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56.父の依頼

順風満帆の学院生活が始まると思ったのもほんの束の間だった。


ある日、僕は父の執務室に呼ばれた。

嫌な予感を胸に彼の元に赴いた。

扉を開けると、父は机の上に大きな地図を広げていた。


「遅いな・・・」


彼は不機嫌な顔で僕を見た。


「そうですか? 秒速で来ましたけど?」


「嘘を付くな」


「ご用件を聞く前に先に言っておきますが、今の僕は学生です。学生のモットーは勉学です」


「で?」


「さらに僕は生徒会員。そして生徒会長はビンセント王太子殿下」


「で?」


「さて、質問です。僕が一番に守る人は誰でしょう?」


「王太子殿下」


「正解! つまり僕は殿下をお守りするため、学院から離れられません」


「カイル。仕事だ。お前には辺境地区に行ってもらう。きな臭い情報が入った」


「ちょっとー、聞いてます? 父上、僕の話」


「聞かんっ! 早くこっちに来い。場所を説明する」


「別の人材を当てて下さいよ~。嫌ですよ、僕」


「いたらそうしてるわっ! いないからお前を呼んだんだ。分かってるくせにしつこいぞ!」


「感じ悪い・・・」


「・・・お前も相当感じ悪いぞ。父親に対して何なんだ、その態度。もういいから早く来い」


父親は面倒臭そうに僕を手招きした。

渋々、執務机に近づく。

父親を見ると目の隈が凄い。髪も何度も掻きむしったようで、乱れたまま。

あまり寝ていないようだ。ちょっと反抗し過ぎたかな。


父が僕の学院生活―――つまりビンセント殿下との生活を優先させてくれているのは分かっている。僕の一番の目的はそこにあるからだ。

とは言っても、人手が足りなければ駆り出される。当然だ。

何よりも王家を守る為であり、延いては王太子殿下を守ることに繋がる。

分かってはいる。でも・・・。


「はあ~~~~~~~・・・・」


「溜息が長い!」


傍に来た僕に、父親はデコピンを食らわせた。





「まったく、明日から行けって相当無謀だよ、父上も」


僕は自分の執務室の椅子にドカッと腰を降ろすと、頭を抱えて大きく溜息を付いた。

父から聞いた地区はこの王都からかなり遠い。

隣国との国境に近く、我がランドルフ公爵が治めている領地の隣だ。

馬車で片道、優に五日はかかる。



往復十日・・・。

稼業の反乱分子征伐に何日掛かるか・・・。

ちゃっちゃか終わらせたところで、二週間はかかるかなぁ・・・。


「仕方がありません。これでも旦那様はカイル様に負担を掛けないよう気をお使いでしたよ」


ジョセフは気の毒そうに肩を竦め、首を振った。


「とにかく、すぐに準備をいたしましょう。それから、明日からのクラウディア様の送り迎えはどうなされますか?」


「・・・君に頼むよ、ジョセフ」


「かしこまりました」


「それと、学院でクラウディアに変な虫が寄ってこないように注意して」


「へ?」


「ここ最近、クラウディアはどんどん綺麗になってるんだよ。昔から可愛かったけど、今は幼さが消えて女性らしさが日に日に増してるんだ。今までディアを歯牙にもかけなかった輩が、彼女を眩しそうに見つめているのをよく見かける。その度に、そいつらの目を潰してやろうかと思うんだけど、その反面誇らしくもある。僕の天使がいかに美しいか、やっと気が付いたかってね」


「はあ・・・?」


「上手くいって二週間、下手したら三週間以上は学院から離れることになる。僕のいないことを良い事に虫どもが彼女に寄ってこないか・・・」


「えっと・・・。それは心配し過ぎかと・・・」


「もちろん、僕の影に見張らせるよ? 誰も近寄らせないようにする」


「・・・では、私まで目を光らせずとも・・・」


「はあ~~~~、心配だなぁ・・・」


僕は両手で顔を覆った。


クラウディアはリーリエ嬢と違って気さくで話し易い。

更にヒロイン以外には警戒心が薄く、声を掛けられればすぐに耳を傾けるし、頼まれ事をされると気軽にホイホイとついて行ってしまう。


リーリエ嬢とまでは言わない―――あそこまでいくと僕も困る―――けど、彼女の三分の一くらい警戒心と人を寄せ付けないオーラを持ってくれればいいんだけど。


「もし、僕のディアに手を出そうとする男がいたら・・・、その時は・・・」


「あー、はいはい、分かりました、カイル様。クラウディア様のことは私にお任せください。そんなことより準備しましょ、準備!」


ジョセフは話を打ち切るようにパンパンと手を叩いた。


そんなことじゃないから!

ジョセフの目には、クラウディアはまだまだただの小娘のようにしか映っていないのかもしれないけどね、本当にそんなことないんだから!


それにしても、主人にそんな態度取るなんて。父上と同じで感じ悪っ!



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