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40.おんぶ

暫く歩いた後、少し開けた場所に出たところで、僕らは休憩を取っていた。


クラウディアはとても元気で、座りもせずに周りの花々を見て回り始めた。

一人の令嬢も山の草花に興味があるのか、クラウディアと二人で花々を指差したり、触ったりしながら楽しそうにおしゃべりをしている。


残りの四人は座って休んでいたのだが、一人の男子生徒がクラウディアたちのところに行き、一緒に花を観察し始めた。

彼は野生の花の知識が豊富のようだ。二人にいろいろ説明を始めた。

最初は警戒したが、どう見ても彼はクラウディアではなく、もう一人の令嬢に興味があるようだ。なので、僕はそのまま静観することにした。


僕らはゆっくりとしていたかったが、残念なことに、そこにセシリアたちが追い付いてきた。


「・・・カイル様・・・」


座って休んでいる僕の傍に、なぜか切なそうな顔でセシリアがやって来た。

と思ったら、ストンと僕の隣に腰を降ろした。


「・・・私、自分の班、居心地悪くって・・・」


そう言って僕をチラッと見ると、悲しそうに俯いた。


そりゃ、そうだろうね。あれだけ自分勝手な行動をとっていれば。


僕は呆れて言葉が出てこない。

僕のグループ二人を見ると、目が半目で口は半開きでセシリアを見ている。同じく呆れ果てて言葉が見つからないようだ。


「それに・・・。私、靴擦れ出来ちゃって・・・、痛くって・・・」


へえ? それってあっちの子じゃなかった?

僕らから離れた場所で、足を痛そうにしながら休んでいる令嬢を見た。

それに気が付いたのか、セシリアは、


「あの子も靴擦れが出来ちゃったんです。痛くて歩けないので、リーダーが背負ってくれて・・・」


そう言いながら上目遣いで僕を見る。


あ~、背負ってね~。

そうそう、この魔の行事(イベント)の最大の見せ場は「おんぶ」だもんね。

行きがダメだったから帰りって言われてもさ~。

まったく、「おんぶ」しなきゃ、このイベントはクリアできないのかな。


そう思った時だ。


「ちょっと!! クラウディア様! 大丈夫ですか!?」


令嬢の大きな声が聞こえた。

驚いて振り向くと、クラウディアがど派手に転んでいた。


「危ないから止めろって言ったのに! 大丈夫かい? クラウディア嬢!」


男子生徒が急いでクラウディアを抱え起こす。

僕もすぐに駆け寄った。


「大丈夫!? ディア! どうしたの?」


「ご、ご、ごめんなさい! ちょっと気になる木の実があったので取ろうとして・・・。その岩に足を掛けたら、滑ってしまって・・・」


好奇心が旺盛なのは良い事だけど、運動神経があまり良く無いことを忘れないで欲しい。

君は小さい頃から走っては転ぶんだから。


立ち上がったクラウディアの顔が一瞬歪んだのを僕は見逃さなかった。


「ディア。足捻った? 痛いの?」


ディアは慌てて顔をブンブン横に振った。


「だ、大丈夫ですわ! 全然痛くありません! 皆さんもごめんなさい。ご心配かけちゃって!」


ニッコリと笑うが、僕は誤魔化せない。

僕はしゃがむと、失礼を承知で彼女の足首をキュッと握った。


「痛っ!!」


「やっぱり痛いんじゃないか。嘘はダメだよ、ディア」


僕はしゃがんだまま彼女に背中を向けた。


「ほら、ディア、負ぶさって」


「え? でも・・・」


「早く」


「ほ、本当に大丈夫ですわよ。歩けますわ」


「じゃあ、横抱きで抱えるよ? いいね?」


僕が立ち上がろうとすると、


「わ、分かりましたわ! おんぶ! おんぶにします!」


クラウディアは観念したように、僕の背中に負ぶさってきた。

僕はクラウディアを背負って立ち上がると、


「みんな、休憩はもういいかな? ディアの手当てもしたいから、この後は休憩なしに一気に下山したいけど大丈夫かい?」


班のメンバーに尋ねた。皆、もちろんと頷いてくれる。


「ありがとう。じゃあ、行こう」


僕はセシリアの横を通り過ぎる時、


「じゃあ、お先に。ロワール嬢。靴擦れくらい(・・・)大したことないでしょう? でも、お大事に」


そう声を掛けた。彼女は唇を噛んでフルフル震えていたが、どうでもいい。


「・・・私が背負われてしまいましたわ・・・」


背中で申し訳なさそうにクラウディアが呟いた。


そうだね。

ディアが怪我をすることになったのは納得がいかないが、確かに、これで「おんぶ」イベントはクリアだ。




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