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24.謝罪

「カ・・・イル様・・・」


クラウディアは真っ青な顔で僕らを見ている。

動揺しても仕方がない。ヒロインとこんなに間近で向かい合っているのを見れば。


「やあ、ディア。どうしたの? そんなに驚いて」


僕は極力平静な振りをして、クラウディアに話しかけた。

そして、すぐに彼女の傍に近寄ると、廊下に落とした本を拾い、彼女に手渡した。


「あ、あの、カイル様・・・?」


「何? ディア」


「そ、その、包みって・・・、お菓子・・・?」


クラウディアはちょっと震える手で僕が持っているお菓子の包みを指差した。


「ああ、これ? そうだよ。焼き菓子。手作りだって」


それを聞いてクラウディアは再び本を落としそうになった。僕は慌ててキャッチした。


「それ・・・、貰ったのですか・・・? カイル様・・・。か、彼女から・・・」


ワナワナと聞こえないほどの小さな声で呟いた。

そう見えたのか。ヒロインは自分のお菓子を腕に抱えているけど、目に入ってないようだ。


「ううん。これは預かったんだよ。君への贈り物だ」


「え?」

「は?」


クラウディアの声だけでなく、背後からも驚きの声が聞こえた。


「リーリエ嬢から君へ。君の過剰なお礼へのお返しだって。だから、このお菓子に対してのお礼は絶対にしないようにきつく言われてる」


僕はポカンとしているクラウディアの頭を撫でた。


「殿下にお菓子を作ってあげたようだ。そのご相伴に預かったんだよ、ディアだけね」


「私だけ?」


「うん。僕の分もアンドレの分も無かったから、残念ながら味見はしていない。素人が作った物だからあまり美味しくないかも・・・」


「そんなことおっしゃるものではありませんわ! 素人がお菓子作りして何がいけないんですの? あ! もしかして、カイル様。今まで私の作ったお菓子、美味しくないって思っていらしたの?」


「あはは、まさかぁ!」


「あー! その笑い、怪しいですわ! もう作って差し上げませんわよ!」


「それは困ったな。ディアの手作りのお菓子は大好きだから」


プクーっと頬を膨らますクラウディアの頭を撫でながら笑っていると、


「あ、あの・・・」


背後から声がした。

あ、まだいたんだ、ヒロイン。


近寄ってきたセシリアに、クラウディアも思い出したように、急に体を固くした。


「あ、そうだ、セシリア嬢。クラウディアへの謝罪はまだだったよね。クラウディアもあれから君とは会っていないと言っていたし」


「へ? しゃ、謝罪? 何で私が・・・?」


「何でって。可笑しいな、学院から君へ書面で通知があったと思うけど」


一瞬とぼけたふりをしたが、急に開き直ったように、キッとクラウディアを睨みつけた。


「それなんですけど、可笑しいと思いません? 何で被害者の私が謝罪って! 謝罪されるのって私の方だと思うんですけど!」


「うん、もちろん君も謝罪されただろう? バナナの皮を捨てた生徒から。彼はちゃんと君に誠心誠意謝罪したのでしょう? それに奉仕作業も真面目にしているよ、今も」


ヒロインは言い返せずに、唇を噛んだ。


「他のご令嬢二人も、きちんとクラウディアに謝罪に来た。それも謹慎前にね」


「でも・・・」


「まさかと思うけど、まだ突き落とされたと思ってはいないよね?」


「言い難いですけど、私はクラウディア様が・・・」


「バナナの皮を捨てた生徒から謝罪を受けたという事は、それを踏んで滑ったことを認めているんだよね? そうでなかったら、彼の謝罪と奉仕活動は何だろうね。全くの無意味な上に、下手したら彼の名誉棄損になるけど」


「そ、それは・・・」


「それに、彼は君へ謝罪した時、自分も足元をよく見ていなかったら悪いのだと言ったそうだね。踏んだと認めたのでしょう?」


「だ、だから、それは・・・、足元を見てなくて、本当に踏んだかどうか曖昧で・・・」


「曖昧なのに、君は彼の謝罪を受けて、彼は未だに奉仕活動をしているのか。自分のせいで君が噴水に落ちたと信じ込んでね」


「・・・」


「では、謝る相手は彼だね。彼への名誉回復をどうするか。彼にどう許しを請うか。よく考えたまえ」


「ご、ごめんなさい!」


「僕に謝ってどうするの?」


「え?」


半泣き顔で僕を見るヒロイン。何か、面倒臭くなってきた。


「行こうか、ディア」


僕はオロオロと状況を見守っていたクラウディアの腰に手を回した。


「え? え? でも、あの・・・?」


「ディアが動揺することじゃないでしょ?」


「ご、ごめんなさい! クラウディア様!!」


セシリアはガバッと頭を下げた。分が悪いと分かったようだ。


「本当にごめんなさい! 私、私ったら・・・! 背中から噴水にザバーンって落ちるなんて、あんまりにも衝撃で・・・。勘違いしてしまったみたいです。本当にごめんなさい!」


えっぐえっぐと泣いている。

さっきまでディアを睨んでいた子と同一人物とは思えないんだけど。

すごいなあ、このあざとさ。僕も見習おうかな。


「そ、そ、そんな。もういいですわ。頭を上げてください、泣かないでくださいな・・・」


クラウディアはオロオロと彼女に近づいて声を掛ける。

でも、彼女に触れるのには躊躇しているようだ。肩にかけようとした手が震えている。


「ありがとう! 許して下さるんですね! クラウディア様!」


彼女はガバッと顔を上げた。

クラウディアはビクッと飛び上がった。


ヒロインはまだヒクヒク泣きながら、袖で涙を拭いた。

その後、無理やり笑顔を作ると、可愛らしく首を傾げてクラウディアを見た。


「クラウディア様! こちらをどうぞ! お詫びですわ。私の手作りお菓子です!」


さっき僕に押し付けようとしたお菓子をクラウディアに差し出した。

有無も言わさず、お菓子をクラウディアに押し付けると、彼女はもう一度ちょこんと頭を下げて、走って去って行った。


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