ジャック・オ・ランタン作りと眩しい光の謎
「ちょっと、起きて。さっきの蛍光灯か何かの光で全身マヒした人がいるの」
私は栞菜たちを起こす。
ゆっくり体を起こした政は
「犯人を突き止めに行くか」
と言って出入り口に向かった。
私たちは7次元の衣装を着て、外に出た。
深夜2時20分。ついに蛍光灯を持って歩いている人を見つけた。
「おい、そこの者!何をしている!?」
私はその人らを脅す。
不審な者たちは振り返って私たちを見る。
「おいおい……そんなことを言っても良かったのかよ……」
政は私の耳元でささやくが、私は真剣な表情をしたまま返事しない。
「オレらは夜の道を散歩しているだけだ」
蛍光灯を持った人は言葉を発した。
「そうか。またお前らと会ったな」
私は腕を組んで不審な者たちを睨む。
「えっ、どう言うこと?」
栞菜は状況を理解していないようだ。
「まあまあ、後々わかるよ」
私は小声で言う。
栞菜は黙って様子をうかがうことにした。
「また会った?君たちはアタイたちを知らないはずだ」
「ははは、知らないのかね?私たちの存在を」
私は7次元の衣装を脱いで、普段着の姿を見せる。
「そうか、このために水莱はこの衣装を着ろと言ったのか」
栞菜は納得して、7次元の衣装をカッコよく脱ぎ捨てる。
「なっ、なんだと!?立場が逆転したからって、オレらをなめんじゃねえぞ!」
そう言ったのはギャラクシー・プリズムのボス、平賀 璋だった。
「嫌だね。貴様らを舐めたくもないね」
政は喧嘩を売る。
「言ったぞ!じゃあ、オイラたちと決闘だ!」高梨は政を指すと憧君は「いいだろう」と指の第一関節をボキボキ鳴らす。
「今回の決闘はパンプキン作りだ」
高梨は2つの同じ大きさのカボチャを用意する。
「そろそろハロウィンも近いし、なかなか考えるじゃない」
私は大きなカボチャを手にする。
深夜3時10分前、決闘が始まった。
「あー、カボチャのくり抜きからかよー」
私はスプーンでカボチャの果実を外に追い出し、中身は空の状態にする。
「何か中身が汚らしいなあ」
栞菜はカボチャの中身にこびりついている繊維みたいなものを取り出し、中身をツルツルにする。
「よし、次はパンプキンの顔を作るぞ!」
政はレーダーが用意した包丁を持って、三角形の目を彫る。
一方、ギャラクシー・プリズムでは……
「カボチャの中身を取り出そう」黒沢は大きめのスプーンで取り出そうとすると「おい黒沢、こういうのんは機械で掘るのだ!」と平賀はドリルで掘り進める。
黒沢は驚きすぎて何も言えなかった。
それを見た憧君は
「最初から機械でやれば良かった」
と後悔する。
その表情を見た私は
「後悔する必要はないよ。手で作ったほうが味があるよ」
とギャラクシー・プリズムの行動は決して気にせず作業を進める。
朝方5時、パンプキンの修正などを行った結果かなり時間が経ってしまった。
「勝敗は、7次元の人の投票にて決めよう!」
栞菜は自信満々に言った。
私たちのパンプキンも、ギャラクシー・プリズムのパンプキンの顔の表情は異なるが、同じ出来前だ。
私たちは手作りパンプキンを折りたたみ式のテーブルに置く。
7次元の人々の一部に投票してもらうために投票箱を用意した。
6時、投票が始まった。8時まで受け付けつけることになっている。
ちょうど、この時間は通勤、通学ラッシュで人通りが多い。
2時間もずっと立っていられないので、交代制で声かけなどを行う。
ハロウィンが近いからなのか、忙しい中投票に協力してくれて、投票用紙が6時半になるまでに無くなってしまった。
6時40分、折りたたみ式テーブルの上に“ご協力ありがとうございました”と書かれた紙を置いた。
「100枚じゃ足らんかってんな」
憧君は投票用紙の中身を見て分別する。
「みたいやな。まさかこんなに協力してくれるとは全く思わんかった」
私は分別した後の票数を数える。
その結果……
ギャラクシー・プリズムのパンプキンは驚くことにゼロ票だった。
「こんなことになるとは……」
平賀は真っ青になる。
「大体機械で掘っておおちゃくするのがダメなんだよ」
栞菜は指摘する。
「だからスプーンで掘ろうとしたんですよ!」
黒沢は平賀を責める。
「まあまあ、過去のことは水に流そう」
平賀は落ち着いた顔で頷く。
「ボス、いけません!次こそは8次元を制覇するために反省会を開きましょうよ」
藤岡は右手にメモ帳を持って今回の出来事をメモする。
「反省会をして何があるのです?」高梨は腕を組んで質問すると「今度こそ成功するためだよ」藤岡はカリカリと字を書き進める。
「と言うわけだ!今回も貴様の勝ちだ!いつか、オレらからのひどい仕打ちを受けることになるだろう!」
平賀はしかめっ面をする。
その間に政は真夜中に平賀が持っていた蛍光灯を分解する。
「杉浦、これが原因物質の“ベリーシャイニング”だ」
政は黒色の正五角柱型の物体を私に渡す。
「ああ、こいつのせいで蛍光灯があんなに眩しかったんだ」
私はベリーシャイニングを眺める。
「バレたか……もういい、今度は絶対にやり返すからな!さらば!」
平賀はそう言って姿を消した。
「水莱たち、ありがとな。助かったぜ!」
ダートはハロウィンに囲まれた道を走りながら嬉しそうに言った。
「ああ。これからは夜もぐっすり眠れるな」
憧君は親指を突き出す。
「うん!」
スージーは頷いた。
「それじゃあ、私たちは時間だから3次元に帰るね」
私はムーナに私たちが作ったパンプキンを渡す。
向こうは満面の笑みでパンプキンを見つめ、そして手を振り返した。
7時15分、私たちは異次元研究室に戻った。
「お疲れ様、7次元で手に入れたベリーシャイニングを7次元カプセルの中に入れて」
眞鍋博士は決まり文句を言う。
私は普段どおりCDサイズの扉にそれを入れた。
7次元カプセルは黒い霧を放って、デンプンとヨウ素液が入っている7次元エネルギーはMAXになった。
「残るはあと8、9次元だね」
栞菜は8、9次元カプセルの周りを歩く。
「そうだね。受験の準備で忙しいと思うけど、あと少しだから頑張ろう!」
眞鍋博士はコンピューターのそばから離れる。
「はい!」
私たちは真剣な返事をした。
そろそろギャラクシー・プリズムを妨害するのに疲れが溜まっているのでうんざりしているが、残るは2つの次元なので精一杯頑張ろうと私は思った。