。
「それじゃあ、時間だから僕らは3次元に帰るね」
政たちは手を振って、3次元の世界に帰った。
スワン、スリン、ミウ、ミヨも嬉しそうに手を振って私たちを見送った。
明け方の4時、私たちは異次元研究室に戻った。
前回と同じように、2次元カプセルのCDサイズの扉の中にシーブロッサムを入れた。
2次元カプセルは激しく光りながら、エネルギーの量がMAXになった。
「これで一件落着だね……」
私は疲れ果ててしまい、眞鍋博士がいない研究室の中で横になった。
「そうだけど、勝手に操作しても良かったのかな?」栞菜は光る2次元カプセルをなでるように触ると憧君は「良いんじゃない?高2だから」と栞菜の顔をじっと見る。
「そうだね」
栞菜は少しうつむいてから笑顔を見せた。