ギャラクシー・プリズムと初の対面
22時、私たちは水を飲みに湧水を探す。
「あったー!……でも、ほんの少ししかない!どうなっているん?」
私は湧水の前で膝を地面につけた。
すると、どこかから
「君たちは何者かね?」
と声がした。
私は立ち上がって周りを確認する。私たちの4人以外は誰もいない。
「誰だ!さっさと姿を現さんか!」
政は大声で人を傷つけるように言った。
少し凹んだ壁から怪しいロゴTシャツを着た4人が現れた。
「お前は何者だ?」
私は目を細める。
「我らはギャラクシー・プリズム。このボス、俺が平賀 璋」
「あたしは幹部の藤岡 鈴」
「オイラは高梨 利紀」
「アタイは黒沢 澪那」
「なあ、お前らの名前はわかったけど、何のために結成したん?」
憧君は腕を組んで睨みつける。
「異次元を我らのものにするためだ」
平賀はニンマリした。
「自分のものにして、何の意味があるん?」栞菜は右足に重心を置いて立つと藤岡は「操って、あたしたちの好きなように扱うのよ」と悪だくみを含む笑みをこぼす。
「要するに、異次元を支配するの」
黒沢は笑い始めた。
「なるほど。でも、お前らの好きにはさせへん!」
私は負けん気を出す。
「僕らが食い止めてやる!」
政はしかめっ面をした。
「どうやって?試しに見てやろう」
平賀は言った。
「ちょっとボス、そんなことを言っても良いのですか?」
藤岡は平賀を引き止めようとしたが、平賀は藤岡の言うことを聞かなかった。
私は平賀がそう言うなら、と思って、レーダーからスコップを持って来てもらい、湧水の水が乏しそうに出てくるところをスコップで軽く掘った。
すると、水が容赦なく溢れ出てきた。
「なるほど、君たちにはそんな力があるんだね」平賀は味方かのように微笑むと「失礼な!私は高校生やねん!そんな知恵ぐらいあるわ!」と私は右手に持っているスコップを強く握り締める。
その間に、栞菜、政、憧君は近くにある湧水に行って、私と同じようなことをしに行ってしまった。
一方、栞菜では、湧き出てくるところを掘り進めている。
スコップがコツッと何かに当たったみたいで、掘り進むことが出来なくなった。
それでも、栞菜は諦めずに少し深めに掘ると、直径10センチの赤色のガラスで出来た綺麗な珠が出てきた。
そして、調子よく水が湧き出た。
栞菜はビーズ・ネオンを取り出して「この赤い珠は何?」と聞いたところ、レーダーは「コレハ、マグマノヨウガンデデキタ“マグドロン”デス」と答えた。
「何それ?そんな言葉ってあったっけ?」
「ギャラクシー・プリズムガツケタナマエデス。コイツハ、ケッカンデモ、スイドウデモ、ナンデモフセギトメルコトガデキルヨウニ、カイハツサレタミタイデス」
「何だって!じゃあ、湧水を防ぎ止めていたのは、コイツの仕業だったんだ!」
「ソノトオリデス。ハヤクミライタチニシラセマショウ」
「水莱、この“マグドロン”が水を湧き出てこないように防ぎ止めていたのよ」
栞菜はマグドロンを私に見せる。
「はあ、コイツのせいだったのか」
私は栞菜が発掘したマグドロンをじっくり眺める。
「貴様!よくもマグドロンを見つけたな!」
平賀はいきなり怒鳴り始めた。
「もう遅いよ」
政は近所の住民を呼び出したらしく、多くの人がゾロリと集まっている。
ギャラクシー・プリズムのメンバーはビビってしまった。
「湧水が出てこないようにしたのは、お前だったのか!」住民の怒りが飛び交う中「これはマズイ!さらば杉浦たち、覚えとけ!」とギャラクシー・プリズムはどさくさに紛れて姿を消した。
驚きで静まり返ったあと、マユは
「お姉ちゃんたち、ありがとう!アタイたちはいつも通りの生活が出来るようになったよ」
と感謝した。
「喉が渇いていたから助かったぜ!」
キョウスケは親指をグッと突き出した。
ビードロにある家に戻ると、中には多くの住民がいた。
パーンとクラッカーを鳴らされて、ビックリしてしまった。
「私たちの生活を助けてくれてありがとう!」とお礼を言われた私は「いえいえ、そんな……」と苦笑いする。
「これから、感謝のお礼として、これから、ここはビードロの広場とするよ」
村長のような人が笑った。
「本当ですか!ありがとうございます!」
栞菜は目を光らせた。
私は腕時計を見て、
「それでは、そろそろ時間なので、私たちは元の世界に帰ります。ありがとうございました」
私は深くお辞儀をした。
「ありがとー!」
住民は手を大きく振って見送った。
23時半、研究室に戻った。
「お疲れ様。ありがとう、1次元を助けてくれて」眞鍋博士が嬉しそうに言い、さらに「最後に、長石が取ってきたマグドロンを1次元カプセルの中に入れてきて」と付け足す。
「はい」
私たちは1次元カプセルの前に向かった。
カプセル内の液体は、まだ最大量に達していない。
栞菜は開け閉め出来るCDサイズの扉の中にマグドロンを入れた。
すると、液体自身が激しく光り始めた。
それから、1次元カプセル内の液体はMAXに達した。液体の中にはマグドロンが眠っている。
「凄い!」
私は感心した。
「てか、この液体はどんな薬品が入っているんやろ?」
政はカプセルを眺める。
「フェノールフタレイン溶液だよ」
眞鍋博士はあっさりと答えた。
「ってことは、この液体は強塩基性なんですね」
栞菜は鋭い目つきでカプセルを見る。
「バレちゃったか」
眞鍋博士は頭をかく。
「そんな、中学校で習ったから知ってますよ」
栞菜は軽く笑った。
「えっ、習った?」
憧君は頭をぽりぽり掻く。
「何忘れてるねん?化学分野でやったやろ。それで理系か?」
私は目を大きく見開いた。
「ははは……」
憧君は笑ってごまかす。
「笑ったって無駄やからな」
政はニヤニヤした。
「なんやねん、笑うぐらいええやろ」
「良くないわ!普通に笑うのなら良いけど、アンタは無理やり笑ってるじゃん」
栞菜は憧君の顔の近くで指を指す。
「なんでわかったん?」
「笑い方が気持ち悪いんだよ」
私は頬を上に持ち上げるような表情をし、栞菜も「確かに」と私と似たような表情をした。
そして、眞鍋博士を含んだ5人は仲良さそうに笑った。