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29.しつこいお誘い

生徒会に応援員が加わってから、僕の予想した通りの日々が始まった。

あまりにも予想通りなので、呆れて溜息しか出てこない。


まず、セシリアは用事も無いのに生徒会室に出入りするようになった。


本来、副メンバーである応援員は、生徒会から要請がある時以外は業務を手伝う必要がない。よって、呼び出しがない限り、生徒会室(ここ)へ出入りすることは無いのだ。


なのに、彼女は当たり前のように生徒会室にやって来る。そして、それを嬉しそうに招き入れる生徒会長。

楽しそうに彼女と会話をするだけで、仕事を与えようともしない。


だが、彼女の中で一通りのおしゃべりが終わると、


「カイル様!」


満面な笑みを浮かべ、僕の隣に座ってくる。


「何かお手伝いはありませんか?」


コテっと首を傾げて僕を見る。そんな様子を会長は歯ぎしりをしながら睨みつける。


「ああ、大丈夫だよ。手伝ってもらうことは何もない」


「でも、せっかくの応援員なのだから、お手伝いさせてください! この書類を整理しましょうか?」


目の前に広げられた書類に手を伸ばしかけるセシリア。


「いいや、これは今目を通している最中だから、手を触れないでくれたまえ」


「え~~、そうなんですか~。じゃあ、何をすれば・・・」


「セシリア! ちょっとこっちを手伝ってくれないか?」


見かねた会長が彼女に声を掛ける。

セシリアは小さく舌打ちするが、すぐに立ち上がり、


「はーい、会長!」


花もほころぶ笑顔で会長席に向かう。


これが最近ルーティン化している。

そろそろ、いい加減にしてほしい。


さらに、他の生徒会のメンバーの生温い視線も気に入らない。


先輩方は会長に呆れつつも、すっかり骨抜きになっている彼に何も言えないようだ。

ビンセントは呆れた中に憐れみを帯びた目で僕を見ている。

アンドレに至っては、「我慢しろ」的な非常に圧力の掛かった視線を送ってくる。面倒事は出来るだけ避けたいのだろう。分かるよ、忙しいもんね、君。


まあ、僕の堪忍袋がどこまで持つかだな。





「あ! カイル様!」


廊下を歩いている後ろから不快な声がする。

振り向くと、案の定、ピンクブロンド髪がパタパタと走り寄ってくる。


「ごきげんよう! カイル様! これから生徒会のメンバーと一緒にランチをするんです! ご一緒しませんか!?」


ニッコリと微笑む彼女の傍には、同じく応援員に選ばれた二人の男子生徒がいた。

彼らは少しガッカリしたような顔をしている。彼らはセシリアの信者だからね。僕はお邪魔虫なんだろう。


さらに僕を苛立たせるのは、これが初めての誘いではないということ。

ここ最近、「生徒会長メンバーとランチ」という口実をぶら下げて、僕を誘いに来るのだ。

渋っている信者の顔色に気付いていながらも、彼らを出汁に使うのだから大した子だ。毎回断っているのにも関わらず、諦めない彼女に付き合わされる信者たちが気の毒になる。


「あ、クラウディア様もいらしたのですね? 小さいから見えなかったぁ!」


僕の隣にいたクラウディアを見ると、セシリアは首辺りで両手を握りしめ、てへっと可愛らしく首を傾げた。


「ご、ごきげんよう。セシリア様・・・」


クラウディアはビクッと体を揺らすと、少し怯えたように挨拶をした。

そして、さりげなく僕の影に隠れる。

そんな弱気な彼女をセシリアは呆れたように見たが、すぐに笑顔を取り戻すと僕を見た。


「ねえ、カイル様! メンバーと一緒にランチしましょう! 良かったらクラウディア様もどうですか?」


「え・・・? 私も・・・?」


目を丸くするクラウディア。


「ええ。まあ、生徒会のメンバーが一緒ですけどぉ。それでも良ければ」


セシリアはチラリと応援員の二人を見た。

逆に彼らは僕だけよりクラウディアが一緒の方がいいようだ。婚約者が同席の方が安心なのだろう。少し顔が明るくなった。


「あ・・・、えっと・・・私は遠慮しますわ・・・」


「え~、そうですか~、ざんね~ん! じゃあ、カイル様、行きましょう!」


セシリアは馴れ馴れしく僕の腕を両手で引っ張った。

どうして僕は行くことになってるの? 行くなんて一言も言ってないよね?

この神経の太さは、もはや賞賛に値する。


「悪いけど、僕も遠慮するよ」


にっこりと笑いながら、グイっと手を引き抜いた。

僕のこめかみの青筋に気付いてくれ。


僕はクラウディアの腰に手を回し、軽く引き寄せた。


「それじゃ、失礼するよ、セシリア嬢。君たちも。行こう、ディア」


取り巻き二人の男子生徒に向かって手を挙げて挨拶すると、彼らはホッとした笑顔を見せ、クラウディアを連れて去る僕を見送ってくれた。


「なんで、こうなるのよ・・・。私がヒロインなのに・・・」


小さな呟きが背後から聞こえたのは、きっと気のせいではないだろう。


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