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6.婚約解消方法模索中

クラウディアとの婚約解消。


実は、これはなかなかハードルが高い。

ましてや、伯爵家に非も無く、クラウディアに一切の汚点を残すことなく解消するには、公爵家側が泥を被るか、双方の家にとってよっぽどの利害の一致を模索しなければいけない。


地位から言えば、同じ泥を被っても公爵家ともなれば、伯爵家ほど影響はない。

なので、全面的に僕が悪者になって解消も申し出ることもやぶさかではないのだが、そこは腐っても公爵家。父は家名に傷が付くことを極端に嫌う。

特に王家を陰で支えている我が家は、表向きには立派で燦爛たる家でなければならないからだ。

裏の顔がどんなに後ろ暗くても。いや、むしろ後ろ暗いがゆえに。


金銭的な面から言えば、今のロイス伯爵家はかなりの資産家なのでさしたる心配はない。どちらかと言えば我ら公爵家の方に影響が出る。

先代までは伯爵家としてもさほど上位ではない上に、大した財力も無かったのだが、現当主のロイス伯爵がはした金で購入した鉱山が爆当たりし、一気に大金持ちになったのだ。

つまり、言い方は悪いが成金に近い。金に物を言わせるところがチラホラ見える。

それどころか、その財力で我が公爵家との縁組をもぎ取ったと言っても過言ではない。

僕が婚約解消を申し入れても、財力でもみ消そうと躍起になるだろう。

父にとっても伯爵家の財力は魅力的だ。決して手放したがらないはずだ。

なんせ裏稼業には金が掛かるから・・・。


それ以外にも難関はある。


僕と婚約解消した後は、クラウディアの新しい相手を探さなければならない。

身を切る思いで手放す僕の天使を誰に託すのか。


資産家のロイス伯爵家には恐らく婚約が白紙に戻された令嬢のもとに、傷心を癒そうと多くの男どもが群がるはずだ。

伯爵はクラウディアを溺愛してはいるものの、娘が絶世の美女ではないことは十分知っている。それこそ、彼女にはロイス家の財産しか取り柄が無いとすら思っているのだ。

どんなに伯爵家に非の無いようにしても、婚約解消は伯爵に大きな焦りと負い目を植え付けるだろう。そうなると彼は急ぎ過ぎて、爵位や名誉だけで彼女の嫁ぎ先を決め兼ねない。それは僕としては絶対に避けたい。


彼女の幸せの為に身を引くのだから、彼女は絶対に幸せになってもらわないといけない。

彼女の相手は、誠実で優しくて、身分も財力もある男。そしてなにより、己の身を挺して彼女を守れる男でないといけないのだ。


だから、その相手は僕が探すことにする。

来年、僕らが16歳を迎える年、クラウン王立学院に入学するわけだが、そこは貴族と騎士中心の学院だ。

全国各地から優秀な紳士淑女が集まってくる。そこで僕のお眼鏡にかなう男を数人見繕う予定だ。


そのためには、当然クラウディアにも学院に入学してもらわなければならない。

入学前に婚約解消をして、万が一クラウディアに汚点を付けてしまったら、傷物令嬢と噂が広がり入学自体危ぶまれる恐れもある。

なので、婚約解消は学院に入学後、数名の候補を見つけてからだ。


ここまではずっと前に考えていたことだ。


だが、クラウディアから聞かされた予言のせいで、少し計画が狂いそうだ。


彼女の予言では僕が想定していないヒロインが登場する。

そしてそのヒロインと僕は恋に落ちることになっている。


いや、想定してなかったわけではない。実はそれらしいシナリオも僕自身考えてはいた。一つの案として。

なので、クラウディアに言われた時には本当に驚いた。


適当な―――言い方が悪いな―――適度な、僕とそこそこ身の丈のあった令嬢と交際を始め、クラウディアと少しずつ距離を置く。

そんな僕に愛想を尽かして、クラウディアは他の男性―――僕が見繕った紳士―――と仲を深めていく・・・。

そうして、結果、100%僕の浮気が原因で婚約解消するというシナリオだ。


まあ、この案は公爵家に泥を塗ることになるので、父の意向に背くことになるわけだが、手っ取り早い方法ではあると考えていたのは確かだ。


だが、クラウディアの予言だと、僕に愛想を尽かすどころか、ますます僕に執着してしまうと言うではないか。

その上、嫉妬のあまり、そのヒロインに嫌がらせまでしてしまうなんて! 

嫉妬してくれるのは嬉しいが、嫌がらせなんてあり得ない。僕の天使にそんなことをさせるわけにはいかない。

まして、それで断罪って何? 僕って何様?


クラウディアを守るために、好きでもない女と付き合ったというのに、彼女を悪役令嬢に貶めて断罪、追放って・・・本末転倒過ぎる!


これだけはどうあっても避けなければならない。


来年そのヒロインに出会っても、そして、万が一恋に落ちたとしても、絶対にクラウディアだけは守らなければ!


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