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55.新学期

クラウディアがセシリアの消えたことに気が付いたのは、学年が一つ上がった時だった。


媚薬事件については僕から何も話さなかったこともあるが、秋の学院祭以来、セシリアは僕の周りをうろついても、クラウディア自身にちょっかいを出してくることは無かったので、彼女の目に留まることはあまりなかったということもある。


ただ、新学年になる始業式の時にセシリアが何か仕掛けてくるのではないかと不安になり、改めて彼女の存在が気になったようだ。


登校する馬車の中で、彼女は不安そうに僕を見た。


「あの・・・、カイル様。最近ヒロイン・・・いや、セシリア様をお見掛けしないのですが、どうしたのでしょうか? 生徒会長様とお付き合いされているという噂もあったのですが、ご一緒されているところも見ませんし・・・」


「ああ、そうだね」


「本当に会長様とお付き合いされているのであればいいのですけど・・・。でも、それに託けてカイル様に会いに生徒会室に通っているとか・・・」


あはは、今頃気が付いた? ディア。

そうだったよ。でも、もうそれは過去の話。


「うん。よく来ていたよ。でも、安心して。僕は彼女とほとんど口を利いていなかったから」


「え?! 嘘!? 本当に通っているのですか!? やっぱり彼女、諦めてないんだわ! 今日のお式でも何か起こすかしら?!」


クラウディアは座席から立ち上がらんばかりに驚いた。


「落ち着いて、ディア。もう絶対そんなことは無いから大丈夫だよ」


僕は彼女の両手を取って、中腰になった彼女を座らせた。


「で、でも、諦めていないんだとしたら・・・」


「彼女が何かをすることは不可能だよ。だって彼女はもういないから」


「へ?」


「いないんだよ、彼女はもう。このクラウン学院に」


「は?」


「退学になったから」


「退学?」


「そう、退学」


「・・・」


「だから、今日の始業式で何かをするなんて不可能だよ。関係者以外はこの学院に入れないからね」


「・・・」


「入ろうとしたところで、守衛に捕まるだけだ」


「・・・」


「ディア、大丈夫? 理解できてる?」


「ええええ~~~!?!?」


馬車の中にクラウディアの悲鳴が響き渡った。


「た、た、退学って! ななな、なんで? どうして? いつ?」


クラウディアは僕が取った手を握り返し、のめり込むように僕を見上げた。


「少し前だよ。理由は彼女自身の愚行のせいだ。退学になってしかるべき事を仕出かしたからだよ。仕方がない」


「な、な、何をしたのですか? 退学になるって、よっぽどでしょう?」


「そうだね。多分よっぽどの事をしたんだよ、きっと」


「カイル様もご存じないの?」


「僕だって学院内の事をすべて把握しているわけじゃないからね」


ごめんね、ディア。ちょっと君には聞かせられないな。

君に対して隠し事が増えるのは辛いけど、内容が内容だけに君の耳に入れたくはない。


「そうですか・・・。何をしちゃったのかしら、彼女・・・。流石に退学なんて、ちょっとお気の毒だわ・・・」


いやいやいや、気の毒がる必要ないから。

本当に僕の天使は優しいな。まったくどっちが悪役令嬢だったんだか・・・。





始業式も無事に終え、僕らは二年生になった。


同時にビンセントは生徒会長に就任し、アーネストは引退。

本来ならあと一年はサブメンバーとして残るつもりだったようだがご遠慮いただいた。

新入生からも優等生が三人はいったからね。彼みたいな無能は必要ない。


そして新しいサブメンバーも抜擢された。

これも前回のアーネストと同じく、会長の独断で決められた。

でも今回は僕も目を瞑る。


なぜなら、彼が選んだ生徒5名の内、二人の男子生徒は僕の影。つまり元々彼の護衛。

そして、残りの三人は・・・。


リーリエ嬢、アイリーン嬢、そしてクラウディア。


うん。理想的だね。

これで生徒会の仕事がいくら忙しくても、ディアと一緒にいれる。

二年目にしてやっと順風満帆の学院生活の始まりだ。


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