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61.夏の予定

あの武器密輸事件から帰宅後、結局、僕は後処理の関係で二週間近く城に拘束された。

やっと解放された後、暫くは任務免除の約束を父と取り付け、学院に戻った。


久々に会ったクラウディアは太陽のように眩しかった。

彼女は久しぶりに会えた喜びを全身で表してくれる。

弾けるような笑顔で僕から目を放さず、興奮気味に僕のいなかった間の出来事を楽しそうに語ってくれる。

いない間の授業のノートはすべて取ってくれていたし、手作り菓子は大量生産してくる。


正直に言って、アンドレ同様、学院の授業のほとんどを履修済みの僕にとって授業のノートは不要だし、お菓子もそんなに食べきれない。

でも、そんな彼女の想いが嬉しくて仕方がない。


クラウディアの手書きのノート。

中身はちょっぴり不出来だが、我が家の家宝にしよう。





季節は夏になった。


僕は自分の執務室の机でジョセフから受け取った報告書を読んでいた。


「盗賊の仕業ってか・・・。残念だ。父上が採用した護衛が無能だったってことだ」


僕は報告書をポイっと机に放った。


「それは言い過ぎですよ、カイル様。相手の能力が上回っていたのでしょう。ですが、確かに残念です。リード家一家が襲われるとは・・・」


「隣国にとっては事件の真相を知っている可能性がある人物はすべて抹消したいだろうからね。全部を把握している肝心なリードは投獄されているから手出しは出来ないけど」


例の事件でリード伯爵が王城の牢に投獄された後、彼の家は正式に爵位を剥奪された。

リード一家は平民となり、王家の温情で与えられた王都の端にある小さな家で暮らしていた。

本来なら着の身着のままで追い出されてもおかしくないのだが、当主の罪を共に背負う家族に陛下が同情されたのだ。

隣国の高位貴族に嫁いだリードの娘も離縁されて祖国に戻り、その小さな家で家族と暮らしていた。


先日、その小さな家に盗賊が押し入ったのだ。盗むに値する物など何もない家に。

残念ながら、その家に居た者は全員殺されてしまった。

一人だけ、息子が家を空けていて無事だったそうだ。


こうなることを恐れて、密かにリード家を守らせていたのに、護衛が駆け付けたのが一歩遅かった。


「結果がすべてだよ。守れなかったのだから無能だ。相手が殺しのプロなら、護衛は守るプロなんだから」


「そうですが・・・」


「助かった子息だけでも、今後は死ぬ気で守って欲しいね。彼は元クラウン学院の生徒で一学年上の先輩だった人だ。父親の愚行がなければあと一年で卒業できたのに。同情するよ」


僕は放った報告書をもう一度手に取ると、引き出しの中にしまった。


「それよりも、ジョセフ。来月の日程調整はできてる?」


「来月の夏の休暇予定ですね。はい、すべてランドルフ領地での仕事で固めております」


「間違っても王都での仕事は入れないでね。休暇はすべてランドルフ領でクラウディアと過ごすんだから」


そう、来月の夏休みはランドルフ領地にクラウディアを連れて行くと決めている。


「いくら婚約者と言え一ヶ月もお泊りなど、クラウディア様を溺愛しているロイス伯爵様がお許しになるでしょうか?」


ジョセフは首を傾げる。


まだ父君のロイス伯爵の許可を取っていない。だが、彼に断るという選択肢は無い。

娘が未来の夫の領地に早めに慣れ親しむ事に越したことは無いのだから。


「別に二人きりで泊まるわけじゃないし。本当はそうしたいけど・・・。心配しないように、ディアの使用人もロイス伯爵の言うがままに連れて行くよ、何人になろうともさ」


本当なら去年の夏休みもクラウディアを連れて領地に帰りたかったのだが、先の事件同様、暴走爺の歯止め役を仰せつかり、仕方なく一人で出向いたのだ。


今年は祖父に何かあっても父に丸投げるすることにして、クラウディアとの休暇を楽しむつもりだ。

昔の僕は彼女にランドルフ領地を見せることはないだろうと諦めていたが、今は違う。彼女に領地を出来る限り案内する予定だ。


彼女にはいろいろなところを見て欲しい。

王都とまで行かないにしても、とても繁栄している中心都市や、実り豊かな農村地、そして我が国の三大林業地の一つである広大な山地を。


そして知って欲しい。

ここは将来僕らが一緒に守っていく土地であるということを。


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