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49.武道大会

後日、セシリアがクラウディアに渡した飲み物の鑑定結果が出たが、薬などの成分は皆無だった。

恐らく、自分がふら付く振りでもして、クラウディアにジュースを掛けるつもりだったのだろう。ドレスの汚れたクラウディアが会場から退出せざるを得ない状況でも作ろうとしたのだろうね。

でも、あの時のディアは本当にフラフラだったからね。それでも、お礼を言おうと立ち上がってよろけたんだろう。


それにしても、もしディアに飲み物を掛けていたら・・・。

むしろ、自分が被害者(・・・)だったお陰で命拾いしたことに感謝して欲しい。


舞踏会の一件で、セシリアの信者は半減した。

なんせ、あれだけ盛大に僕への横恋慕や、神聖な儀式を蔑ろにした様子を披露されたら、大半の生徒は引くだろうね。


それでも熱心な信者はまだまだいるようで。

生徒会長もその一人。逆にライバルが減ったとばかりに、グイグイ彼女にアピールしている。

どうか頑張って欲しいものだ。

人の恋路をここまで心から応援したいと思ったのは初めてだよ。





秋は行事が多い。

学院祭が終わったと思ったら、次は武道大会だ。

これは主に男子生徒が参加するもので、女子生徒は応援に徹する。

内容は剣術、槍術、弓術の三種目だ。


そして、僕の出る種目は物語では(・・・・)剣術で、なんと優勝を勝ち取ることになっている。


それってどうなんだろうね。

騎士コースの生徒たちの方が、圧倒的に武術に長けていないといけないのに、文官コースの生徒が優勝ってさ。将来王族を守るための未来の騎士として頼りなくない?


確かに、貴族令息はそれなりに武術を修得しているし、中には現役騎士よりも優れている子息もいる。

まあ、僕もその口に入るんだけど。だって、裏稼業でそれなりに実践経験積んでるからね。ある程度腕が立たないと既に死んでるし・・・。


大会当日は学院祭の時と同じように晴天に恵まれた。

競技によって会場は分かれ、男子生徒は出場する種目の会場にそれぞれ向かう。


会場の外には準備用のテントが幾つか設置され、皆それぞれ装備を固める。

鎧などを身に纏えば、否応なしに気分が向上してくる。


「カイル様・・・」


丁度、身支度を終えた時、背後から声が掛かった。

振り向くと、僕の天使がそっとテントを覗いていた。


「やあ、ディア」


「あの、カイル様・・・、準備はお済?」


ちょっと遠慮がちに僕に尋ねてくる。


「うん。今終わったよ」


「そうですか・・・」


クラウディアはテントの入り口でソワソワしている。

その理由は大体察しが付いている。僕は自然と口角が上がるのを抑えられなかった。


「待ってたよ、ディア。はい」


僕はクラウディアの傍に近づくと、モジモジしている彼女に向かって手を差し伸べた。


「え?」


クラウディアは目を丸めて僕を見た。


「もちろん、くれるのでしょう? 祝福のハンカチ」


「っ!」


クラウディアは見る見る顔が赤くなっていく。


「まさか、貰えないの? 僕」


ディアはブンブンと顔を横に振ると、オズオズと僕にハンカチを差し出した。


「刺繍があまり綺麗にできなくて・・・。お恥ずかしいのですが・・・」


受け取ったハンカチを広げると、そこには黄色のヒマワリが可愛らしく刺繍してあった。


「ありがとう。ディア」


僕はハンカチにそっと口づけした。


「勝利を君に」


「ご武運を。カイル様」





競技会場に入ると、すぐにビンセントを探し、傍に馳せ参じた。


「殿下、準備は万端ですか?」


「ああ、カイル。ばっちりだ」


ビンセントはにっこりと頷く。


「今日はどうぞお手柔らかに」


「嫌味だなあ、カイル。それはこっちのセリフじゃないか」


「いやいや、殿下はかなりの腕前じゃないですか、弓術は」


そう、僕らが出場するのは弓術。剣術じゃない。


そりゃそうだ。一国の王太子殿下に学校行事で怪我を負わせるわけにはいかないのだ。

そして、王家に次ぐランドルフ公爵家の子息である僕もね。


つまり、現実のビンセントと僕は、木刀とは言え剣を交える剣術、馬上で槍を突き合う槍術のような危険な種目に出ることは無いのだ。

よって、的当ての成績で競う弓術の一択。


「君ほどじゃないけどね! でも、今回は本気で行くよ。リーリエに勝利を捧げたい」


「では、僕も全力で挑みます。ディアに勝利を約束しているので」


僕らは右手を出すと、ギュッと握手をした。


物語の先(未来)を知っているヒロインは、きっと今頃、剣術の会場にいるだろう。


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