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38.登山イベント

初夏も過ぎ、暑さも日差しも強くなり始めた頃、僕らクラウン学院の一年生は王都からそう遠くない山麓に来ていた。


ここは学院からも遠くない上に、起伏も少ない山々に囲まれた高原があり、学院の生徒たちのトレッキングには丁度いい。普段、あまり運動をしない令嬢たちでも無理をせずに山歩きを楽しむことが出来る。


僕はスタート地点に集まった生徒たちを、少し離れた場所から眺めていた。


これから僕にとって魔の行事イベントが始まる。


それなりに回避方法を考えてきたので、問題がなければ楽しい山歩きで終わるはずだ。

僕は大きく息を吸って気合を入れた。


「チェックポイントを巡るって面白いね、カイル。それも班行動で」


僕の傍にビンセントがやって来た。


「ええ。今までは終始自由行動で、それぞれ山頂を目指していましたからね」


「それはそれで、クラスの垣根を越えていろいろな生徒たちと触れ合ういい機会とも言えるけど、結局は偏ってしまうしね。クラスの中で班を決めて最後までチームとして行動するのは面白いと思うよ」


ビンセントは僕に向かってにっこりと笑った。

もちろんその笑顔には理由がある。


「リーリエと同じ班になれたしね」


「是非一着を目指して頑張ってくださいね、殿下。リーリエ嬢に良いところ見せる機会ですよ」


「そうだね、頑張るよ。カイルもね!」


ビンセントは僕の肩をポンと叩きながら、パチッとウィンクを飛ばした。

相手が僕だからいいが、これがクラウディアや他のご令嬢だったら悲鳴をあげて倒れてるね・・・。


僕らは二人並んで、生徒たちの群れに戻って行った。





一つの班に人数は六人だ。女子三人、男子三人。

班行動にしたのは、もちろんヒロインが僕に近寄ってこないようにするため。

自由行動なんかにするから、物語の僕は他のクラスのはずのヒロインと一緒に登山する羽目になるのだ。


そして、肝心な班の決め方は、僕のクラスはくじ引きだった。

いつも仲良くしている人以外とも交流を深めるのが目的だ。

しかし、僕の班には、もちろん・・・。


「カイル様。同じ班で嬉しいです!」


クラウディアがニコニコとした笑顔で僕を迎えてくれた。

うん。くじ運良いんだよね、僕。

ビンセントのクラスはどうやって班組を決めたのか知らないけど、リーリエ嬢と同じ班になるなんて、彼も相当(・・)運が良いんだろうね。


アンドレは自分自身忙しくて、無駄に姑息な真似などしないから、アイリーン嬢と同じ班になったのは本当に偶然なんだろう。


スタートして暫くすると、早速事件が起きた。


山道を歩いていると、視線の先にピンクブロンドの髪が見えた。

それは木の根元に蹲ってシクシク泣いている。


もちろん、僕自身はそのまま通り過ぎたかったが、立場的にも難しい。

それだけでなく、同じ班の生徒たちも、悲しそうに泣いている女子生徒を放っておくなどできないようだ。

と言うよりも、見て見ぬふりをする勇気が出ないほど、これ見よがしに泣いていると言った方がいいね、あれは。


「大丈夫ですか?」

「どうしたんですか?」


僕の班の生徒が優しくセシリアに話しかける。


「私・・・、同じ班の人たちと逸れちゃって・・・」


セシリアはシクシク泣きながら答えた。


「そうなの? 可哀そう・・・」

「一人で不安だったでしょう?」


一人の優しい令嬢がセシリアをゆっくり立ち上がらせた。

セシリアはまだグスングスンと泣いている。


「じゃあ、ロワール嬢。僕らと一緒に行こう」


僕はセシリアににっこりと笑って見せた。


「え・・・? いいんですか? カイル様・・・」


セシリアはビックリしたような顔をして僕を見た。

こんなにあっさりと僕が声を掛けると思っていなかったようだ。


「うん。ここにいつまで一人でいるわけにはいかないでしょう?」


「ありがとうございます! カイル様!」


途端に彼女の顔はパアっと明るくなった。


「良かった! カイル様が一緒なら全然不安じゃないわ!」


手を差し伸べてくれた令嬢のことなど見向きもせずに、僕の傍に駆けてきた。


「じゃあ、行こうか?」


「はい!」


満面の笑みで僕を見るセシリア。

セシリアを心配した生徒たちはポカンと僕らを見ている。


僕はそれに対し何も答えず、そのまま歩き出した。

セシリアはちゃっかり僕の隣をキープし、クラウディアを後ろに追いやってしまった。


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