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46.ダンス

楽しくダンスを終えた後も、僕は出来るだけクラウディアの傍を離れないように心掛けた。

他の令嬢からダンスを申し込まれないようにするためでもあるが、何よりも、何を仕掛けてくるか分からないヒロインからクラウディアを守るためだ。


だが、人気者のセシリアは会長から解放されても、次から次へとダンスを申し込まれ、休む暇も無いようだ。

チラチラこちらの方を伺っているようだが、もちろん、僕はさっぱり気が付かない。

踊りながら無理やりでも近づいてこようと頑張っているようだが、僕はディアの好きそうなケーキを見繕う事で忙しいんだよね。だから全然気が付かないよ。


僕はクラウディア以外にダンスを申し込む気は無いが、例外は二人いる。


それはリーリエ嬢とアイリーン嬢だ。


親友二人の婚約者には一緒に踊る栄誉を賜る予定だ。

そして、クラウディアもビンセントとアンドレにダンスを申し込まれる。

これは僕ら御三家の絆は固いという事を見せつけるためでもある。


僕らが友人たちと歓談をしているところに、アンドレがやって来た。


「クラウディア嬢、一曲お相手をお願いできますか?」


アンドレは恭しくクラウディアに手を差し出した。

クラウディアは驚いた顔でアンドレを見た後、伺うように僕を見上げた。

僕はにっこりと頷いて見せた。


クラウディアがアンドレの手を取りホールに進んで行った後、僕はリーリエ嬢の元に向かった。


リーリエ嬢とダンスをしている時も、アイリーン嬢のお相手をしている時も、ヒロインが誰かと踊っているところとすれ違う。

まったく休めていないようで、肩で息をしていた。

仕方がないよね。男どもに自分を売り込んだ結果なんだから。


それより、今はセシリアよりも気になるカップルがいて、アイリーン嬢とのダンスに集中できない。


「ふふ、クラウディア様が気になりますのね」


踊りながらアイリーン嬢が可笑しそうに微笑む。


「だって心配だよ。彼女は殿下の大ファンだからね。緊張し過ぎて、殿下の足を踏まないか。まず、目を開けていられるかどうか・・・」


「それほどまでに?」


「うん。殿下の顔が眩し過ぎて見れないらしいから」


「・・・それは分かる気がいたします」


え? アイリーン嬢も? 恐るべし、ビンセント。





二人の令嬢のお相手が終わると、クラウディアもビンセントとのダンスを終えて、彼に手を取られながら、僕のところに戻ってきた。

足取りがおぼつかない。目には星と渦巻が見えるのは気のせいかな。

フラフラになっているクラウディアを、ビンセントはすまなそうに僕に託した。


「大丈夫かい? クラウディア嬢。なんか、ごめん、カイル。そんな乱暴に踊ったつもりはないんだが・・・」


「気にしないで下さい、殿下。殿下は完璧でした。完璧過ぎた結果です」


僕はクラウディアを抱きしめるように支えた。

クラウディアは僕にしがみ付くように何とか立っている。


「・・・目が・・・、目が・・・」


「失礼します。クラウディアを休ませますので」


まだ目から星をチラつかせているクラウディアを抱えるように、会場の隅の方へ連れて行った。


「大丈夫かい? ディア」


「目が潰れそう・・・。殿下とのダンスはある意味拷問だわ・・・。視力が低下する・・・」


そんなこと言う人はディアくらいだよ。他の人に言っちゃだめだよ。殿下と踊れることは名誉なんだから。


「ディア、飲み物を取ってくるから、ここで休んでて」


僕はディアを椅子に座らせると、飲み物を取りにその場を離れた。

ついでにスイーツでも持って行こうと、さっきとは違うケーキを物色していると、


「きゃあ!!」


甲高い悲鳴が聞こえた。

周りが一斉にその声の方へ振り向いた。


「何をするんですの?! クラウディア様っ!!」


その方向を見ると、クラウディアの前にセシリアがいる。

セシリアのドレスはオレンジジュースが掛かった跡がくっきりと付いている。


そして、目の前のクラウディアは空のグラスを持っていた。


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